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第3話ー⑪ 毒リンゴの力

 ――数分後。


 バーガーを食べ終えたキリヤたちは、店内でゆっくりと過ごしていた。


「キリヤ君、こんなところでいつまでもサボっていて大丈夫? 同じ仕事の人に怒られない?」


 食べ終えてからしばらく経つのに、いつまでもお店を去らないキリヤに疑問を抱いた慎太が心配そうにキリヤへそう問いかけた。


「え? ああ、うん。大丈夫! 結構緩い職場だからね!」


 そう言ってキリヤはごまかすように笑った。


「そっか!」


 慎太は納得したのか、そう言って笑っていた。


「慎太は放課後いつもここにいるの?」

「うーん。いつもじゃないけど、大体はここにいるかな。友達もいないしね。でもすぐに家にも帰りたくないんだ」

「家族と仲が悪いの?」


 慎太の顔を見て、キリヤはふいにそんな言葉を発していた。



「別にそういうわけじゃないんだ。ちょっとわけがあってしばらく家から出ていた時に父さんも母さんもすごく心配してね……それから過保護になって、ちょっと面倒くさいというか……」


「面倒くさいなんて、そんな罰当たりな」


「なんか言い方が悪かったよね、ごめん。本当はありがたいと思うんだけど、でも外出しようとするたびに『どこに行くの』とか『何時に帰るの』とか聞かれるのはちょっとね」



 そう言って、ため息を吐く慎太。


 キリヤは自分と慎太のことを比較して考えていた。


 自分はしばらく親と暮らしていない上に、正直あまりいい関係ではない。だから慎太のことが少しだけ羨ましい――そんなことを思いながら、慎太を見つめるキリヤ。


 しかしそれが必ずしもいいというわけではなく、それはそれで苦労があるんだという事をキリヤは知った。


「いろいろ大変ってことなんだね」

「そうだね……あ! ねえキリヤ君、まだ時間大丈夫?」

「え!? う、うん。どうしたの?」

「ちょっと付き合ってほしいところがあって!」


 楽しそうにそう言う慎太。


 一体に何をするつもりなんだろう――


 そしてキリヤは慎太と共にバーガーショップを出て、言われるがままついていった。


 それからキリヤたちが向かった先は――


「ここです!!」

「え!? ここって!!」


 店の外に漏れる大音量のサウンド、そしてチカチカと輝く電飾。


「ゲームセンターです!!」


 慎太はニコニコとしながら、キリヤにそう言った。


「一度は友達と来てみたかったんだよね!」

「友達……僕と、慎太が?」

「そう! 違った? 昨日、友人って言っていたからさ」


 そう言われたキリヤは、嬉しくて顔が緩み切っていた。そして慎太に最高の笑顔を向けると、


「ううん、違わない! 僕と慎太は友達だよ!!」


 そう答えたのだった。


 それからキリヤたちはゲームセンターに入っていった。


 ――ゲームセンター内。


「外に音が漏れていたけど、この大音量なら納得だね」


 キリヤはそう言いながら、慎太の後ろを歩く。


「え? キリヤ君、何か言った?」


 あまりの大音量でキリヤの声は慎太に届いていないようだった。


「いや、ここの音楽が大きいなって話!」


 そして今度は少し大きめの声でそう言うと、


「そうだね!」


 慎太はそう言って笑った。


「それで、何をするの?」

「ゲームセンターでやることなんて決まっているじゃない?」


 そして慎太はUFOキャッチャーコーナーへ。


「これですっ!」


 慎太に言われて目を向けると、そこには派手な電飾が施されているUFOキャッチャーがあった。


「これは、かの有名なUFOキャッチャー!? 昔、地元のスーパーに小さいものはあったけど、こんなに派手なタイプは初めてだよ」

「キリヤ君って、本当にどんな環境で育ったの!? お坊ちゃまか何かだったり……?」

「そういうわけじゃないんだよね。ははは……」


 まさか自分がS級クラスで、ずっと保護施設で育ったとは言えなかったキリヤ。それはS級の自分が外の世界に出て行っていることを知られてはいけないことだったからだった。


 S級が外の世界で当たり前のように過ごすこと、それは当たり前のことではないことなんだよね――


 そんなことを思いながら、キリヤは苦笑いをした。


「そっか! うーん、じゃあさっそく――」


 それからキリヤは慎太からゲームの攻略方法を聞き、さっそくプレイをしてみた。しかし聞いた攻略法を試すもなかなかうまくいかず、結局キリヤの報酬は0だった。


 どうやら僕は、こういう才能を持ち合わせていないらしい――。


 そんなことを思いながら、肩を落とすキリヤ。


 それからキリヤたちはまたUFOキャッチャーをして悔しがったり、リズムゲームをしたりしながら楽しい時間を過ごしたのだった。


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