第8話:珍推理の代償
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強田が目を覚ますと……
「え……?」
2人の魔法少女が全裸で寝ていた。
「何だこれはぁー!?」
しかも、どちらも味方に回すと厄介だが、敵になると非常に戦い易い存在であった。
「福山!何でテメェが俺のベットて寝てやがる!?」
「もーう。あんなに太い物を魅せておいてぇん。僕は子持ちの人妻なのに……君に浮気しちゃうじゃん♡」
翔太の言葉にゾクッとする強田。
「うおぉー!?気色悪い事を言うな!男が人妻を名乗るんじゃねぇ!」
強田に押しのけられそうになる翔太だが、
「君って本当にSなんだね?」
どう言う訳か笑顔が崩れない。
対する強田は、本当に背筋が冷たくなった。
「本当に気色悪いんだよ!マジでやめろ!」
確かに福山翔太は厄介だ。
が、もう1人の方がもっと厄介であった。
「つうか!……こいつ何なんだよ!?」
全裸の魔法少女が目を覚ます。
「ん……んーん……」
「お目覚めか?変態侵入者君」
全裸の魔法少女が局部を触れて何かを確認し、自分らしかぬ事態に愕然とした。
「何もされて……ない?……私が……ただ男の隣で寝てただけ?」
勿論、強田は怒った。
「何をするつもりだったんだお前はー!?」
そこへ、声を聞きつけてやって来た役員が入って来た。
「何か異様な音がしましたが……」
無論、全裸女性が2人もいる光景を見て驚かない者はいない。
「何をやってるんですか貴女方は!?」
強田が被害者面をしながら弱々しく答えた。
「それはこっちが訊きてぇよ」
そんな中、役員が1人の女性を見て怒鳴った。
「エレクトロンさん!また貴女ですか!?」
その言葉に頭を抱える強田。
「この変態女、何時もこうなのか?」
役員が渋々答える。
「エレクトロンさんも、貴女同様の元囚人なのです」
「囚人?こいつもあの検事に騙されてか?」
「いいえ。エレクトロンさんは、自ら魔法少女適性検査に臨まれ、自ら交渉を持ち込んだのです。ただ……」
「ただって何だよ?」
「元囚人なだけあって素行はあまり良くなく、売春や万引きの常習犯だったそうです」
それを聞いた強田は、昨日の深夜の事が怖くなってきた。
「売春?……いま……売春って言わなかったか?」
役員は、頭を抱えながら首を横に振る。
それを見た強田はみるみる蒼褪めた。
「冗談だろ?熟睡中に喧嘩を売られた事は山ほどあったが、女が男を夜這いするなんて初めて聞いたぞ!?」
強田の言い分に役員がツッコむ。
「寝込みを襲われた経験が豊富なのも異常事態なのですが」
「悪かったな。俺は喧嘩三昧な人生だったんで」
役員が困った様に溜息を吐いた。
「ハァー……」
「何か問題……」
翔太とエレクトロンを視て台詞を変える強田。
「だらけだよな?どう観ても」
役員は、困り果てながらこう述べた。
「本日からアレが解禁になったと言うのに……」
「……アレ?」
魔法少女達の生活も大分元に戻って来たが、やはり兵器推進善業が行った軍事クーデターがもたらした影響は完全には消えてはいない。
魔法少女が巨大怪獣討伐に遅れた理由が人間側にあるのは、国連の威信に関わると言う訳で、
「と言う訳で、本日より、各魔法少女管理委員会施設への警察組織の自由な出入りが解禁となった」
ライラの説明に、魔法少女達が驚きを隠せない。
「来るんですか?警官が、ここに?」
「そうだ」
その途端、皆が兵器推進善業への不満を口にする。
「えー!?嫌だぁー!?」
「最低!今直ぐ取り下げてよ!」
「迷惑なんですけどぉー!」
「元はと言えば、あいつらが意味不明な事を言いながらここを攻撃するから!」
「何が『兵器の威信に賭けてー!』よ。こっちのプライバシーやプライベートはどうでもいいって言うの!」
それらを聞きながら静かに食堂を去ろうとする強田。
が、ライラにどうしても言いたい事が有った。
「何で、アンタの様な奴が魔法少女に成らなかったんだ?よっぽと向いてるだろ?」
ライラが自虐的な笑みを浮かべながら言い放った。
「その話はやめておけ。つまらん嫉妬に巻き込まれても、なんの得も無いぞ?」
訊いてはいけない事を訊いた気がした強田は、会釈しながら皮肉を言った。
「あんたらは、あんなクソ動画(ダメージヘアー星人が提示した降伏条件)観た時点でもう巻き込まれてる」
そして、強田の頭の中で新たなる疑問が増えた。
(何でライラの様なアマじゃなくて、俺やあのバカ2人の様な屑ばっかなんだよ?)
一方、上司の命令で魔法少女管理委員会施設に行かされた松本警部が悪態を吐いていた。
「何で俺が、女々しくて小狡い手品師共の屋敷に行かなきゃならないんだ!」
同行していた後輩刑事が慌てて釈明する。
「文句があるなら兵器推進善業に言って下さいよ警部ぅ」
だが、松本は後輩とは逆の事を言い始めた。
「つまり、今の警察はそんなに情けないって事か?」
「どうしてそうなるんですか警部?」
「だってそうじゃねぇか。俺達は未だに魔法少女が使ってる手品のタネを暴けねぇんだからよ」
その途端、松本達に向けられた目線が一気に鋭くなる。
「ひいぃ!ちょっと警部!何でそれを今言うんですかぁ!?」
魔法少女達の目線に怯える後輩に説教を垂れる松本。
「情けない事を言うな!俺達が今日ここへ来たのは、その手品のタネを暴きに来たんだろうが!」
魔法少女達の目線が更に鋭くなった気がした後輩の腰が完全に引けた。
「ちょっと警部!どっちの味方なんですか!?と言うか、俺を殺す気ですか!?」
松本の説教が更に強みを増す。
「何だ?そのへっぴり腰は!?そんな事だから科学捜査班の嘘にコロッと騙されるんだ!」
「何でそうなるんですか!?彼らだって―――」
松本は後輩の言い分を紡ぎきる前に否定した。
「あんな現場に行こうとしないで、パソコンや理科の実験ばっかやってる引き籠り共の屁理屈のどこに真実が有ると言うんだ?刑事は目と耳と足と勘が命だ!現場百遍!聞き込み百遍!顔色百遍だ!」
他の魔法少女達が松本を毛嫌いする中、強田がわざとらしく案内した。
「だったら、実際に魔法少女の手品とやらを間近で観たらどうだ?ほら、あっちで練習してるぜ?」
それに対し、松本が強田に挑発的に近付く。
「見抜けるものなら見抜いてみろか?大層な自信だな?」
そして、松本達が魔法少女達が超能力の練習をする為に使用している空間へと向かった。
その途端、夏芽達が慌てて強田の許に駆け寄った。
「ちょっと何で!?悔しくないの!?」
「あんな奴、ガツンと言ってやれよ!」
「私達、馬鹿にされたんだよ!否定されたんだよ!」
だが、強田は松本達への怒りがいっこうに湧かなかった。
「んー?どうもあいつらが、テレビに出てくる名探偵を引き立てる駄目刑事に見えちゃってさ。だから、ついからかってやりたくなっちゃったんだよねー」
そんな気楽な強田に対し、夏芽達の怒りは収まらない。
「だからって」
結局、ありもしないトリックを発見出来ずにイライラする松本。
「くそ!俺の目は節穴か!?」
それを宥める後輩。
「やはり、ここは彼女達―――」
が、後輩の言い分を聞かない松本。
「直ぐに諦めるから日本の警察は馬鹿にされるんだ!現場百遍!今日は見抜けなかったかもしれんが、明日は見抜けるかもしれんではないか!」
対する魔法少女達は、強田以外が怒りに震えていた。
「あの糞親父……何時か目にモノを魅せてやる」
強田だけは、松本を見下す様にどこ吹く風であった。
「やめときなって。流石のあいつらでも、そこまでやったらお前達を庇いきれないって」
「何もせずにほっとけって言うのか!?」
「あーそうだよ。それに、いまどき聞き込みと勘だけが頼りって、警察学校で何を学んで来た事やら。そこら辺の三流テレビ局の方がまだ推理力が高いぜ」
それからしばらくして、松本達が施設中央に鎮座している隕石に触れようとしていたので、役員の1人が不安がる。
「あの方、大丈夫でしょうか?」
「ん?何が大丈夫だって?」
「伊藤さんと言う刑事さんは兎も角、あの松本警部は、1度も魔法少女適性検査を受けていないのです」
それを聞いた魔法少女達の何人かが何かを思い出した。
「そう言えば、健康診断の質問の欄に『魔法少女適性検査を望みますか?』って書いてあったけ?」
「そうなんですよ。ですが、あの松本警部は、1度もはいにチェックを入れなかったんです」
それを聞いた強田は、あの検事の事を思い出し、
「血液検査の結果次第では刑務所に戻っていただきます」
あれっと首を傾げた。
「あれ?……それって、任意だったけ?」
「覚えていないんですか?」
「自分で記載したのに?」
「いや……どっちかと言うと……騙されていたのか?」
そうこう言って間にも、松本達がどんどん隕石に近づいて行く。
「ですから、あの後が予想出来ないので困っているのです」
夏芽が珍しく怖い顔をしながら言い放った。
「良いじゃないですか。もしその警官さんが魔法少女になったら、私達が手取り足取りで魔法少女がどんなものかを、丁寧に教えて差し上げれば」
そんな夏芽の様子に強田が少し引いた。
「曙、お前……目が怖いぞ」
その時、パリンと音がして、そして……
「うぐ!?」
松本が突然もがき苦しみ始めた。
慌てて駆け寄る役員。
「何があったのですか!?」
「警部が、ここにあった隕石に色々と苦言を言っていたら」
その間も、松本の容体はみるみる悪化し、遂には嘔吐してしまった。
「げえ!げえぇー!」
駆け付けた強田が松本の治療を試みるが、
「げえ!げえぇー!」
「おい……逆に悪化してるそ!?」
翔太が隕石を囲っていたショーケースを視て少し驚いた。
「銃痕?……いや、違う!弾痕にしてはあまり熱くない!?釘を勢いよく飛ばした!?でも、隕石には釘は刺さってない!何なんだコレ!?」
その間も、松本は嘔吐を続けていた。
「げえ!げえぇー!」
エレクトロンが嫌な予感がしたので、松本の腕に切り傷を付けた。
「失礼!」
だが、流れたのは一般的な赤い血であった。
「違う!こいつはダメージヘアー星人じゃない!」
そして……松本は白目をむいて失神しながら嘔吐を続けた。
「誰か医者を呼んで来い!医者ー!」
数日後。
強田が松本の見舞いに行くと、
「ぐっぬうぅー……おのれぇー……」
そこには、アレキサンドライト色のおかっぱが特徴の巨乳美少女がいた。
「貴様ら……俺の身体に何をした?」
強田が嫌な予感がした。
「これってまさか」
そのまさかである。しかも、夏芽が嬉しそうに答えた。
「松本さん、見事に魔法少女に覚醒したんですよー♪」
強田は、松本に同情して涙を流した。
「俺も人の事は言えねぇが……哀れな……」
当の松本は怒りで震えていた。
「質問に答えろ。俺の身体に何をした?」
それに対し、夏芽が嬉々として言った言葉が凄かった。
「あと、性別も寝てる間に交換しておきましたからね♪」
その途端、少女漫画のお嬢様の様な驚き方をしながら両手で股間を隠す強田。
「曙さん、恐ろしい子!?」
松本が慌てて自分の股間を触るが、今までとは明らかに違う感触しかなかった。
「お……俺はまだ恵まれていた方なのか!?」
「貴様……逮捕だ」
だが、役員がそれを否定する。
「申し訳ございませんが、既に松本さんの所属がこちらに移っていますので、警察としての権限はございません」
勿論、そんな事では納得出来ない松本。
「貴様らは違法だ……詐欺罪だ……全員逮捕する!」
強田は寧ろ、松本に同情し過ぎて泣けてきた。
「悪魔だ。悪魔がいる」
で、松本は更に気になっている事が有る。
「あと……アレキサンドライト色のおかっぱって何だ!?意味が解らんぞ!」
役員が丁寧に答える。
「アレキサンドライトとは本来、光の種類や角度によって色が変わる宝石の事で、昼はエメラルドで夜はルビーだそうです」
当然、松本は怒る。
「ふざけるな!今直ぐ俺を元に戻せ!」
しかし、夏芽が嬉々として告げた。
「大丈夫♪私とエレクトロンさんが、手取り足取りで魔法少女の何たるかを、松本さんにたっぷり教えますからねー♪」
今度は、役員が劇画風の驚き方をしながら両手で顔隠した。
「何と信じられない!対極同士が怒りで結託するとは!?」
無論、松本の怒りが収まる筈がない。
「逮捕だ……お前ら全員逮捕だぁーーーーー!」
それを聞いた強田が、色々な意味で泣けてきた。
(お気の毒に……頑張ってこの試練に耐えて下さいねー!)




