第3話ー⑦ 毒リンゴの力
慎太とキリヤは路地裏にあったビールケースに腰かけ、その場で会話をしていた。
「――へえ。キリヤ君は仕事のために、ここへ来たんだ」
「そう! だから今も仕事中なんだよね……」
キリヤそう言いながら、困った顔をする。
「あ、そうだよね!? ごめん、僕……」
「いや、いいんだよ。これも情報収集ってことで!」
「ありがとう!」
慎太は笑顔でそう言った。
「そういえば、さっきのことなんだけど……なんであんなことを?」
キリヤは慎太が少年の顔を掴んでいた時のことを尋ねた。
「……許せなかったんだ。実は僕も前に不良に絡まれて、さっきの蹲っていた子がいたでしょ? その子がされていたみたいに、暴力を振るわれていたんだ」
「え、そんなことが……でも慎太って低級能力者ではないみたいだけど、なんで不良に絡まれたの?」
「僕も前まで、低級能力者だったから」
そう言って悲しそうに笑う慎太。
「前まで……?」
「そう。とある女の子に助けてもらってね。その子が僕に力をくれたんだ」
その言葉にキリヤははっとした。
力をくれたってことは、もしかして――
そして慎太は『ポイズン・アップル』を使ったことでクラスアップしたのではと言う仮説を立てるキリヤ。
じゃあそれが本当なら、行方不明になっていた少年って言うのは――
それからキリヤは慎太の方を見ると、
「その子のこと、少し聞いてもいい?」
真剣な表情でそう言った。
キリヤの真剣な表情に少々驚いた顔をする慎太。そして、
「え……うん。いいよ」
そう言って頷いた。
「じゃあ、ね……その子の名前とか、どこにいるかとかわかるかな?」
「名前は確か……『キキ』ちゃんって言ったかな? でもどこに住んでいるかはわからないんだ」
慎太は申し訳なさそうな顔でそう言った。
「そっか――」
「あ! けど『エヴィル・クイーン』って言葉を聞いたよ! それってどこかのお店かテーマパークなのかな」
慎太はそう言って、腕を組みながら考えていた。
「『キキ』に『エヴィル・クイーン』……か」
関係性はわからないけど、それだけわかれば何か見つかるかもしれない――
そう思いながら、キリヤは一人頷く。
「キリヤ君?」
「ああ、ごめん! ちょっと考え事をね……ありがとう、慎太! すごく有益な情報だよ!!」
「そ、そうかな? えへへ。そんなに喜んでもらえると嬉しいなあ」
照れながら頭をかく慎太。
「それで、慎太はその人たちとの関りはもうないの?」
「え!? う、うん。もうない、よ……? 本当は力をくれたことのお礼がしたんだけどさ」
残念そうな顔でそう告げる慎太。
「そっか……」
慎太はもしかしたら『ポイズン・アップル』の実験施設に行ったことがあるんじゃないか? もしそうだとしたら、やり方は汚いかもしれないけど慎太といればいつかそのヒントが得られるかもしれない――。
ふとそう思ったキリヤは、
「慎太! 僕、その人たちを探すのを手伝うよ!」
笑顔でそう告げた。
「え!? でもキリヤ君には仕事が――」
「友達が悩んでいるのに、仕事なんてしている場合じゃないでしょ? それに慎太は有益な情報をくれたし、これくらいお礼させて!」
「うん。ありがとう、キリヤ君!」
それからキリヤは慎太と共に『キキ』という少女を探すため、繁華街を歩き始めるのだった。