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第2話ー⑤ 湖畔の罠

「さてと。続きをしましょうか」

「……」

「何……?」


 何かを呟いているようだけど、よく聞こえないな――


「……われない」

「え?」


 そしてほたるを拘束していた蜘蛛の糸が解ける。


「!?」


 驚いた優香は後ろに退いた。


 電気の能力じゃ、きっとあの糸は解けないはず。でも――


 パラパラと落ちる蜘蛛の糸を見つめる優香。


「もしかして、複合能力を持っているの……?」

「お姉さんに言う必要はない」

「そうね」


 解いたというよりは、切り刻んだという方が正しいかな。切断系の能力かな……それはそれで厄介な――


「じゃあ続きをしようよ、お姉さん」


 そう言って優香に不敵な笑みを向けるほたる。


「ええ」


 優香は構えの姿勢を取った。


 私にはちょっと不利な状況かもしれない。複合能力を考えたら糸は使えない。体術も電気を纏われたら打つ手がない。唯一対抗できそうな手は、私が蜘蛛化して無作為に殺しをするということ――


『マタ、ヒトゴロシヲスルノ?』

「え……?」


 頭に呼びかけて来る、この声は何――?


 優香がそんなことを考えていると、ほたるはまた両手を天に上げて電気を溜め始める。


 ほたるを見た優香は首を横に振ると、


「今はそんなことを考えている場合じゃない。蜘蛛化しても意識を保てばいい。訓練を積んできた私ならきっとできる」


 そして優香は目を瞑り、意識を集中させた。


 お願い、私に力を貸して――


『ワカッタ』


 すると全身が蜘蛛のカタチになる優香。


『意識は今のところ保てている。それに何これ……すごい力が湧いてくる』


「そういえば、お姉さんは『ゼンシンノウリョクシャ』だったね。でも、僕には関係ない!」


 ほたるはそう言って、小さな電撃を拡散させる。


『嘘……全部止まって見える。これが蜘蛛の力なの……?』


 全ての電撃を躱し、ほたるの目の前に着いた優香は、鋭くなっている足の1本を振り上げて、ほたるに向かって振りおろした。


 そして優香の足はほたるの右の脇腹をかすめる。


「う……やっぱり『ゼンシンノウリョクシャ』は桁違いの能力だね……」


 ほたるは脇腹を押さえながら、優香を睨んでそう言った。


『もう一度。そうしたら、この戦いに蹴りがつ、く――』


 急に身体が重くなる優香。


『何、これ……もしかして力の使い過ぎで、魂の侵食が進んだの……?』


 そして優香は元の姿に戻ると、片膝をついた。


 動け、私。ここで止まったら、もう――


「よくわからないけど、チャンスみたいだ。じゃあお姉さん……今度こそ、さようなら!」


 ほたるはそう言って、ありったけの電撃を優香に放つ。


「うう……」


 キリヤ君、ごめん。私はここまでみたいだ――


 その電撃を受けた優香は、その場に倒れたのだった。



 ***



「形勢逆転だね」


 ほたるは目の前で倒れている優香の傍に寄り、再び電撃を放とうとした。


 しかし――


「何、これ……」


 突然身体に小さな蛇が纏わりつく。


「蛇――ってことは」


 周りを見渡すほたる。そしてゆっくりと自分の元に歩み寄る少年の姿。


「やあ。いつかぶりだね」

「アンチドーテ……」

「それは組織の総称。僕には三谷翔という名前があるんだけどね」


 ニコッと微笑む翔。


 それからほたるは電撃を身体に纏わせ、身体に纏わりついていた小さな蛇を除去した。


「君との戦いはまだ早いと言われているから。僕はこの辺で」


 そう言ってほたるは両足に電気を込めると、そのままどこかへ飛んでいった。


「さてと……」


 倒れている優香を見つめる翔。意識を失った優香は徐々に蜘蛛になり始めていた。


 そして蜘蛛化が進む優香を見て、


「僕も放っておけばこうなるのか……」


 そう呟き、優香を抱き上げると人目のつかない場所へと入っていったのだった。

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