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第3話ー④ 異変

 3日後、任務の日を迎えた。いつものようにキリヤと優香は車に乗り込み、目的地へと向かう。


 今回キリヤたちを任務先に送っているのは、同じ特別機動隊『グリム』のメンバー、笹垣ささがき八雲やくも。八雲は交通手段のないキリヤたちを任務地へと送り届ける運転手をしている。そして送迎の仕事がないときは情報担当の拓真の補佐をしている。


「2人とも、そろそろ着くよ」

「わかりました」


 キリヤはそう返事をしてから、窓の外を見つめる。


「この街では、どんな出会いが待っているんだろう」


 キリヤはその窓からの景色を見ているうちに先日までの不安は消えて、初めて出会う街にワクワクしていた。


 この仕事を始めてから、本当にいろんな場所に行くことが増えたと思う。施設にいたら、きっといけなかった街。会えなかった人。任務の前には不安があるけど、一度来てしまえば、その不安はワクワクに変わる――。


 キリヤはそんなことを思いつつ、移り行く景色を見て微笑んだ。


「キリヤ君、もうワクワクしてるの?」


 優香は窓の外を見て動かないキリヤに、笑いながらそう告げた。


「うん。だってどんな出会いがあるのかなって、本当に楽しみだからさ!」

「そうなんだね」


 それからキリヤたちは目的地の街に到着した。そして車を降りて、到着した街を見渡すキリヤ。


 閑静な住宅街が続いていて、ところどころで子供たちの笑い声が聞こえるとても素敵な街だな――とキリヤは思ったのだった。


「じゃあいってらっしゃい。迎えは20時くらいで、このあたりで待っているから。くれぐれも無理だけはしないようにね?」

「わかりました! ありがとうございます。いってきます!」


 そして八雲は研究所へと戻っていった。


「じゃあ行こうか、キリヤ君」

「うん!」


 そしてキリヤたちは調査に向かった。




「この辺で最近怪奇事件みたいなことが起きているって噂を聞きつけたんですけど、何かご存じですか? 僕たちその調査に来ていて――」


 初めての任務から約1年が経ち、キリヤはやっとまともな聞き込みができるようになっていた。


(初めての時は不審な目で見られていた過去が懐かしいよ――)


 聞き込みをしながら、そんなことをふと思い出すキリヤだった。


「――そういえば! あの廃材工場で毎晩悲鳴が聞こえるのよ。怖いわよねえ」

「そうなんですね。……ありがとうございます! 助かりました」


 キリヤはそう言って頭を下げてから微笑んだ。


「いいのよ~。頑張ってね!」


 そう言ってその場を去る女性。


「ありがとうございます!」


 キリヤはそう言って女性を見送ってから、女性から聞いた話を頭の中で整理する。


「どうやら廃材工場が肝みたいだね……」


 キリヤが腕を組んでその場で考えていると、そこへ優香がやってくる。


「どう?」

「うん。大体わかったかな。あの廃材工場で待っていれば――」

「ええ。きっと犯人に遭遇する!」


 キリヤたちは顔を見合わせてから頷き合うと、そのまま廃材工場へと向かった。




 陽は沈み始め、空は紺色に染まり始めていた。


 キリヤたちは廃材工場に向かう途中で、どこからか女性の叫び声が聞いた。


「優香、今のって……」

「ええ。もう犯人が現れたみたいね……。急ごう、キリヤ君!!」


 そう言って走り出す優香。


「ちょ、待ってよ!」


 優香が本気で走ったら、100M走とか何秒で走り切るのだろうか――キリヤはそんな疑問が一瞬だけ頭をよぎり、ただ懸命に優香の後ろを追って走った。


 そしてキリヤたちは廃材工場にたどり着いた。


「何、あれ……」


 優香は何かを見たのか、驚愕の声を上げる。


「え、ど、どうしたの……」


 息を切らし膝に手を当てていたキリヤは、優香のその言葉で顔を上げた。そしてようやく優香のその言葉の意味を理解する。


「あれって何、してるの……?」


 廃材の置いてある広い空間で1人の少年が女性の前に立っていた。


 そしてその女性の身体には、粘着質な素材が纏わりついていた。


「……君たち、誰?」


 キリヤたちの存在に気が付いた少年はその方を向くと、怪し気にそう告げた。


(この子が騒動の犯人……)


「僕たちは……君を助けるために来た」


 キリヤは少年の目をしっかりと見て、そう告げた。


「助ける……? はあ。何を言っているのか、意味が分からないね。あ、終わったかな」


 少年の前に立っていた女性が、地面に倒れこんだ。


「その人に何をしたの……」


 優香が息を飲みながらそう言うと、


「さあ。何だと思う?」


 少年はそう言って左手をキリヤたちの方に向けると、さっきまで地面に倒れていた女性がフラフラと立ち上がった。


「遊んであげて」


 少年がそう言うと、女性はキリヤたちに向かっていく。


「何あれ!?」

「驚いている場合じゃないよ。何とかしないと! ……キリヤ君は、この人をお願い! 私はあの少年を……!」


 そう言って、少年の方に向かって走り出す優香。


「わ、わかった!」


 あの少年は、優香に任せよう。僕はこの女の人を何とかしなくちゃ――!


 そしてキリヤは少年のことは優香に託し、襲ってくる女性と対峙するのだった。

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