表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/126

第4話ー① もう一人の自分

 キリヤと優香は1年半ぶりに学生時代を過ごしていた保護施設にやってきていた。


「先生には連絡入れたんだっけ?」

「うん。すぐに行くって」


 キリヤと優香はエントランスゲートの前で、暁が来るのを待っていた。


 キリヤたちは研究所から施設の入場を許可されているものの、施設の教師である暁の許可がなければ、このゲートは潜れないようになっていた。


 そして建物の中から黒いジャージを着て、黒髪をなびかせながら大きく手を振っている男性が出てくる。


「おーい! 待たせたな!!」

「先生!!」


 キリヤはその声に応えるように大きな声で手を振り返した。


 そう、彼が僕たちの恩師、三谷暁先生だ――。


 暁はゲート前に着き、ゲストパスをキリヤに手渡した。


 そしてキリヤたちはそのパスを使い、施設の敷地内へと入った。


「ありがとう、先生!」

「おう!! それにしても久しぶりだな、キリヤ! 優香も!!」


 暁は笑いながらそう言った。


「そうですね、お久しぶりです、先生」


 優香は微笑みながら、暁にそう告げる。


「確かにここへ来るのは1年半ぶりくらいか。先生は相変わらずみたいで安心したよ!」


 キリヤが笑顔でそう言うと、


「そうか? でもそういう2人は雰囲気が変わったな! 大人っぽくなったていうか……」


 暁はそう言いながら、2人をまじまじと見つめた。


「僕はそんなに変わったつもりはないんだけどな、あはは」


 そんなに見つめられると恥ずかしいな――そんなことを思って、頬を掻くキリヤ。


「そっか! それで、仕事は順調か?」

「ま、まあ。そこそこに」

「そうか。それならよかったよ! じゃあ、立ち話もなんだから、食堂に行こうか! まゆおたちが待ってるからさ!」


 暁は笑顔でそう告げた。


「そうなんだ!」

「みんな、2人に会えるって楽しみにしているんだぞ?」

「それは嬉しいね、優香!」

「ええ、そうですね」


 そしてキリヤたちは食堂へ向かって歩き出す。


「ねえキリヤ君。ここに来た目的、忘れていないよね?」


 優香はキリヤにこっそりと問う。


「先生にもう一人の自分と会話したかどうかの確認、でしょ? もちろんわかっているよ」

「うんうん」


 優香は納得したようで、満足そうに頷いていた。


「そういえば、2人が卒業した後にまた新しい生徒が増えてな。少し癖は強いけど、なかなか面白い3人だから、仲良くしてやってくれ」


 暁は歩きながら楽しそうにそう言っていた。


「うん。きっと先生の生徒だもん。良い子たちに決まっているよ」


 キリヤはそう言いながら、暁に微笑む。




 キリヤたちが食堂に着くと、そこには顔をよく知るまゆおと結衣、そして真一がいた。


「キリヤ君! 久しぶり!」


 まゆおはそう言いながら、キリヤたちに微笑みかける。


「まゆお! 元気そうだね!! みんなも久しぶり!」

「本当にお久しぶりですな。お二人とも元気にしておられましたか!!」

「ええ。私達は元気にやっていましたよ。流山さんはどうでした?」


 優香は笑顔で結衣に尋ねていた。


 元気にやっていたと優香は言っていたけれど、本当は少し前まで危ない状態だったんだよね――キリヤは優香を見ながらそんなことを考えていた。


「そういえば、前に電話でさ……ってキリヤ? どうしたんだ? なんだか不安な顔をしているみたいだけど?」


 キリヤの表情を心配した暁が顔を覗き込みながら、キリヤにそう尋ねる。


 そう言われたキリヤははっとして、


「え……うーん。大丈夫! やっぱり、今じゃないよね。うん。またあとで詳しく話すよ」


 そう言って笑った。


「ん? あ、ああ。わかった」


 暁は少し疑問を抱きつつも、納得したようだった。


 あまり先生に心配かけちゃダメだよね――そう思ったキリヤは、結衣たちの元へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ