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第2話ー① 眠り姫との再会

 剛が目覚めて数週間、順調に剛は回復していった。


 そしてキリヤはこの日も剛の部屋に顔を出していた。


「それで、その時の真一がさ――」


 ピリリ……


 そう音を立てて、キリヤのスマホが振動した。


「時間か?」

「そうみたいだ」

「そっか……」


 剛はそう言って少し残念そうな顔をする。


「ちょっと、ちょっと! そんな顔しないでよ! また話にくるからさ」


 そう言ってキリヤが微笑むと、剛は「おう」と嬉しそうに笑った。


「じゃあ、またね」


 キリヤはそう言いながら、剛の部屋を出た。そしてスマホに目を落とすと、優香からのメッセージが入っているのを確認する。


『所長からの呼び出し。次の任務だって』


「次の任務……」


 キリヤはスマホをポケットにしまうと、所長の待つ『グリム』のミーティングルームへと急いだ。




 ミーティングルームに着くと、優香の姿があった。


「早いね。もう来ていたんだ」


 キリヤが優香にそう言うと、


「すぐ近くにいましたからね。そういうキリヤ君は遅かったようですが……火山君のお見舞いですか?」

「正解」


 そしてキリヤは優香の隣に並び、所長の机の前に立つ。


「揃ったね、2人とも。じゃあ、次の任務なんだが……」


 それからキリヤたちは次の任務の詳細を所長から聞かされた。そしてその任務内容に少々驚きつつ、同時に楽しみに思ったのだった。


「じゃあ今から車を回すから、すぐに準備をしてくれ」

「「はい!」」


 そしてキリヤたちはミーティングルームを後にした。


 数分後。キリヤたちは研究所に外につけられた車に乗り込み、目的地へと向かった。


「なんだかキリヤ君、楽しそうだね」


 優香はキリヤの顔を見ながら、そう告げた。


「そう? でも。確かに楽しみかもしれない。優香は違うの?」


 キリヤがそう言うと、優香はそうでもないといった顔をして窓の枠に肘をつけながら、


「キリヤ君ほどではないかな」


 と答えた。


「そう……」


 キリヤはそんな優香を見ながら、やれやれと思ったのだった。


 それから数時間、キリヤたちは休憩をはさみつつ、都会からかなり離れた山奥の村へとやってきた。


「じゃあ、頑張ってね」


 八雲はキリヤたちにそう告げると、また研究所に向かって車を走らせたのだった。


 八雲さんも少しくらい、休んでもいいのでは――? とキリヤは思ったが、帰ったらきっと他に仕事があるのだろうと察し、そのまま八雲を見送った。


 たぶん帰ったらまた、拓真さんにこき使われるんだろうな――


 キリヤが走り去る車を見てそんなことを考えているうちに、優香は村の周辺を見ているようだった。


「何か見つけた?」

「ううん。でも本当に何もない村なんだね……まあ身を隠すにはもってこいか」

「そうだね。確かにここなら安心だ」


 そしてキリヤたちがそんな会話をしていると、少し先のところで2人の男児が言い争っている姿が見えた。


「喧嘩……かな? 行ってみよう」


 そう言ってキリヤたちはその2人の男児のところへ向かった。


「何、しているの?」

「兄ちゃん、誰だよ!」


 身体の大きい気の強そうな男児が喧嘩腰でキリヤにそう告げた。


 まあ、そうなるよね。いきなり声を掛けられて、不審に思わないほうがおかしいか――。


「えっと、僕らはただの通りすがりというか……」

「怪しいですね。明らかに部外者というか。この村の人ではありませんよね」


 もう一人の小柄で分厚い眼鏡をかけた小生意気そうな男児が、キリヤに疑いの目を向けてくる。


「ええ、っと……」


 キリヤが少々困惑していると、すかさず優香が2人の男児に、


「ちょっとお仕事でこの村にきたんです。お子様のお遊びに付き合ってあげるほど暇ではないんですがね」


 と笑顔で挑発していた。


「はあ? そっちから声を掛けといて、うぜえな!」

「なぜ僕たちに声を掛けたのか、理解に苦しみますねぇ」


 僕は彼らをなだめるために声を掛けたはずなのに、なんで優香はそんな彼らの火に油をさらに追加してしまうのか――


 そんなことを思いながら、キリヤは優香を止めに入る。


「ちょっと、優香! ダメだって!!」

「だって、生意気なんだもん」


 優香はそう言いながら、そっぽを向く。


「なんだよ、やんのかー!」


 強そうな男児が腕まくりをしながらそう告げる。


「えっと……その……」


 キリヤが困っていると、遠くから誰かが走ってくる姿が見えた。


「こおらああああ! 喧嘩はダメっていってんでしょおおお!!」

「うわ! いろはの姉ちゃんだ!! 逃げるぞ!!」

「その方が賢そうですね」


 そう言って2人の男児は逃げていった。


「もう! あの2人はすぐに喧嘩して!!」


 そう言いながら、走り去る2人の姿を見つめるブロンド色のツインテールヘアの少女。


 キリヤは久々に見たその姿に懐かしさを覚える。


「……久しぶり、いろは」

「うん! 二人とも久しぶり!! 元気にしてた?」


 そう言って、速水はやみいろははキリヤたちに微笑んだのだった。

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