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第5話ー⑧ 未来へ

「わかってる。じゃあ、頑張りなさいよ!」


 恵里菜はそう言って、校舎の外へ向かって走り出したのだった。


「……じゃあようやく2人きりだね」

「そうだね、お兄さん」

「僕はそんなに手加減できないけど、覚悟はできてる?」


 キリヤは冷たい笑顔を隼人に向ける。


「おお、怖い怖い……じゃあ僕も本気を出さないとだね」


 そう言って銃口をキリヤに向ける隼人。


 前にもこんなこと、あったっけ……でも、もう拳銃なんて怖くはないよ――


 そしてキリヤは隼人に向かって走り出す。


 走って来るキリヤに向かって、引き金を引く隼人。飛び出した弾はキリヤに向かってまっすぐ飛んでいった。


 それを見て勝利を確信した隼人は、ニヤリと笑う。


 しかしその弾はキリヤに到達する前に氷結し威力を失い、そして地面に落ちる。


「何……だと!?」


 キリヤは神無月から教わった必勝の拳を自らの能力である氷結と合わせて隼人に振るった。


「くっ……」


 拳を顔面に受けた隼人はそのまま地面に倒れたのだった。


「ふう……初めて近接戦で勝てたような気がする。……神無月さんには感謝しないとだな」


 そう言って、自身の拳を見つめるキリヤ。


「さあ、おとなしく投降してもらおうか」


 キリヤはそう言って少年の隣にしゃがみこむと、


「忘れていないよね……爆弾のこと」


 少年はそう呟き、指を鳴らした。すると、大きな爆発音が響く。


「まさか……」


 校舎の外を見ると、煙が出ているのを見つけるキリヤ。


「君はここで、僕と一緒に心中してもらうよ……」


 隼人はそれだけ言って、意識を失った。


 それから校舎の方では断続的に爆発が起こっていく。


 このままじゃ、ここもすぐに――


 そう思ったキリヤは隼人を背負うすると、そのまま窓枠に両足をかける。


「3階だけど、植物を使えばなんとか――!」


 そしてキリヤは窓から飛び降りた。


 するとそのすぐ後に近くで爆発が起こり、その爆風に飛ばされるキリヤと隼人。


 何があってもこの子は離さない! そして恵里菜のところにちゃんと帰るんだ――!


 キリヤはそう思い、背負う隼人を掴む手にいっそう力を込める。


 そして地面が近づいたキリヤは、目を閉じ、植物たちに呼びかける。


 お願い。僕に力を貸して――!


 それからキリヤの呼びかけに答えるよう、校舎周りにあった植物は巨大化した。


 そしてキリヤと隼人はその巨大化した植物に勢いよく落下する。


「いててて……一応、着地成功ってことかな。でも直接地面にたたきつけられていたら、どうなっていたことか」


 そう思いながら、ほっとするキリヤ。


「はあ。何とか一件落着だね」


 そして隼人の方を見つめるキリヤ。


 この子が恵里菜と過去に飛ぶはずだった少年、か……。ここでこの子の悪事を止めたってことは、きっと――


「キリヤ! キリヤ!!」


 そう言ってキリヤに駆け寄る恵里菜。


「恵里菜、無事だったんだ! よかった!!」


 そして駆け寄った恵里菜はそのままキリヤの胸に飛び込み、キリヤを抱きしめた。


「ちょっと、恵里菜!?」

「馬鹿! この大馬鹿キリヤッ!! 心配したじゃない!! もしかしたら、もう会えないかもって思ったじゃない!!」


 恵里菜はそう言いながら、キリヤを抱きしめる手に力を入れる。


「大丈夫だよ。だって、恵里菜と約束したでしょ?」

「うん……」

「恵里菜。君が見た未来と今、どうだった?」


 キリヤが優しく恵里菜に尋ねると、


「……キリヤの言うとおりだった。私、勝手に諦めて、自分で行動しようとしなかった。キリヤに会えて、キリヤのおかげで私――」


 恵里菜はそう答え、それから声を殺して泣いたのだった。


「よかった。大切なことに気が付いてくれて……」


 恵里菜を見つめながら、キリヤはそう言って微笑んだ。


 その後、警察関係者が駆けつけて、現場の検証と事情聴取をされるキリヤと恵里菜。そして事件の計画者の隼人は連行されたのだった。




 それから警察から解放されたキリヤと恵里菜は、初めて出会った公園に来ていた。


 2人はベンチに腰を掛け、呆然としていた。


「今日はいろいろ大変だったわね」

「そうだね」

「……ねえ、キリヤ。これからもずっとここにいてくれる?」


 恵里菜は正面を向いたまま、キリヤにそう告げる。


 恵里菜のその言葉にキリヤは俯き、


「ごめん……それはできない」


 そう告げた。


「あははは。たぶんそう言うんだろうなって思ってた。キリヤはきっと目的があってここへ来たのよね。そしてその目的が達せられ、ここにいる意味はないってところかしら」


 恵里菜は悲し気な表情でそう言った。


「ごめん……」

「謝らないでよ」


 それから恵里菜は立ち上がり、キリヤの方を見た。


「私、キリヤに会えてよかったわ。こんなつまらない世界って思っていたけれど、そんなことないんだなって教わった。だからこれからもこの世界でちゃんと生きる! そしていろんな人たちを救えるような人間になりたいわ」


 恵里菜はそう言って微笑んだ。


 その言葉にキリヤは顔を上げて、


「ありがとう、恵里菜」


 笑いながらそう答えたのだった。


「じゃあ帰りましょう! 今夜はごちそうにしてもらうわ! 旅立つキリヤへの餞別のためにね!」

「うん!」


 キリヤはそう言って立ち上がると、


「え……?」


 つい先ほどまで目の前に広がっていたはずの世界が、真っ暗になっていることを知る。


 これって……そうだ、恵里菜は――!?


 そう思いながら、キリヤは恵里菜がいた方へ視線を向ける。しかし、目の前にいたはずの恵里菜はキリヤの目の前から姿を消していた。


「もしかして、世界の改変が始まって――急がないと!」


 そしてキリヤは、ポケットに入っていた神主から渡された石を取り出した。


「これで元の世界に――」


 そう言ってキリヤはその石を使おうとした時、急に地面が揺れ出す。そしてその揺れに足を取られたキリヤは、手に持っていた石を地面に落とした。


「しまった!」


 キリヤは石を拾い上げようと地面に手を伸ばす。


 しかしキリヤが手を伸ばしたその地面はボロボロと少しずつ崩れ始め、キリヤはそこに落ちたはずの石を見失った。


「い、石は?」


 キリヤはそう言って辺りを見渡すが、落とした石を見つけられずにいた。


「このままじゃ、間に合わない……っ――!?」


 それからキリヤの足元は完全に崩れ去り、キリヤはそのまま暗闇の中へと落ちていったのだった。




 優香、ごめんね。僕――

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