第4話ー① 知らされる真実
慎太の能力暴走事件から数日後。慎太のことは大々的にテレビで取り上げられていた。
『家庭問題か……はたまた学校でのいじめ問題か。彼はなぜ命を落とさなければならなかったのでしょう』
そんな特番が始まるたびにテレビのチャンネルを変えていく優香。
「なんでこんな、慎太君が可哀そうな子みたいな言い方――」
こんな番組を見たら、キリヤ君はきっとまた自分を責めるのではないか――と心配になる優香。
「支えなくちゃ。だって、私はキリヤ君のパートナーだもん!」
そう言って両手で拳を作り、胸の前でキュッと結ぶ優香。
そして――
「あれ……? 手から変な糸が……これって、蜘蛛の糸?」
優香は両手に絡みつく糸に首をかしげた。
「疲れてるのかな、私……」
それからベッドに寝転ぶ優香。
「しばらく任務もないし、少しゆっくりしよう。また任務が始まれば、ゆっくりする間もないだろうから」
慎太の一件から、しばらく『ポイズン・アップル』の事件から外れることになった優香たち。
やることのなくなった優香は部屋で資料を読んで過ごすか、たまに顔を出す神無月から稽古をつけてもらっていた。
そしてキリヤは訓練室に籠り、ずっと自主訓練を続けているようだった。
「キリヤ君、ずっと訓練室に籠りきりだけど大丈夫かな……でもきっと何かを手にしようとしているんだよね。だったら、今は好きにやらせよう」
それから今日も部屋で過ごす優香は先日の事件の資料に目を通していた。
「田中さん……まだ万理君は見つからない、か」
田中さんと約束していたんだけどな――優香は申し訳ない気持ちでそう思うのだった。
優香は外された自分たちの代わりに、その任務は初美が担当することになったと所長から聞かされていた。
田川さん、失礼がないといいけれど……普段、私達に対してはあんな感じだけど、外ではどんな感じで振舞っているのだろう――
優香はそんなことを考えてぼーっと資料を眺めていた。
しばらくすると、扉を叩く音が優香の部屋に響いた。
「はい。どなたですか?」
「私だよ。ちょっといいかい?」
「白銀さん? はい、大丈夫です」
突然部屋へやってきたゆめかに優香は首をかしげた。それから優香は部屋の扉を開けた。
「あの、何かあったんですか?」
「ああ、実は近々暁先生が研究所に来ると言っていてね」
「はあ」
なんでそんな報告を私にするのだろう――?
優香はそんなことを思いながら、ゆめかの話を聞いていた。
「――ってことで、一応キリヤ君にも先生が来ることは伝えておくよ」
「はい。お願いします」
「それじゃ、私はこれで」
そう言ってゆめかが部屋を出ていった。
先生が私に何の用なんだろう。今まで私を訪ねてくることなんてなかったんだけどな――
「ま、いっか。その時になればわかることだもの」
そう言って優香は再びベッドで寝転んで過ごすのだった。
数日後。研究所に暁がやってきた。なぜか小さな女の子と三毛猫を連れて。
「えっと……その子とその猫はなんですか?」
疑問を抱いた優香は暁にそう尋ねた。
「あー、えっと。水蓮のことは白銀さんから聞いてもらった方が早いかな。そして今日話があるのは、俺じゃなくてこの猫のミケさんなんだ」
「……はい?」
猫が私に用がある? 先生は今私にそう言ったの――??
優香は暁の言葉を理解できず、思考がフリーズする。
「ああ、ごめん! 順を追って話すから!!」
「は、はあ」
「そういえば、キリヤはどうしてる? いつも一緒ってわけじゃないんだな」
そう、だよね。暁先生なら、そう思うよね――
優香はそう思いながら暗い表情になると、
「あ……えっと。最近いろいろとあって、今は修行中みたいな感じです」
そう言って俯いた。
「修行中……?」
「はい。あとから挨拶に行かれますか?」
淡々と答える優香。
「いや。忙しいならまた今度でいいよ。頑張るキリヤの邪魔はしたくないからさ」
「そう、ですか」
でも本当は先生が会ってくれた方が、少しは気がまぎれるんじゃないかって私は思ったんだけどな――
優香はそう思いながら、俯いた後に笑顔を作って暁の方を向いた。
「じゃあ打ち合わせルームを取ったので、そちらでお話しましょうか。その……ミケさん? の話を」
「おう!」
そう言って優香たちは研究所の中へと入っていった。




