第6話ー③ 訪問者
研究所内、廊下――。
剛は勉強の息抜きでフラフラと建物内を歩き回っていた。
「勉強ばっかりやってると、気が滅入るぜ……たまには身体も動かさないとな――」
そしてそう呟いた剛の前を物凄い速さで走り去るキリヤ。
「キ、キリヤ? どうしたんだ、慌てて」
「剛!? 剛もいいから逃げて! ここは危ない!」
「はあ?」
その場で首をかしげる剛。そして剛はキリヤが走ってきた方に視線を向けると、知らない子供がキリヤを追ってきているのを見つける。
あいつらは、いったい――?
そう思いながら、向かって来る子供たちを見つめる剛。
「待ってくださいよお、キリヤくうん? 痛いことはしませんからあ」
「くっそ。あいつ、意外と早いな……なかなか追いつかねえぞ」
なんか、穏やかな雰囲気じゃなさそうだな――
「おい、お前たち――!」
そう言いながら剛は、キリヤを追っている子供たちの道を遮るようにして立った。
すると、その子供たちは足を止め、剛を睨みつける。
「はあ? 今度は誰ですか? 私達は、キリヤ君に用があるんですけどお」
「ちっ……無駄な犠牲は出したくないって思ってたけど、仕方ないよな!」
そう言いながら少年は右腕を振りかざすと、そこから青々としたうろこが生やした。
「うわ! 相変わらず、きっしょいですね」
「うっせえ! ――ちょっと痛いけど、勘弁な!!」
少年はそう言って、うろこで覆われた右手の拳を剛に繰り出す。
「お前、能力者か! それなら――」
剛も右腕に炎をまとわせて、少年の拳にぶつける。
「お前も……ふん。おもしれえ!!」
少年はそう言って左手もうろこで覆い、今度は左手の拳を剛に繰り出した。
そして剛ももう片方の手を出し、炎をまとわせてその拳を受け止めた。
「やるな……」
少年はそう言ってニヤリと笑った。
「お前もな。ちょうど勉強の息抜きをしたいと思っていたから、助かったぜ」
そう言って見つめあう剛とうろこの能力者の少年。
「あのお。私は先を急ぐのでえ、あとは暑苦しい2人でごゆっくり!」
少女はそう言って、キリヤの方へと走っていった。
「だそうそうだ。お前、1人で大丈夫なのかよ」
剛が少年に向かってそう言うと、
「問題ねえ。俺だって『エヴィル・クイーン』の1人なんだからなっ!!」
少年は、そう言って剛を突き飛ばした。
「『エヴィル・クイーン』……?」
首をかしげる剛を見て、少年は目が点になる。
「は? ま、まさか知らないなんて言わせねえぞ! お前も『グリム』なんだろ!!」
「『グリム』……? なんだ、それ??」
さっきから聞いたことのないカタカナばっかりだな。なんかの専門用語か――?
「はあああ? じゃあお前は、何のためにここへ来たんだよ!」
「何のためって……偶然通りかかっただけだ!!」
剛はそう言って腰に手を当て、ドヤ顔をした。
だって、俺は散歩をしていただけなんだからな――!!
「それで戦おうって、馬鹿かお前……」
そう言いながら、少年は剛に呆れかえっていた。
確かにこいつの言う通り、無関係な場所に首を突っ込む俺は馬鹿かもしれない。でも俺の大事な友人を傷つけるって言うんなら、話は別だぜ――!
そして剛は少年の顔をまっすぐに見つめた。
「――お前たちは、キリヤを狙っているんだろ?」
「ああ、そうだ。だからお前には関係ない話だ」
「いや。だったら、俺にも戦う意味はある! だって、キリヤは俺の友人だからな!!」
「そういうことか――」
そして少年はニヤリと笑うと、
「じゃあ心置きなく戦えるな。無意味に相手をボコるのは好きじゃないが、お互い、守りたいものがあるのなら仕方ねえ。やるぞ!!」
そう言って剛に拳を向けた。
「おう!! ――っとその前に。お前の名前を聞いておきたい!!」
「はあ? 名前って――」
「俺は火山剛だ!! お前は??」
「勝手に名乗りやがって……俺は、ローレンスだ」
顔は日本人顔なのに、変な名前だな――
そう思いながら、ローレンスを見つめる剛。
「ま、いっか。んじゃ行くぜ、ローレンス!」
「ああ!!」
そう言って剛とローレンスは再び拳を交えたのだった。