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第1話ー② 初任務

 数分後、荷解きを終えたキリヤは部屋のベッドに寝転んだ。


「やっと終わったー」


 ふかふかの布団に身をゆだね、キリヤは身体を休めた。


「これから僕たちはどうなっていくんだろう」


 キリヤは不意にそんなことを思った。


 そもそも僕がここに来た理由は、能力者を助けたいと思ったからだ。『ポイズン・アップル』の一件もそうだし、それに職場体験のホログラムで見たあの少年――


 2月に研究所で行った模擬訓練のことを思い出すキリヤ。


「あの時はまだ無力だったな。まあ、今もなんだけど……」


 でもせっかく授かった能力なんだから、僕はこの力で誰かのためになることをしたい――そう思いながらキリヤは小さく頷いた。


 ――だから僕はここで強くなる。そして僕の力で、救えなかった命や心を救いたいんだ。


 そしてキリヤは目を瞑り、微笑みながら、


「頑張ろう……」


 とそう呟いた。


「ほほほ。きっと君なら大丈夫じゃよ」


(そうだよね。うん! って――)


「え……?」


 急に聞えた声に驚き、身体を起こすキリヤ。


(今どこからか声がしたような……。しかも『じゃよ』って!?)


 そう思いながら、きょろきょろと周りを見渡すキリヤ。


「ほほほ。驚いたかのう!」


 そう言いながら、ベッドの下からロングヘアでぱっつん前髪の小柄な女性が出てきた。


「え!? だ、誰ですか!!」

「わしか? わしの名前は、田川初美たがわはつみじゃ。どこにでもいる変なお姉さんじゃな。ほほほ」

「どこにでもいる変なお姉さん……?」


 いろいろとツッコミたいことはあるけど、どこからツッコむべきかわからない――そんなことを思いながらキリヤはあきれ顔になっていた。


「そうじゃ。変なお姉さんじゃ!」


 キリヤが突然現れた初美に困り果てていると、部屋の扉が開く。


「やっぱりここにいたんだね、初美。声がしたからもしかしてとは思ったけど。部屋にいないから、探していたんだよ」


 ゆめかはそう言ってキリヤの部屋に入ってきた。そしてその後ろには優香の姿もあった。


「おお、ゆめかか。すまんのう。面白い新人が入ると聞いて、居ても立っても居られなくてのう。ついベッドに潜り込んでしまったわい! ほほほ!」


 初美は悪びれもなくそう言って笑う。


「ベッドに潜りこむ……!? な、なんて破廉恥な!!」


 初美の話を聞いた優香は顔をまっかにしてそう言った。


 ちょっと誤解がありそうだから、あとで弁解しておかないと――キリヤは優香を見てそう思ったのだった。


「そういえば、初美。任務はいいのかい? 所長が初美たちに頼みたいことがあるとかないとかって」

「なぬ!? ……本当じゃ! 『コール』がきておる! 早く行かんと、またまさきにどやされるのう……。じゃあ新人諸君、またいつかな!!」


 そう言って、初美は急ぎ足でキリヤの部屋を出て行った。


「あの『コール』って……?」


 キリヤは初美が言っていた気になるワードについてゆめかに問いかけた。


「ああ。出動命令ってところかな。君たちも任務に行くように成ればわかるさ。所長や隊長の神無月君から来ることが多いかな?」

「そうなんですね」


 その話から『グリム』は本当に何かしらの部隊なんだってことを実感するキリヤ。


「さて、じゃあ君たちは早速、訓練室に行ってもらうよ。早く一人前になって、任務に出てもらわないといけないからね」


 そう言って、微笑むゆめか。


 そしてキリヤたちは訓練室に向かった。




 訓練内容は、職場体験の時とほとんど同じだった。


 まずは資料を読み漁り、その中の事件をホログラムとして構築。そしてその事件を体験しつつ、対処法を学んでいく。


「じゃあ次は、こっちの事件を解決してごらん」


 そう言いながら、ゆめかは間髪入れずに次の訓練を始める。


 普段はニコニコしているゆめかだったが、本当は鬼なんだということを身をもって知ったキリヤだった。


 天使のようなシロの面影が全くなくなっているような――?


 そしてそんなことを思いながら、それから数か月間、模擬訓練が続いたのだった。




 訓練を終えたある日のこと。キリヤたちはゆめかに連れられて、『グリム』のミーティングルームに来ていた。


 どうやら所長から何か話があるらしい。いったい何の話なんだろうか――。


 そんなことを思いながら、所長の到着を待つキリヤたち。


「やあ、ごめんな。お待たせ! キリヤ君、優香君。調子はどうかな?」


 ミーティングルームに着いた所長は、開口一番キリヤたちにそう尋ねる。


「はい。問題なく訓練に参加しております」

「私も日々の訓練を楽しんでおります」

「そうか。それは良かった。ゆめか君の訓練は厳しいから、もう嫌だなんて思っているんじゃないかと心配していたが、私の取り越し苦労だったようだな。ははは!」


 所長のいう事もあながち間違いではないんだよね。確かにゆめかさんの訓練はスパルタで、僕は何度も心が折れそうに――キリヤは訓練でのことを思い出し、思わずため息をつきそうになった。


「2人とも、とてもよくやってくれています。だからつい厳しくしたくなってしまいますね」


 笑顔で答えるゆめか。


 この人、やっぱり鬼だな――キリヤは心の中でそう思った。


「あまり厳しくしすぎないでくれよ。彼らは貴重な能力持ちの隊員なんだからね。……さて、本題に移ろう。早い話が、君たちの初任務が決まった」

「初任務ですか!?」


 所長にその言葉に目を輝かせる優香。


「ああ。簡単な任務だ。とある墓地の調査依頼だよ」


 そしてキリヤたちは所長から任務の概要を聞いた。


 どうやら都内某所の墓地で、能力者の仕業と思われる怪奇事件が起こっているということらしい。


 その墓地では夕方から夜にかけて、亡霊のようなものが歩き回り、墓参りや近所に住む人を驚かしているという報告があるという内容だった。


「行ってくれるかい?」

「「はい!」」


 キリヤたちは3日後、初任務に向かうことになったのだった。

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