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第2話ー⑥ 風船少年

 キリヤはパーティ会場を出ると、会場の中だけではなく屋敷全体が停電をしていることを知った。


「こんな大規模ないたずらを太陽くんが……?」


 さすがにやりすぎではと思いつつ、キリヤは太陽を探した。


「いったい、どこに行ったんだろう。もしかしてまだ会場の中なのか……? でも見た感じ、どこにも――」


 そう思った時、右手にある部屋から物音がするのを聞いた。


「誰かいるの?」


 そしてキリヤは恐る恐るその扉を開ける。


「助けて! お兄さん!!」


 するとそこには見知らぬ男性と縄で拘束されている太陽の姿があり、太陽は恐怖におびえていた。


「太陽!? ……お前は、何者だ!」


 キリヤは太陽を拘束している男にそう尋ねた。


「ああ。見つかっちまったか。じゃあ仕方ねえな」


 そう言って、男はゆっくりとキリヤの方を向く。


「俺はこの界隈に潜伏するマフィアさ。こいつを使って、この家の有り金をふんだくってやろうと思ってな……。お前に罪はないが、ここで死んでもらうよ」


 そう言って、胸に隠してあった拳銃を取り出す男。


 キリヤは初めて見る本物の拳銃に、恐怖で身体が硬直していた。


「なんだあ? 意気揚々と乗り込んできた割に、これを見ただけでビビっちまったのか? ははは! やっぱガキはガキだな。……じゃあな。あばよ」


 そして拳銃の引き金に手を掛ける男。


 ああ、ダメだ。僕はここで死ぬのか――。


 キリヤがそう思った瞬間、「諦めるな!!」と背後から声が聞こえた。


 そしてその声と共に、目の前にいた男が何かにぶつかったのか部屋の奥にある壁の方まで吹き飛んだ。


「え……」


 一瞬の出来事で、キリヤは状況の把握ができなかった。


 急に声が聞こえたと思ったら、銃を持っていた男は頬に殴られた跡を作り、倒れている――?


 そして目を丸くしていると、


「大丈夫か、キリヤ」


 再び声が聞こえた。


 キリヤは自分の名を呼ぶその声の主を探すため、周りを見渡した。そしてキリヤはその声の主が自分の隣に立っていることに気が付く。


神無月かんなづきさん……!」


 特殊機動隊『グリム』の隊長、神無月まさきが突然キリヤの前に現れたのだった――。



 ***

 


 キリヤと二手に分かれた優香は、闇に包まれているパーティ会場内で太陽を探していた。


「太陽坊ちゃま? どこですか?」


 混乱の中にあるパーティ会場で、優香の声は届くはずもなく――。


「とにかくこの停電を何とかしないことには、ゆっくり探すこともできなさそうね」


 足を止めて、策を練ることにした。


「どうしようかな……こういう時はブレーカー室に行くのがセオリーだけど。でもそんなことを私が考えなくても、きっとお屋敷の使用人さんたちが対応に当たっていそうなものだよね」


 それでもこの状況が変わらないってことは、ブレーカーが原因じゃないってことかも――。


 そしてはっとする優香。


「もしかして、あの時の電気を操る能力者……?」


 優香は以前施設で遭遇した電気使いの少年のことを思い出した。


 あの時の連中がここにきているの? でも何のために――?


 優香はその理由を考えたが、全く見当がつかなかった。


 あの時はシロを狙ってきていた襲撃者。しかし今ここにはシロの姿はない。だから目的は別にあるはずだと仮定する優香。


「でもその別の目的って何……?」


 優香はそんなことを考えていると、ふいにパーティ会場で不審な動きをする影が目に入る。


「……今のは?」


 不審に思った優香は、その影を追った。




 不審な影を追った優香はパーティ会場を抜け出し、廊下に出た。そして月明かりに照らされて、先ほどまでわからなかったその影の正体が目視で確認できるようになった。


 人間……? それに子供――?


 身長は140センチほどのやせ細った少女が、焦りながら廊下を走っていた。


「待ちなさい!」


 優香は廊下から走り去ろうとするその少女に後ろから声を掛けた。


「!!?」


 優香の声に驚いたのか、その少女は身体をびくっと振るわせると、足を止めて振り返った。


「ねえ、あなたは誰なの?」


 優香は振り返った少女に問う。


「わ、私は……その……」


 その少女はとても怯えていた。目を潤ませて、助けてと懇願する瞳を優香に向けている。


「何があったの? 私に話してくれない?」


 優香はその少女が怖がらないように、優しく丁寧に尋ねた。


「……お父さんに言われたの。私の力で電気を止めなさいって。そうしたら、もうたないからって……」

つ……?」


 そして優香はその少女の身体に目を向けると、月明かりしかない状況で確信はないが、ところどころあざのようなものを見つけた。


「もう嫌なの。お父さんにたれたくないの。だから……悪いことをしていることはわかってる。でも、私はこうするしかなかったの!」


 そして少女は走り去った。


「あ、待って!」


 しかし優香はその子を追いかけることができず、その場で佇んだのだった。

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