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第5話ー④ 不安

 キリヤの部屋にて――。


 キリヤはまだベッドの上でぼーっとしていた。


「疲れが取れていないのかも……休みでよかったなあ」


 キリヤがそう呟くと、扉を叩く音が聞こえた。


 誰だろ――? そう思いながら、扉の方に顔を向けるキリヤ。


「キリヤ君、おはよう! 入ってもいい??」


 扉の向こうからそう言う優香の声がした。


「うん。開いてるから、入ってきていいよ」


 キリヤはベッドから身体を起こしながら、そう答えた。


「ありがとう。ごめんね、突然……」


 優香はもじもじとしながら部屋に入ってきた。


「おはよう、優香。昨日はごめんね。それと……諸々ありがとう」


 はにかみながら、そう言うキリヤ。


「あ、あのね! キリヤ君、聞いて? 部屋にキリヤ君を運んだのは、確かに私だけど、でも……でも、着替えは違うの! それは、田川さんが勝手に――」

「ぷはははは!」

「え!? なんで笑うの?」


 突然笑い出すキリヤに、きょとんとする優香。


「だっていきなり来たと思ったら、そんなまくしたてるように弁解を始めたんだもん! あー。面白かった」

「面白かったって……私は必死だったのに!!」


 優香は顔を真っ赤にして、そう言った。


「でも、どうして? 仮に優香が着替えをしてくれたとしても、僕は優香を嫌いになったりしないよ」

「いや、それはわかるんだけど……うーん。はあ、まあいっか」


 優香はそう言ってため息を吐いた。


「優香?」

「もうこの話はお終い! どうせ、わかってもらえないし」

「?」

「そんなことよりもさ! 傷は大丈夫? 身体とか、どこか痛まない?」


 優香はキリヤの身体を見ながら、そう言った。


「うん。傷は『植物』の力で塞がってる。身体はちょっとだるいかな。だから今日はおとなしくしておくよ。また優香にぐるぐる巻きにされたくないしね」


 キリヤがそう言って微笑むと、


「昨日のあれは、キリヤ君が言ってもやめないからだよ! 普段からぐるぐる巻きになんてしません!」


 そう言ってぷいっと顔をそらす優香。


「あはは、そうだね!」


 笑うキリヤを見て、ほっとした顔をする優香。


「まあ元気そうならいいよ。今日はゆっくり休んで! それと、一人で何でも抱え込まないでよ? もっと私のことを頼ってくれてもいいんだからね? 一人で何とかしようと思いすぎなんだからさ!!」


 そんなに僕のことを気にかけてくれているんだな、優香は。きっと僕が弱いから――


「う、うん。ありがとう、優香」


 そう言ってキリヤは作り笑いをした。


「じゃあ私はこれからご飯を食べに行くけど、キリヤ君も一緒に行く?」

「あー、今日はやめておくよ。カフェまで行くのはさすがにしんどいかも……」

「わかった。じゃあ何か持ってくるね! キリヤ君はゆっくりしててよ」


 優香はそう言って微笑んだ。


「なんだか悪いなあ」

「いいの! 私が勝手にやりたいだけなんだから! やりたいことをやるって決めたの!!」

「そ、そう? じゃあ、宜しくお願いします」

「はーい。じゃあ、またあとでね」

「うん」


 そして優香はキリヤの部屋を出て行った。


「頼ってくれてもいいって優香は言ったけど、でもこれ以上、優香に頼るわけにも……」


 ため息をつき、再びベッドに寝転がるキリヤ。


 優香の想いに感謝をしつつも、キリヤはどこかもやもやとしていた。


 僕は誰かに守られているだけなのかな――


 そんな不安がふと頭に浮かんだ。


 力がほしい。力があれば――そう思いながら、キリヤは布団を握りしめたのだった。

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