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第4話ー③ 知らされる真実

 ――研究所内、廊下にて。


 検査を終えた剛が、自分の部屋に向かって歩いていた。


「はあああ。今日の検査も終わりっと。早く部屋に戻って、勉強の続きを――」


 ドスンと誰かとぶつかった感覚がした剛は視線を下に向けると、見たことのない少女が自分の目の前にいることに気がついた。


「ん? 誰だ??」

「あ、あの……ごめんなさい。スイ、迷子になってて……」

「迷子か。まあ確かにこの研究所って似たような道が多いから、仕方がないよな」

「お兄ちゃんは、だあれ?」


 その少女は剛の腹に顔をうずめながら、そう尋ねる。


 恥ずかしがりやなのか? でも迷子ってことなら、助けてやらないとな――!


「俺は剛って言うんだ。えっと、お前は??」

「スイの名前は水蓮です。先生とはぐれちゃって、それで……」

「先生? 学校の先生とここへ来たのか?」

「うん」


 定期検診か何かなのか――?


 そう思いながら、水蓮を見つめる剛。


「そっか。じゃあ一緒に探してやるよ! 今日は他にやることもないしな!」

「本当?? ありがとう、お兄ちゃん」

「おう! それと……なんで顔を隠したままなんだ? 恥ずかしいのか??」

「スイは人の顔を見ちゃダメなの。みんな死んじゃうから」


 し、死ぬ? ちょっと大げさじゃないか? それに、どういうことだろう――


 そんなことを思いながら、首をかしげる剛。


「えっと、じゃあなるべく水蓮の方を見ないで歩くから、とりあえず前を向こうか」

「うん……」


 水蓮は俯いたまま、剛の顔とは反対の方を向く。


「そのままだと歩きづらいだろうから、とりあえず手を繋いで歩こう。そうしたら、またはぐれたりはしないだろう?」

「わかった!」


 そして水蓮は剛の手をぎゅっと握った。


 剛はその手の小ささに驚きつつ、こんなに小さい子供が周りに気を遣って生きているんだな――そう思いながら、水蓮の先生探しを始めたのだった。


「そういえば、その先生ってどんな人なんだ? 特徴とか」

「うーん。ミケさんと一緒にいる!」

「ミケさん……?」

「うん。ミケさんは猫ちゃんなの。とっても温かくて優しくて!」

「そ、そうか……」


 猫を連れてこの研究所に来るって、いったいどんな人なんだろう。きっとすごく変な教師なんだろうな……たぶん猫と一緒にいないと不安で落ち着かないとかそういうタイプなのかもな――。


 そんなことを考えながら、剛は廊下を歩く。


 すると、反対の廊下から駆け寄ってくる人影が見えた。


「あ! 先生!!」

「え、あれが……って暁先生じゃないか!!」

「ああ。よかった、水蓮。それに剛!? なんでここに??」


 息を切らしながら駆け寄ってきた暁は、水蓮の頭を撫でながらそう言った。


「水蓮が迷子になったっていってたからさ。なんだ、水蓮の言っていた先生って暁先生だったんだな! でも猫って……?」

「ああ、猫。ミケさんなら、ちょっと優香のところにいるよ」

「へ、へえ」


 本当に猫を連れてきてたんだな。でもなんでなんだろう……まあ先生のことだから、きっと意味があるんだよな! さすが、暁先生だ!! 変な教師だなんて思ってごめん!!


 剛は心の中でそう思っていた。


「そうだ。剛、身体は何ともないか?」

「え?」


 いつもはそんなことを聞いてこないんだけどなと暁に少し疑問を抱く剛。


「ま、まあ今日の検査も問題なかったよ! 元気、元気!」

「あー、そっか! 何にもないならよかったよ!」


 ホッとしながら、そう言う暁。


「おう!」


 ホッとする暁の顔を見た剛は、自分が考えすぎだったかもとそう思った。


「水蓮も偉いな。ちゃんと約束を守ってくれて、ありがとな」

「うん!」


 偉いでしょ? と言わんばかりの笑顔を暁に向ける水蓮。


 約束――?


 剛はそう思いながら、首をかしげた。


「じゃあ帰ろうか。ミケさんがもう帰ってお昼寝したいからって」

「はーい! じゃあ剛君。ありがとう、ございました!」


 水蓮はそう言いながら、剛の方を見て微笑んだ。


「あ、ああ! またな!!」


 それから水蓮は暁に手を引かれて歩き出すと、


「ばいばーい!」


 そう言いながら剛の方を向き、手を振った。


 そして剛も水蓮に手を振り返す。


「あれ。顔は見ちゃいけないって……うーん。ま、いっか。部屋に戻って勉強しよう」


 そして剛は自分の部屋に戻って行ったのだった。


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