第2話ー⑤ 眠り姫との再会
そして翌日。キリヤたちは研究所に戻ることになった。
いろははキリヤと優香を村の入り口まで送り届けるといって、施設の外に着いてきた。
「そんなに簡単に出歩いて大丈夫なものなの?」
キリヤは歩きながら、いろはにそう尋ねる。
「だいじょぶ、だいじょぶ! この村は安全だから」
そして村の入り口には八雲が待っていた。
「やあ、待っていたよ! お疲れ様、2人とも」
八雲さんはそう言いながら、優しい笑顔でキリヤたちを迎える。
目の下のクマは見ないふりをしよう。八雲さん、本当にごめんなさい。感謝しています――
そう思いながら、心の中で両手を合わせてお辞儀をするキリヤ。
「八雲さんも朝早くからお疲れ様です」
キリヤはそう言いながら、ぺこりと頭を下げた。
「ははは……これが僕の仕事だからね」
そう言って精一杯の笑顔を向ける八雲。
「優香、ちょっと……」
キリヤはそう言って優香を手招き、八雲さんに背を向けた。
「何?」
「帰りは極力トイレ休憩を挟もう。途中で寝落ちの可能性がある」
それからちらりと八雲の方を見るキリヤと優香。
「わかった。なるべく交互にね」
「うん」
「2人共、どうしたんだい?」
八雲が心配そうに背後からそう言った。
「あ、大丈夫です! 行こう、優香」
「うん」
それからキリヤと優香は車に乗り込んだ。
「じゃあ、いろは。元気でね」
「うん! 次会う時は、ここじゃないどこかがいいね」
そう言って笑ういろは。
「早くこの事件が解決できるよう、僕たちも頑張る。だからいろはもあと少しだけ頑張って」
「うん! 信じてるからね! 2人が必ずこの事件を解決するって!」
「ありがとうございます。頑張ります」
「じゃあ、そろそろ行きますよ」
八雲が運転席から振り返りながらそう言った。
「はい!」
「そうだ、キリヤ君! これ、まゆおに」
そう言って、いろははキリヤに封筒を手渡した。
「できればまゆおが卒業するまでに渡してほしいな。アタシは元気でやってるよってさ!」
「手紙か……うん、わかった。必ず届けるよ」
そしてキリヤはその封筒を受け取った。
「じゃあ、また」
「うん! バイバイ!!」
そして車は動き出し、いろはのいる村を後にした。
「また頑張る理由が増えたね」
優香はそう言いながら、キリヤに微笑みかけた。
「うん。そうだね」
僕はいろはみたいな『ポイズン・アップル』被害者を救うために研究所へいくことに決めた。だから僕は僕のやるべきことを果たす――。
「必ず『ポイズン・アップル』の事件を解決しようね」
「もちろん!」
今回のことでキリヤは自分たちの目的の再確認ができた。
その時に感じた新たな決意を胸に、今日も僕たちは前へと進んでいく。交わした約束を守るために――。
それからキリヤたちを乗せた車は、研究所に戻って行ったのだった。




