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第3話ー⑫ 毒リンゴの力

 ――数時間後。


「ああー。楽しかったね!」


 キリヤは背伸びをしながらそう言ってゲームセンターから出てきた。


「仕事中なのにこんなことしているのがばれたら、すごく怒られそうだね!」


 慎太は意地悪な顔でキリヤにそう言った。


「ははは……確かに。こんなことしているなんてばれたら、きっとひどい有様になるんだろうな」


 キリヤは遠い目をしながらそう言って、優香にばれた時に蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされる未来を想像していた。


 そんなキリヤを見て、慎太は楽しそうに笑っていた。



「ははは! ああ、キリヤ君と一緒にいると楽しいなあ。ありがとう、僕と友達になってくれて!」


「僕の方こそ、ありがとう。こんな青春みたいなこと、僕は一生できないと思ってた。だから慎太には感謝しかないよ」


「喜んでくれているみたいでよかったよ! じゃあ僕はそろそろ帰るね。父さんと母さんが心配して騒いでも困るから」



 そう言って少し困り顔をする慎太。


「うん。じゃあ、またね」

「あ! そうだ!! 連絡先、教えてよ! そしたらまた今日みたいに遊べるでしょ?」

「うん! 喜んで!! まだしばらくこの街にいるから、また遊びに行こう。それと慎太の探している女の子のことも、ね?」

「ありがとう、キリヤ君!」


 そしてキリヤたちは互いの連絡先を伝え、別れたのだった。


「えっと、今何時……19時半!? 急がないと、集合時間に間に合わないな」


 それからキリヤは急いで優香との集合場所に向かうのだった。


 それにしてもあっという間の一日だったな。これも慎太のおかげかな。


 この時間が永遠に続けばいい……なんて思っていることは秘密にしよう。あくまで僕は仕事のためにこの街に来ているんだから。友情を育むためなんかじゃないんだから――。


 そしてキリヤは集合時間を少し超えてから集合場所に到着し、優香にこっぴどく怒られるのだった。




 キリヤたちがこの街に仕事で来るようになって、1週間が経過した。


 キリヤは相変わらず、午前は一人で調査をして午後からは慎太といろんな場所を周っていた。


 カラオケ、ボーリング、ファミリーレストラン。慎太はキリヤが知らないことをたくさん教えていった。


「慎太、今日もありがとう。慎太のおかげで、毎日が楽しいよ」


 キリヤは笑顔で慎太にそう告げると、


「それはこっちのセリフ。僕はキリヤ君に会うまでは、ずっと荒んだ日々を送っていたんだ。こんなに笑う日が来るなんて思いもしなかった。だから僕の方こそありがとうだよ」

「慎太……」

「これからもずっと友達でいてくれる? もしキリヤ君がこの街を離れることになっても」


 慎太はそう言って、さみしそうな顔をする。


「もちろん! 僕たちはもう友達でしょ? どこに行ってもそれは変わらないから」


 キリヤは慎太に笑顔でそう返した。


「ありがとう!! じゃあ、僕はこれで! またね、キリヤ君!!」


 慎太はそう言って、右手を大きく振って帰っていった。


「またね!!」


 キリヤもそう言って手を振り返した。


「よし。じゃあ帰ろうかな。また優香に怒られる前に」


 そしてキリヤは優香との集合場所へと向かったのだった。



 ***



 とあるビルの屋上。奇抜な服装をした少女がビルから下にある道路を見下ろしていた。


「試作中のリンゴエキスの効果はそこそこって感じですねぇ。でもそろそろ副作用が出てくる頃かも? ふふふ。あの子がどうなるか楽しみです」


 そう言って少女は不気味に笑う。


 そしてその少女の視線の先にあるのは、慎太だった――

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