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第3話ー⑥ 異変

 一方、その頃のキリヤ――。


 キリヤは襲い掛かってくる女性を躱しながら、この状況の打開策を必死に考えていた。


(下手に能力を使えば、この人を傷つけることになる。でもこのまま避け続けても、僕の体力が持たない――)


 キリヤがそんなことを考えているうちに女性の動きが止まり、女性はその場に倒れた。


「え……?」


 キリヤは唐突のことで驚いたが、きっと別行動をしている優香のおかげだという事に気が付く。


「優香、あの子を捕まえてくれたのかな」


 そう呟きながら、キリヤは星が瞬き始める空を見上げた。


「一息ついてる場合じゃないや!」


 それからキリヤは警察と救急隊に連絡を入れ、それぞれの対応に当たったのだった。


 その後、能力者の少年を背負いながら、優香は廃材工場に戻って来た。そして優香は来ていた警察官に背負った少年を預け、キリヤの元へ。


「優香!! 大丈夫だった?」


 キリヤがそう言って優香に笑いかけると、


「え……。う、うん。大丈夫。大丈夫、だから……」


 優香はそう言ってキリヤから顔を背けた。


 その様子を見たキリヤは優香の異変に気が付く。


(元気がない……というか、なんとなく怯えているような――)


「ねえ、あの子と何かあったの……?」


 キリヤはそう言って優香の顔を覗き込んだ。


「……別に、何にもない。何にもないから……! だから、私のことは放って置いてよ!」


 急に口調が強くなる優香。


 キリヤはそんな優香に驚き、「ごめん」と小さな声で謝った。


 それからキリヤたちは一言も会話をせずに、黙々とそれぞれの対応にあたったのだった。


 優香に身にいったい何があったのだろう。それにあんな頑なに返答を拒む理由はなんなんだろう――?


 キリヤは結局その理由がわからないまま、優香と共に研究所に戻ったのだった。




 研究所に到着して、『グリム』のミーティングルームへまっすぐに向かうキリヤたち。


 部屋に入ると、所長と神無月、そしてゆめかの姿があった。


「おかえり」


 そう言って、キリヤたちを迎えるゆめか。


「ただいま帰りました!」


 キリヤはゆめかに笑顔で返した。


「今回の事件はもう解決したんだってな! すごいじゃないか! キリヤも優香もお疲れさん!」


 神無月はどこから聞いたのか、キリヤたちが今回の任務を解決したことを知っていた。


(たぶん所長が八雲さんから聞いて、それを話したんだろうな。でも神無月さんからのお褒めの言葉は嬉しいな)


「ありがとうございます!!」


 キリヤは嬉しさのあまり、大声でお礼を告げていた。


「今日のキリヤは一段と元気みたいだな。でも――」


 神無月はそう言って優香の方を向く。


「優香は何かあったのか?」

「いえ、何も」


 優香は暗い表情のまま、淡々とそう答えた。


「そ、そうか?」

「じゃあ報告はこれで完了ですよね。私は部屋に戻ります。お疲れ様でした」


 そう言ってミーティングルームから出て行く優香。そんな優香の背中を見て、その場にいた一同は顔を見合わせる。


「本当に何もなかったのか、キリヤ」


 神無月は心配そうな表情をしてキリヤにそう言った。


「僕の知る限りでは何もなかったですよ。傷を負っていた感じもないですし。でも犯人の少年を連れてきてから様子が……。その少年と何かあったのかもしれません。僕には教えてくれなかったですけど」


 そう言って俯くキリヤ。


「そうか……」


 本当にどうしたんだよ。優香――。


 キリヤはそんなことを思いながら、俯いたままだった。

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