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第1話 蝕まれる身体

 いつもの訓練を終えた優香とキリヤは研究所のカフェに来ていた。


「最近、調子いいみたいだね」


 優香がニコッと微笑みながらそう言うと、


「あはは。そうかな? でも、優香がそう言うのならそうなのかも!」


 キリヤは嬉しそうに頭を掻いてそう言った。


「何それ! でも本当にたくましくなったよね。研究所に来る前のキリヤ君ってもう少し弱々しかったような……」


 優香は頬杖をついて、思い出すようにそう言った。


「う……それは否定できない事実だね」

「でも今はさ、なんだか頼りになるっていうか……背中を預けられるくらいには成長したかな」


 優香は人差し指をピンと立ててそう言った。


「ありがとう、優香。優等生の糸原優香さんにそう言って頂けたこと、とても光栄に思います」


 キリヤが頭を下げながらそう言うと、


「うむ。苦しゅうないぞ!」


 優香は楽しそうにそう言った。


「あはは。でもさ、いつまでも守られるだけの子供ではいたくはないなって思うんだよ。だから、ね」

「いい心がけだね! まあ、私だっていつまでもキリヤ君の傍にいられるかわからないし――あ、ごめん。忘れて!」


 その言葉に首をかしげるキリヤ。


「え、うん。でも優香さ、最近よく言うよね。そう言う事を」

「そ、そう!? 気のせいじゃない?」


 優香をじっと見つめるキリヤ。


「ちょっと、何!?」

「うーん。そっか。僕の気のせいかもしれないね」

「でしょ? ……はあ」


 キリヤは完全に納得していない顔をしていたが、優香がそう言うならとそれ以上は深入りしないことにしたようだった。


 とりあえず、誤魔化せてよかった――そんなことを思いながら、ほっと胸を撫でおろす優香。


「でも何かあったらすぐに相談してよ? 僕たちは2人で1つのチームなんだからね! 優香の辛いことは、僕にも背負わせてほしいから」


 そう言って微笑むキリヤ。


「う、うん……わかった」


 優香はそう言いながら、笑った。


 そしてしばらくカフェで過ごしたのちに、優香とキリヤはそれぞれの部屋に戻っていった。





 ――優香の個室。


 優香は部屋に戻ると机に突っ伏して座った。


「はあ。私、余計なことを……」


 さきほどのカフェでの失言を反省する優香。


 キリヤ君は『ゼンシンノウリョクシャ』のことを知らない。だから本当のことは話せないよ――


「あの時、やっぱり聞いてもらうべきだったかな」


 暁とミケが研究所を訪れた時のことを思い出し、深い溜息をつく優香。


 そして優香は、今朝の出来事を思い出す。



 ***



『あれ、なんだか視界が悪いな……頭だけ先に覚醒したのかな。でも声も出ないし。一体どうして』


 そして優香は辺りを見渡した。すると――


『え、私……』


 腕があるはずの部分には、黒く細長い脚があった。


『私、蜘蛛になっているの? もうタイムリミットってこと……?』


 それからしばらくすると蜘蛛化が解けて、元の姿に戻っていた。



 ***



 顔を横に向けて、自分の右手の手のひらを見つめる優香。


「かなり侵食が進んでいるんだ。この間の襲撃事件で力を使いすぎたから、かな……はあ」


 それから再び机に顔を突っ伏す優香。


 すると、スマホが振動した。


「誰から……? ああ、白銀さんか」


 そして優香はスマホをタップして、届いたメッセージを開く。


『ミーティングルームに集合。次の任務について説明があるよ』


「次の任務、か」


 優香はふと不安になる。


 もしかしたら、次の任務が終わるまで自分の身体は持たないのではないかと。


「もうキリヤ君には隠しておけない、よね……やっぱり話そう。2人で話し合って、これからを決めたらいい」


 それから優香は立ち上がり、部屋を出た。次なる任務へと向かうために――。

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