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第3話ー① 毒リンゴの力

 都内にある古びたアパート――


「あのそれでお話というのは……?」


 アパートの一室から姿を出し、黒服の男性と会話をする女性。


 服はつぎはぎだらけで、ずっと同じ服を使いまわしているようだった。


「ええ、実はお宅のお子さんが政府の研究対象に選ばれたんです。そのご報告をと思いまして」

「研究対象……?」

「はい。ご協力いただけたら、ご家庭に政府から援助金を支給させていただいておりまして……その金額なんですが」


 そう言って書類を女性に見せる黒服の男性。


「……こ、こんなに!?」

「もしご協力いただけたらの話ですが。それにご要望があらば、増額も検討しますよ」


 そして少し悩んでから女性はその黒服の男の話を承諾した。


 しばらくしてその女性の子供は政府の極秘施設に連れていかれ、女性の元には大金が振り込まれる。


 しかし――


「お子さんの精神が崩壊しました。研究は失敗です。これ以上の援助は出来かねます」


 その一通の手紙を最後に、女性は二度と自分の子供に会うことはなかった。


「私は大金に目がくらんで、自分の子供を犠牲に……なんで、なんでこんなことに」


 女性は手紙を胸に抱き、泣き崩れた。


 どれだけ女性が泣きわめいても、その事実は変わらないままだった。



 ***



『グリム』のミーティングルームにて。


 報告書を読みながら、眉間に皺をよせるキリヤ。


「どうしたの?」


 優香はそんなキリヤの顔を覗き込むように尋ねる。


「……これ」


 キリヤはそう言って、優香に持っていた報告書を手渡した。


「『ポイズン・アップル』の事件か……最近、増えたよね」


 優香は報告書に目を通しながら、キリヤにそう告げる。


「報告書で事件があったことはわかっても、僕はまだ何もできていないんだって思うと悔しくて……『ポイズン・アップル』の被害者を出さないためにここへ来たはずなのに」


 キリヤは唇を噛みしめながら、そう告げた。


「キリヤ君の悔しい気持ちはわかるよ。私もこんなこと、早く終わらせたいって思うもん。でも、ここで悔しがっていても何も変わらないのも確かじゃない?」


 優香はそう言って、キリヤに微笑んだ。


「……そうだね」

「じゃあ、訓練いこう! 早く一人前になって、最前線で事件を捜査したいじゃない?」

「うん! 優香の言う通りだね!」


 そう言って、キリヤは立ち上がる。


 ――僕は僕のできることをやるんだ。


 キリヤはそう思ながら、訓練室に向かって力強く歩き出したのだった。



 ***



 都内某所――


 路地裏にたむろう少年たちの姿があった。


「何だよ、その目! 低級能力者のくせに、生意気だな!」


 そう言いながら、学ランを来た高校生が一人の少年を殴っていた。


「おいおい。そろそろ死んじまうんじゃないか? やめてやれよ~」


 殴っている高校生の後ろには、他に2,3人の高校生男子が立っており、その様子を見ながら楽しそうに笑っていた。


「もし死んだって、能力が暴発して……とか言っときゃいいだろ。今までもそうだったんだからさ」

「それもそうだな! ははは!」


 そしてそれからも高校生男子たちの暴行は続いた。


「――そろそろ反応もなくなってきてつまんなくなったな。この辺にしとくか」


 そう言って、暴行していた高校生はうずくまる少年に蹴りを入れ、あざ笑いながらその場を後にした。


 高校生が去った後でも少年は言葉を発することもなく、その場に倒れたままだった。


 するとそこへ、


「あれれー? こんなところで何しているんですか?」


 そう言って倒れる少年に声を掛ける影。


 少年はゆっくりと顔を上げて、その声のする方を向く。


 するとそこには、奇抜な服装をしているツーサイドアップヘアの少女が立っていた。


「死にかけって感じですね。まあ一部始終を見ていたので、何しているんですかって問いはおかしな話か」


 そして少年は何も言わずに少女を見つめていた。


「……ねえ、君。力ほしくないですか? さっきのうっざい奴らに復讐しようよ」


 そう言って不気味に微笑む少女。


「ふく、しゅう……」


 少年は力なくそう答えた。


「そうです! 私はその力を君に分けられます! 私は君を助けたい。君はあのうざいやつに復讐できる……。なんてすばらしいことでしょう!!」

「……僕は」

「どうしますか? チャンスは一度きりですよお?」


 そう言いながら、顔を覗きこむ少女。


「したい……あいつらに、復讐したい!」


 少年は力を振り絞って、そう告げた。


「んふふ~、じゃあ君は今日から私のお友達ですね! 私はキキと申します。よろしく!」


 そう言って、キキは少年に手を差し出す。


 そして少年がその手を取ると、2人はその場から姿を消したのだった。

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