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プロローグ

 それはとても退屈な毎日だった。


 力を使えば、どんな未来も見えた。家の財力もあって、ほしいものは全て手にすることができた。私は何不自由なく、淡々とつまらない人生を送っていた。


 でもそんな私にも唯一、手に入らなかったものがあった――




『待ちなさい。ダメよ、あなたも行ったらダメ。きっと助からない。みんなもあなたも……だからここにいなさい!!』


 少女は目の前にいる青年をまっすぐに見てそう言った。


 しかし青年は少女の手を振りほどき、少女の前から姿を消したのだった。


『なんでよ……私が見た未来は変わりっこないのに』


 少女はその場で佇み、そう呟いたのだった――




『つまらない。すべてが予定調和で、何の面白みもない世界……こんな人生になんの意味があるの』


 少女は部屋の窓から外を見ながら、退屈そうな表情でそう呟いた。


『何か面白いことはないのかしら……』


 そんなことを呟いていると、外から声がした。


『ねえ、そんなところで何をしているんだい?』


 少年は少女の顔をまっすぐに見てそう言った。


『あの子は、確か――!』


 それから少女はひらめき、少年の元へと向かう。


 ――そう。私は、素敵なおもちゃ箱を見つけたのだった。


 少女はその少年の手を借りて、幼馴染の少年と3人で過去へ向かった。


 それから数年。過去に飛んだ少女はいつしか大人の女性となり、新しいおもちゃを使って新たな世界を楽しんでいた。



 ***



 とある議員の個室にて――。


「やあ、今日の調子はどうだい?」


 男は笑顔で女に問いかける。


 しかし女はその問いに少々不機嫌になりながら、


「私に気安く話しかけないでくれる? はあ。私は今日もいつも通りよ。それで? あなたは言われたことをちゃんとやったのかしら?」


 嫌味っぽく男にそう問うと、男は自信満々に答える。


「ああ、もちろんさ! 君の指示通りにやっていれば、完璧だよ! ……おっと、もうこんな時間か。そろそろ行かなくては」


 そして男は右手を顔にかざすと、先ほどまでの若さはなくなり、老いた男の姿に変わる。


「頼んだわよ」

「ええ。仰せのままに……」


 男はそう言って、部屋を出て行った。


「さて……。今回はどの子供おもちゃで遊ぼうかしら」


 一人になった女はソファに寝転び、タブレットを開いた。そして画面をタップしながら、子供たち(おもちゃ)のリストを確認していった。


 そして、ふいにかつて遊んでいた子供おもちゃのことを思い出す。


「そういえば……あの子、どこへ行ったのかしら」


 画面をタップして、そのおもちゃのプロフィールを開くと、


『速水いろは 行方不明』と表示されていた。


「せっかくお気に入りだったんだけどな。でもいいわ。あの施設もあの教師も興味はないんだもの。だって私は――」


 タブレットを置き、女は立ち上がった。


 それから窓の方までゆっくりと歩みを進める。そして右手で窓に触れて、女は外を眺めた。


「うふふ。またあなたに会える日が楽しみね」


 そう言いながら、女は不敵に微笑んだ。

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