表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/126

第1話ー③ 途絶えない未来

 剛はゆっくりと目を開き、


 ここは――?


 と見たことのない天井にそんな疑問を抱いていた。


 まずここがどこか、確認しないと――


「お……う……」


 そして剛は自分の声をうまく出せないことに驚く。


 なんで……? さっきまで普通に出ていたはずなのに――!


 剛がそんな不安を抱いていると、バタンッという音が鳴り響いた。


 それは何かを思いっきり開いたような音だった。


 そして自分の視界に誰の影が映る。


 誰だ――? そう言いたいのに、うまく声が出せない剛。そして――


「……おはよう、剛」


 その声の方に顔を向ける剛。そしてその声の主が、目に涙を浮かべたキリヤだという事を知ったのだった。


 キリヤってそんなに泣き虫だったか――?


 そんなことを思いながら、声が出ない剛は精一杯の笑顔をキリヤに向けたのだった。



 ***



 モニターに目を向けたキリヤが見たのは、大きく動く波状のグラフ。


「これって、どういうことですか?」


 キリヤは不安な顔で所長に問う。


「わからない……でも、剛君の身体に何らかの事態が起こっていることは確かだな」

「え……」


 もしかして、このまま剛は死んでしまうのではないか――キリヤはそんな考えが頭をよぎる。


「僕、剛の部屋に行ってきます!!」


 その場にいてもたってもいられなくなったキリヤはそう言いながら、観測ルームを飛び出して、剛の個室へと急いだ。


 きっと大丈夫だよね、剛――そう思いながら、キリヤは剛の元へ向かった。




 剛の部屋の前に着いたキリヤはその扉を思いっきり開けた。そしてベッドに横たわる剛の傍に駆け寄り、その顔を覗くと……剛がしっかりと目を覚ましていることを知った。


 キリヤはその事実に驚き、そして嬉しさのあまり目が潤んでいた。


「……おはよう、剛」


 キリヤはそれだけを告げると、それを聞いた剛はキリヤに微笑んだのだった。


「まったく、やっと起きたの? 本当に剛は寝坊助なんだから」


 そしてキリヤはそんな嫌味を剛に向けて言い放つ。


「あ……あぁ……」

「剛……?」


 剛からの返答がないことをおかしく思うキリヤ。


 いつもなら、僕の嫌味に言い返すはずの剛が……。いや、返答はある。でも、声になっていないだけだ――。


「もしかして、喋れないの?」


 キリヤがそう剛に問うと、剛は小さく頷いた。


「暴走した後遺症……とかかもしれない。とりあえず所長を呼んでくるよ! だから、少しだけ待ってて!」


 そしてキリヤは所長に会うため、再び観測ルームへと戻ったのだった。




 観測ルームについたキリヤは、剛が目覚めたことを所長に報告した。


「そうか……剛君が!」

「でも、喋れないみたいなんです。もしかしたら、後遺症かもしれなくて……」


 キリヤが不安そうに俯くと所長はキリヤの肩に手を置いて、優しく告げた。


「大丈夫さ。じゃあ剛君のところへ行こう」

「はい……」


 そしてキリヤは所長を連れて、剛の元へと戻った。


 その後、剛の部屋に着いた所長は剛の顔を見て、本当に覚醒したことを確認していた。


「本当に目を覚ましたんだな……よかったよ!!」


 そう言いながら、所長は微笑んでいた。


「そうだ! 早く暁君にも知らせてあげないとな。今回の件で一番気落ちしたのは暁君だったからね。目を覚ましたって知ったら、きっと喜んで飛んでくるだろうな」

「そうですね」


 キリヤはそんな暁の姿を想像して、くすっと笑った。


 それから剛は検査をし、声が出なかったのは2年間眠り続けたことによる声帯の衰えだったことが判明した。そして検査結果では特に後遺症もないという事がわかった。


 その検査の結果を聞いたキリヤはほっと胸を撫でおろし、いつもの日常に戻っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ