表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/126

第6話ー① 訪問者

 ――『グリム』のミーティングルームにて。


 所長に呼ばれたキリヤと優香は、神妙な面持ちで机を囲んでいた。


「――え、政府に呼ばれているんですか? しかも『グリム』メンバーのほとんどが??」


 キリヤは呆気にとられながら、そう言った。


「ああ。だから今日は臨時休暇だ。ゆっくり過ごしてくれ」

「臨時休暇って……訓練は――」

「もちろん、禁止だ」


 所長は笑顔でそう言った。


「そうですか……」


 せっかくの休みなのに、残念――


 そう思いながら肩を落とすキリヤ。


「……でも、この招集は偶然なんですかね。誰かが意図して、『グリム』の人たちを呼び出しているように思えるんですが」


 優香は頬に手を当て、首をかしげながらそう言った。


 確かに、優香の言う通りだな――とキリヤは心の中でそう思った。


 滅多にお呼びがかからない政府から緊急招集がかかったうえ、その呼ばれたメンバーのほとんどが『グリム』の隊員だったことに、キリヤは違和感を覚えていた。


 僕や優香は呼ばれなったけど、でも――


 キリヤはそう思い、所長の顔をまっすぐに見つめる。


「優香君の懸念はわかる。でも断るわけにもいかないからな。仮に何かあったとしても、君たち2人がいてくれれば、研究所は何とかなるだろうし!」

「あはは。それは嬉しいお言葉です。『グリム』の総司令官殿にそう言っていただけるとは」


 そう言ってぺこりと頭を下げる優香。


「総司令官!? 私はそんな大層なもんじゃないさ! ただの研究者で、ここを任されている所長なだけだよ」


 そう言いながら、恥ずかしそうに頭を掻く所長。


「でも、所長あってのグリムですから」


 優香はニコッと笑いながらそう言った。


「あははは。ありがとう、優香君」

「いえ。それと、所長たちも気をつけてくださいね。何かあるとしたら、私達じゃなくて所長たちのような気がします」


 優香は所長の顔をまっすぐに見てそう告げた。


「そうですよ。敵のアジトに呼ばれたわけだし……」


 キリヤが不安な顔でそう告げると、


「敵って! それは大げさだよ。大丈夫――って絶対的な自信があるわけじゃないけど、でも神無月君も花咲君もいるからね。いざとなったら大丈夫さ」


 所長はそう言って笑った。


「あはは。確かに、神無月隊長がいたら百人力ですね」

「そうだろう?」

「ま、まあそうですね……」

「だからキリヤ君、そんなに心配しなくても大丈夫さ。それよりも君たちはここを頼んだよ」

「「はい」」


 そして翌日、キリヤと優香を除くグリムのメンバーは、政府に指定された場所へと向かって行ったのだった。



 ***



 とあるビルの屋上。研究所の方を見ている3人の子供たち。


「ふふふ。のこのこ出て行きましたよ、お馬鹿な大人たちが」


 双眼鏡を顔につけながら、キキはそう言った。


「キキは相変わらず、性格が歪んでんな……。それで、ほたる。この後の段取りは?」


 ローレンスはキキを横目に、ほたるにそう尋ねた。


「大人たちがもう少し遠くに行ったら、僕たちはあの建物に乗り込む。そしてターゲットを手に入れる」

「ターゲットって、魔女様のお気に入りだろ? 手に入れるって言っても、どうやって」

「話し合いで無理なら、力づく……ですよね、ほたる?」

「うん。魔女様の願いは、全て叶える。それが僕の役目」


 ほたるは研究所の方をまっすぐに見つめてそう言った。


「相変わらず、魔女様にお熱なわけだ……」


 ため息交じりにそう言うローレンス。


「ローレンスは魔女様の敵なの?」


 ほたるは冷たい視線をローレンスに送った。


「そういうわけじゃないって! ただ俺はほたるほど、魔女様に心酔できてないって言うか……まだまだこれからってことだな」

「そう。よかった。ローレンスとは仲間でいたいって思っているから」


 そう言ってほたるは再び視線を研究所にうつした。


「あ、そろそろ頃合いじゃないですか? 車もだいぶ遠くまで行ったようですよ」


 キキは双眼鏡を覗きながらそう言った。


「行こう」


 ほたるがそう言うと、ローレンスとキキはそれぞれ頷いた。


 それから3人はビルの屋上を出て、研究所へと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ