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第3話ー③ 毒リンゴの力

 とある研究施設内。そこには政府が極秘で管理している『エヴィル・クイーン』と呼ばれる組織があり、その施設内では『エヴィル・クイーン』に属する子供たちが生活していた。


「キキ。お前、あのガキをどうするつもりだ?」


 目の前にいる奇抜な服装の少女にそう言うのは、ツンツン頭の目つきが鋭い少年。 


「ローレンスには関係ないでしょう? せっかく面白いことを思いついたんですから」

「面白いことって……相変わらず、性格悪いなあ。お前もそう思うだろう、ほたる?」


 ほたると呼ばれた少年は無表情のままこくっと頷いた。


「はいぃ? ほたるまでそれを言っちゃいますか?」

「ははは! ほたるがそう言うなら、お前はやっぱり性格最悪ってことだな!」


 ローレンスはキキに向かって挑発的にそう言った。


「最悪とまでは言ってないじゃないですか! ローレンス、いい機会だから私の実力の方が上ってことを証明しましょうか?」


 キキはそう言いながら、手のひらに冷気を溜める。


「いいぜ。天気ウェザーになんて、俺の力は負けないからなあ」


 そう言ってローレンスは腕まくりをする。それからにらみ合う2人。


「喧嘩はダメ。魔女様が困るから」


 ほたるは表情を変えず、淡々と2人にそう告げた。


「で、でもよ!」

「じゃあ僕と戦う?」


 ほたるが無表情でローレンスにそう言うと、そんなほたるに怖気づいたローレンスは一歩後ずさった。


「悪かったよ……」

「うん。わかったならいい」

「まあ今のローレンスじゃ、本気のほたるには敵わないですしね。ま、私もですけど」


 キキがそう言うと、ローレンスはキキの顔を睨みつける。


「あー、怖い怖い」


 キキは呆れながら、ローレンスにそう言った。


「キキ、てめぇ――!」

「まだ、続けるの?」


 ほたるは手のひらに電気を走らせ、キキとローレンスを交互に見ながらそう言った。


「もうしないから! だからビリビリはやめてくださいって! そんなんじゃ、お友達がいなくなりますよ!!」

「僕、友達いないから……」


 しゅんとするほたる。


「あ、なんか……ごめんね」


 キキはそう言って申し訳なさそうな顔をした。


「うふふ。相変わらず、3人は仲良しみたいねえ」


 突然聞こえたその声にほたるは驚いてびくっとするが、その顔はすぐ笑顔になり「魔女様!!」と言って現れた女性に跪く。


 それからキキとローレンスもほたるに続いて、『魔女様』と呼ばれた女性の前で跪いた。


「うふ。いい子たちね……」


 そう言ってにこりと微笑む魔女。


「魔女様、今日はどうしたんですか!」


 ほたるは嬉しそうに魔女へ問う。


「ええ、キキが連れてきた子供を見に来たの」

「そう、ですか……」


 そう言って、しゅんとするほたる。


「それと、ほたるたちの顔を見に来たのよ」


 それを聞いたほたるの顔がぱあっと明るくなり、


「あ、ありがとうございます!」


 笑顔でそう答えた。


「じゃあ、キキ。案内してくれる?」

「はい。かしこまりました」


 そう言って、キキと魔女は部屋を出て行った。


「ふう。緊張した……ほたるは相変わらずみたいだな」


 ローレンスはそう言いながら、ほたるの方を向く。


 するとほたるは魔女たちが出て行った扉をうっとりと眺めたまま、何も発することもなく佇んでいた。


「聞いてるか、ほたるー?」

「うん。聞いてる」

「お前って、本当に魔女様のことが好きだよな」


 ローレンスはやれやれという顔でほたるにそう言った。


「うん。僕は魔女様の為なら、どんなことだってするよ。僕の心も体も全て魔女様のものだからね」


 そう言って、満面の笑みをするほたる。その笑顔はとても狂気じみていた。


 ローレンスはその笑顔を見て少しぞっとすると、


「ほどほどにしておけよ……」


 ほたるにそう告げたのだった。



 ***



 廊下にて――。


 部屋を出たキキと魔女は、連れてきた少年の元へと向かっていた。


「それで、その子の決め手は何だったのかしら?」


 魔女は歩きながら、隣にいるキキに尋ねる。


「復讐心……ですね。ものすごい憎悪の感情を抱いていたので、これは期待できるかなと思って」


 魔女は顎に手を当てて、


「うーん。復讐心か……」


 そう答えた。


「何かあるのですか?」


 キキはそんな魔女の顔を覗き込むように尋ねる。



「前にも復讐心に期待して、開発中の薬で実験した子がいたんだけど……結局、自分の復讐心を制御できなくなって暴走してしまったのよね」


「それって、あの施設に弟がいるって言っていたあの人のことですか?」


「ええ。それに今はその子も研究所の……『グリム』の連中に捕らえられてしまった……」


「厄介ですよね。『グリム』の連中もあの施設の教師も。やろうと思えばいつでも潰せるのに、残しているのはなぜなのでしょうか?」



 キキは不思議そうな顔を魔女に問う。


「うふふ。まだその時じゃないからよ……」


 そう言いながら、魔女は不敵に笑う。


「その時?」

「ええ。だからもう少しの辛抱ね。私達の――いえ。低級能力者たちの願いを叶えるまでは頑張りましょう、キキ?」

「はい!」


 そして2人は『実験ルーム』と書かれた部屋の中へと消えていったのだった。

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