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第6話ー③ 新世界

 数日後――


「「先生、奏多! 結婚おめでとう!!」」


 クラブの集会所で暁と奏多の結婚祝いパーティを開催していた。


「みんな、ありがとう……俺たち、幸せになるからなあ!!」


 そう言って涙を拭う暁。


「みんな、ありがとうございます。まさかこんなサプライズがあるなんて、驚きました」


 奏多はそう言って微笑んだ。


「あ、もうセンセーそんな泣かないの! こういう時って、普通奏多が泣くんじゃん?」

「でも、だな!!」

「あははは」


 キリヤはそんな暁と生徒たちの姿を遠くから見ていた。


「混ざらなくていいの?」


 そう言って優香はキリヤの隣に立つ。


「優香……」

「もしかして寂しいんでしょ! 僕の先生があああ! って?」

「あははは。そんな感じ」

「先生にはたくさんお世話してもらったもんね」

「うん……」


 キリヤは少しずつ以前の記憶を取り戻しており、その記憶の中にある暁との思い出を振り返っていた。



「――先生がいなかったら、僕はずっと父さんのことを好きになれなかったかもしれないからね」


「確か、前のお父さん以外お父さんって認めないぞって部屋に引きこもった事件があったんだっけ」


「あははは……」



 当時まだ6歳だったキリヤは、再婚相手――現在の父――に突然会うことになり、前の父親を忘れることを恐れ部屋に引きこもった。


 そしてキリヤは、再婚をやめるって言うまで僕は一生この部屋から出ないぞ――! と言い張り、何日も部屋から出てこないという事件を起こしていたのだった。


「先生があの時部屋にきてくれて、前のお父さんはもちろんキリヤのお父さんだし、これからのお父さんもキリヤのお父さんで良いんじゃないかって言ってくれて、お父さんはお父さんなんだってその時に思ったんだよね」


 懐かしそうにそう語るキリヤ。


「そうなんだね」

「うん。それに、他にも――あれ?」

「どうしたの?」

「いや、思い出したくても思い出せないことがあって……」

「まあ、いつかまた思い出した時に聞かせてよ」

「う、うん」


 何だったんだろう。どこかグラウンドで向き合って会話しているところまでは思い出せるんだけど……でも、それは知らないどこかで――


「キリヤ君!」

 

 優香からそう呼ばれ、我に返るキリヤ。


「――どうしたの?」

「みんなで写真撮るって! 行こう!!」

「う、うん!」


 きっといつか思い出せる日が来るよね。だから大丈夫――


 そしてパーティを楽しく終えたキリヤたちだった。




「あああ、楽しかったね!」


 優香はそう言って歩きながら背伸びをした。


「うん、そうだね」


 キリヤも笑顔でそう返す。


「そういえば、さっきの思い出した?」

「ああ、ごめん。やっぱり思い出せないみたい。たぶん、そんなに重要な思い出じゃなかったのかも」

「そっか」


 そう。たくさんの思い出の中にある一場面なだけ――そう思いながら、キリヤは歩みを進めた。


 それからキリヤはこれまで暁と過ごしてきた日々を思い返し、ふと悲しい表情をする。


 先生の結婚は少し寂しい。でも、今の僕には優香がいる――


 そう思いながら、キリヤは隣を歩く優香を見つめた。


 するとそれに気が付いた優香は、「ふふっ」と微笑む。


「優香」

「ん?」

「ありがとう」

「どうしたの。急に?」

「ううん。言っておきたかっただけ」


 そう言ってキリヤは微笑んだ。


「変なの!!」


 優香もそう言って笑った。


「そうだ、明日からまた講義が始まるね」

「休みはあっという間だからね。それにもうすぐテストだし」

「あ……そうだった。優香、また勉強おしえて!」


 キリヤはそう言って顔の前で手を合わせる。


「うーん。ご褒美があれば、考えなくもないかな?」

「ご褒美……じゃあテストが終わったら、どこかに遊びに行こう」

「ふふふ。楽しみにしておきます!」


 それからキリヤたちは他愛ない話をしながら、優香の家に向かった。


「じゃあ、また明日!」

「うん! またね!!」


 そして優香と別れたキリヤは1人で自宅を目指して歩く。


「これが僕の当たり前、か……」


 それから前に見ていた夢のことを思い出すキリヤ。


「不思議な世界だったな……あれが本当なら、僕も――」


 それからキリヤは右手を前に突き出し、


「氷~!」


 そう呟いた。しかしそこでは何も起こらず、キリヤはむなしい気持ちになった。


「まあ、そうだよね。夢は夢だもん」


 キリヤはそう言ってため息を吐き、再び歩みを進めた。


「ああ、課題やってないな……帰ったら、さっさと片付けよう」


 そしてキリヤはいつもの日常に戻って行ったのだった。



 ***


 

 当たり前の家族の団欒。そして友人たちと過ごす普通の日常や、恋人との愛おしい時間。


 未だに何が現実で何が夢かなんてわからないけれど、生きている今この場所がきっと僕の真実なんだと思った。


 まだ違和感は残ってる。でも、優香と……みんなと過ごした時はきっと嘘じゃないと思うから。




 ここが僕の生きてきた世界。


 だから――今日も僕は、この世界で生きていく。






(本編、第3部へつづく)

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 外伝のストーリーはこちらで完結となります! がっ!!

 この先のお話を『白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドローム-』第3部にて展開していきますので、宜しくお願い致します(^^)/



 こちらで多くのことを語るのはちょっと野暮かなと思うので、短くなりましたがこの辺で。

 本編はまだまだ続くので、そちらも楽しんでいただけたらと思います( *´艸`)


 それでは! 今まで本当にほんっっとにありがとうございました!!

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