第1話ー⑩ 初任務
研究所。『グリム』ルーム内。
任務を終えたキリヤたちは報告書の作成の為、『グリム』の本拠地である研究所の隠し部屋にいた。
「報告書って言っても、何から書けばいいんだろう……」
キリヤはそう言ってPCを前に頭を悩ませる。
そんなキリヤの隣で、軽快にPCのキーボードを打つ優香。その入力の速さに、キリヤは少し焦りを感じ始めた。
「……よし、できた」
「え!? もうできたの?? ……どれどれ」
キリヤは優香のPCを覗くと、その報告書はとても分かりやすくまとめられた文章になっていた。
「その速さでこのクオリティって……。さすがだね」
「それほどでも……あるよ! それで? キリヤ君は、どんな感じ?」
そう言って優香はキリヤのPCを覗き込む。
そして1行も完成していないキリヤの報告書を見て、優香は驚愕していた。
「ははは」
キリヤはそんな優香に苦笑いをする。そして優香は呆れながら、
「はあ。もうしょうがないな……。今回はキリヤ君が頑張ってくれたおかげだしね。じゃあ私も手伝うから、がんばろう」
キリヤにそう言った。
「ありがとう!」
キリヤは目を潤ませながら、優香に手を合わせた。
それから1時間ほどかけて、キリヤと優香は報告書を完成させたのだった。
「やっと終わった!!」
キリヤは座っている椅子で背伸びをする。
優香はそんなキリヤの横で机に肘をつきながら、キリヤの様子を見ていた。
「ん? どうしたの?」
「ううん。何でもない」
そう言って、微笑む優香。
「そう? それなら、いいけど」
優香は時々、意味もなく僕を見て楽しそうにしている。世間知らずの僕の成長を微笑ましく思ってくれているのだろうか――。
そんなことを思いながら、また背伸びをした。
「初任務、楽しかったね」
優香は背伸びをするキリヤに笑顔でそう言った。
「……うん。誰かの役に立てるって、それだけでもう幸せだね」
キリヤはそう言って微笑んだ。
「それはとてもキリヤ君らしい感想だね」
「優香は違うの?」
「私はなんて言うか……。自由だなって思った。みんなに好かれようとかいい子でいなくちゃとかそんなことを考えずに、好きなように行動できたなって思って」
優香は天井を見ながら、そう言った。
「そっか」
そしてキリヤも同じ天井を見上げた。
「これからも頑張ろう、キリヤ君」
「うん。自分たちのやりたいことを貫いていこう」
僕たちの初任務は大きな問題もなく終わった。新たな一歩を踏み出した僕たちは、これからたくさんのことを経て、きっとこれから大人になっていくのだろう。そしてこれはほんの始まりに過ぎない出来事だ――。
それから数か月後。キリヤたちが研究所に来て1年が経った。
「次の任務だけれど――」
キリヤたちはいつものように所長から、任務を言い渡されていた。
「行ってくれるかい??」
「「はい!!」」
そしてキリヤたちは、次なる任務へと向かったのだった――。




