第14話:親兵器推進善業国家入国の心得
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神楽からこれから入国する国に関する注意事項を聞かされてげんなりする強田達。
「で、何しに往くんだ?」
「何もしなくて良いのなら……このまま観光旅行ー」
「なら、別に私達だけでなくても良いじゃないですかー」
エレクトロンのお気楽さと怠慢さに呆れる強田。
とは言え、文字通り、魔法少女は今から往く国では何も出来ないのだ。
先ずは宗教上の問題。
これから往く国の国教は、復古主義的女性蔑視思想な主張が目立ち、民主主義的な価値観や女性の権利を重視する現代社会と対立する。しかも、一夫多妻や児童婚が認められている。
「流石に古いだろ?戦国時代の人質かって言うの?」
また、家父長制の伝統が色濃く、そこに女性が入り込む余地はほとんど無いとの考え方がある。
「そんな事したら、意見が凝り固まって改善提案の新鮮味が無くなっちゃいますよ」
「女にしか解らない苦しみもあるしな」
当然、女性政治家の数も極端に少ない。
「その点だけは日本も一緒ですねぇー」
「ぐ!……返す言葉が無い(2021年10月時点での衆議院女性比率9.7%)」
しかし、今から往く国では魔法少女が参加出来ない最大の理由は、軍事政権と兵器推進善業の癒着と忖度による政策改悪に合った。
「それが、『無許可戦闘禁止法』だ」
「それって、ただ単に銃刀法が拡大誇張されているだけだろ?」
「それだけならまだ良い。だが、その申請の合否を決めているのが……」
「通常兵器だけで巨大怪獣を倒そうとしている」
「兵器推進善業」
神楽が真顔で頷いた。
「なるほどな。下手に魔法少女が活躍し過ぎたり、戦車やミサイルがあのデカブツに通用しない事がバレたりしたら、それこそ軍隊が非難の雨あられだからな」
「それに、欧米諸国に対抗して民主主義的な価値観を排除する為に、どうしても軍事力の強化は重大課題。魔法少女ブーム如きで躓く訳にはいかないと言うのが、これから往くエリアの言い分だ」
「正に独裁政治の汚点。いや、恥曝しだな」
強田の皮肉に呆れる神楽。
「鍋も蓋も無い事を言ってくれるな……」
が、実際は通常兵器の猛攻を浴びる事で成長する巨大怪獣を通常兵器だけで斃す事は不可能。寧ろ、敵である筈の巨大怪獣とその背後にいるダメージヘアー星人を喜ばせるだけ。
事実、最近の巨大怪獣の強大化は、この無許可戦闘禁止法による通常兵器の出しゃばりが最大の原因である。
それに、魔法少女管理委員会にとって無許可戦闘禁止法が都合悪い法律である理由はもう1つある。
「管理委員会の目が届かないとなると……」
そう。祭高明の事である。
「あいつらは図々しい犯罪者だ。もう、ルールを1つや2つを破ったって平然だよ」
「そう言えば、お前達は1度、祭高明と戦ったんだったな?」
「……ああ。そして、俺達は今から祭共の狩場に行くって事だな」
強田の皮肉に呆れる神楽。
「本当に……鍋も蓋も無い事を言ってくれるな……」
だが、強田の皮肉は続く。
「こうして視ると、国境ってもんがどれだけ邪魔でウザくてうっせえかが解るな」
「……鍋も蓋も無さ過ぎるなお前……」
一方、ダメージヘアー星人のネブソク少将は、反兵器推進善業国家と親兵器推進善業国家との致命的な戦果差にイライラしていた。
「相変わらす……あの忌々しい女共への対策が不十分過ぎるのぉー……」
未だに兵器推進善業の力を借りずに魔法少女を討伐する方法に辿り着けず、それどころか、母島決戦での怨人争奪戦で強田に先を越され、祭高明などと言った無許可で巨大怪獣の遺体の一部を売り飛ばす輩まで出現する体たらく。どんなに温厚な指揮官でも怒りを表したくなる散々な戦果である。
「特に……例の母島から怨人を盗み出した盗人女の妙な術は、それ以来、更に磨きが―――」
ネブソク少将が目の前のファイルを乱暴に投げ捨てた。
「ひいぃー!」
「ふざけるな!何だこの……ただぶ厚いだけで中身がスカスカの資料は!焚火の材料か!」
そこへ、ニコチン准尉が慌ててやって来た。
「大変です!」
「今度は何だ!?」
ニコチン准尉が会釈するのももどかし気に、
「例の母島から怨人を盗み出した盗人女が、ボルベス側の我々の味方の領地にぃーーーーー!」
その報告に、一同が驚愕した。
「なにいぃーーーーー!?」
ネブソク少将は嫌な予感しかしなかった。
ただでさえ魔法少女は巨大怪獣の天敵だと言うのに、強田はその中でも抜きんでた存在になりつつある、ダメージヘアー星人にとっては危険な存在であった。
兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人を2度も楽々と見抜いて抹殺し、上記どおり怨人の力を手に入れ、反兵器推進善業国家に致命傷を与える筈の動画を上回る動画を瞬時に生み出して反兵器推進善業国家を救った。正に三面八臂の如き働きでダメージヘアー星人を苦しめる魔法少女なのだ。
ダメージヘアー星人にとっては天敵中の天敵と言える化け物が、ダメージヘアー星人にとって都合が良過ぎる親兵器推進善業国家に入国しようとしているのだ。
ネブソク少将が気が気でないのも無理が無い。
「何とかしろ!」
「何とかしろ!」
「……何とかしろ!」
もはや漫才である。
「そんな事をしてる場合か!?何か手は無いのか!?」
で、出した答えは、
「ボルベス側の我々の味方の領地に入る前に、奴を倒すしかありません」
その意見を聞いて、ネブソク少将が頭を抱えた。
「それが出来れは……苦労はしない……」
兵器推進善業中東支部でも、もう直ぐやって来る強田対策でもちきりであった。
「奴は危険だ!このまま野放しにしたら、我々人類の成長と進化に必要な物を全て根こそぎ滅ぼすぞ!」
「その魔法少女が、もし本当に君の言う通りの存在なら、このまま入国させる訳にはいかん!」
「そうだ!我々は巨大怪獣を敗走させるところまで来たのだ!それを魔法少女などと言ういかがわしい存在に邪魔されてたまるか!」
兵器推進善業は気付いていないが、ダメージヘアー星人も巨大怪獣も地球側の習慣や習性を学習して対応を柔軟に改善しているだけなのだ。
つまり、巨大怪獣は欲張って通常兵器の餌食になる権利を得ようとして前に出て逆に不審がられるより、時間はかかるが通常兵器を少しだけ浴びて引っ込むを繰り返す事で、定期的かつ継続的に通常兵器の餌食になり続ける戦法を選び始めただけなのだ。
その結果、通常兵器だけで巨大怪獣を斃そうとする兵器推進善業の努力が報われ始めたと言う見当違いのぬか喜びしてる間、ずっと地球側にとって都合の悪い事が悪化の一途を辿り続ける、負の永久ループに突入しつつあるのだ。
だが、兵器推進善業や民主主義に反する国々はその事に全く気付かず、未だにダメージヘアー星人の手の上で踊らされ続けているのだ。
「それから更に兵器の強化と改良を重ねていけば、巨大怪獣の討伐も夢ではないと言うのに……あの馬鹿女はぁー!」
そして、叩達は決断する。
「奴の入国を逮捕しましょう!それ以外に人類の進化と安寧を護る方法はありません!」
その提案が、敵である筈のダメージヘアー星人や巨大怪獣を喜ばせるだけだと気付かず、一同がそれに全会一致で同意してしまった。
その間、この会議を盗聴していた祭高明が兵器推進善業の頭の悪さを嘲笑った。
「空気や流行が全く読めず、無意識の内に敵の思惑通りに動いてしまう……これ程敵に回した方が楽な敵も珍しい。彼らと戦ってるダメージヘアー星人が羨ましいくらいだ。ま、悪く言うと……馬鹿!ですかねぁー」
「とは言え、これ以上兵器推進善業が怪獣をパワーアップさせ過ぎると、我々の怪獣解体が更に困難になります。やはり何か手を打つべきかと?」
「元譲さん、どうします?消しちゃいましょうか?」
だが、祭高明は配下の魔法少女達の意見とは逆な事を言う。
「んー?別に消す事はないんじゃないの?」
「……よろしいのですか?」
「むこうもさぁー、管理委員会が送り込んだ魔法少女を煙たがってる様だし、取り敢えず……様子見で良いじゃないのかな?」
「そうですかぁー?」
親兵器推進善業国家に入国しようとする強田達に対し、祭一味は動かず静観し、兵器推進善業とダメージヘアー星人は入国阻止に尽力する。
果たして、強田達を乗せた船は、無事に港に辿り着ける事が出来るのか?




