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第2話ー⑨ 風船少年

 翌朝。任務を終えたキリヤたちは研究所に帰ることになった。


 朝食を終えたキリヤたちは、紗季と共に屋敷の玄関へ向かっていた。


「今朝のご飯もおいしかったね、優香」


 キリヤは先ほど食事を思い出しながら、優香にそう告げた。


「ちゃんと味わった? もうあんなごちそう食べられないんだからね?」

「うん。忘れないよ、あの味を……」


 そしてキリヤたちは屋敷の玄関に到着した。


「桑島様、糸原様。今回は本当にありがとうございました。御茂山おもやま家使用人を代表いたしまして、お礼を申し上げます」


 そう言いながら、紗季は深々と頭を下げる。


「こちらこそいろいろと良くしていただいて、ありがとうございます。とても快適に過ごすことができました。皆さんにもよろしくお伝えください」


 キリヤもそう言って、頭を下げた。


「ええ。もちろんです。それでは、お気をつけて」


 そしてキリヤたちが扉を出ようとした時、太陽が急いでキリヤたちの元へとやってきた。


「どうしたの、太陽? そんなに慌てて……」

「い、いや……その……。2人のおかげで2日間すごく楽しかった。それで……あの……ありがとう」


 太陽は顔を真っ赤にしながら、キリヤたちにお礼の言葉を述べていた。


「僕の方こそありがとう。次会った時は、カッコよく助けられるような男になれるよう頑張るから」

「そうなると、来世まで見られないかもしれないな……。まあせいぜい頑張ってよ!!」


 そう言って、太陽は意地悪な笑顔をキリヤに向ける。


「そうならないよう、頑張るね……」


 キリヤは落ち込みながら、太陽にそう答えた。


「そういえば、昨日の子だけど。家でしばらく預かることにしたんだ! 親がいないみたいで、他に預かり手もないんだって」

「じゃあ太陽坊ちゃまはもうさみしくないですね! 新しいお友達ができたわけだ」


 優香はそう言って太陽に微笑む。


「と、友達なんかじゃないよ! 僕の専属メイドになってもらうんだからね!」


 照れながら顔を背ける太陽。そう言いつつも、その横顔から見える口元は笑っており、嬉しそうだった。


「じゃあ仲良くね。僕たちはこれで」


 そしてキリヤたちは紗季と太陽に見送られながら、御茂山邸を後にしたのだった――。



 ***



 研究所の廊下にて――。


「あの時は本当にいろんな経験ができたよね。あんなに豪華な部屋なんてもう一生泊まる機会なんてないんだろうね……」


 キリヤはその時の部屋の情景を思い出しながら、優香に告げた。


「キリヤ君は、そればっかりなんだから!」

「あははは」

「太陽坊ちゃまは、あの子と楽しく過ごせているかな」


 優香はその時の少女を思い出しながら、少々不安な表情を浮かべていた。



「たぶん大丈夫だと思う。きっとあの2人は素敵な関係を築けているって僕は信じてる」


「その根拠は?」


「うーん。勘、かな?」


「適当だなあ」


「ははは」


「次の任務は、どんな出会いがあるんだろうね」



 優香は笑顔でキリヤに問う。


「きっとまた素敵な出会いになるよ。そう思うと、今から楽しみだね!」


 それからキリヤたちは所長室へと向かうのだった。




 この後に待ち受ける、過酷な試練の存在を知らずに――。

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