第八十七話 楓ちゃん、髪を下ろす
楓視点です。
同学年の方から愛でられるようになり数日が経ち、ある程度落ち着いて普通の生活に戻りました。何度か遅刻しそうになっていたのを見かねたクラスメート達が動いてくださったおかげです。
(何かお礼をしませんと)
そこでお昼休みに、お友達にお返しを相談することにしました。中心になって動いたのも、この三人ですし。
「あの、皆さんへのお礼ですが、何がいいでしょうか?」
「アタシはいらないわ。助けたのも友達として当然だから」
「芹ちゃん、それだと話進まないよ。牡丹、いいアイデアある?」
「楓たんが三つ編み以外の髪型で一日過ごす。これなら確実にお礼になる。特にクラスメートには絶対に」
牡丹さんが断言したのと、他に意見が出なかったので決定しました。それにしても、本当にお礼になるのでしょうか?
「じゃあ早速髪を解いてあげるわ」
「楓たん、ストレートでも緩いツインテールでも可愛いんだよね」
「遊びに行ったときくらいしか見られないから、かなりレアよね」
皆さん乗り気で髪型を変えようとしていましたが、髪型にとあるこだわりを持っているわたしは、それに待ったをかけました。
「その、出来たら今日はちょっと......髪型を変えるのでしたら靴下も変えたいですし」
「「「靴下?」」」
聞いたお友達全員がポカンとした顔でオウム返ししました。はぅぅ、あやくんに話したときもそんなお顔されましたし、わたしって変なのでしょうか?
「その、髪型に合わせて靴下の種類を変えていまして」
「確かに、髪型だけじゃなく靴下も変わってたわね」
「ファッションにこだわりがあるのはいいことだわ」
「楓たん、詳しく聞かせてくれる?」
「はい。わたし、昔から学校に通うときは白いハイソックスと三つ編みにしているんです。真面目そうに見えますし」
あと前髪でお顔を隠していても、地味な印象が先行して不審に思われないという理由もありました。実際、わたしのことを覚えている人はいませんでした。そう考えると、今みたいに注目されているのが嘘みたいです。
「ねえ、他には?」
「お外では大人っぽく見せたいのでストレートヘアに白いニーソックスです」
「正統派美少女ってイメージよね」
「可愛いけどそこまでしても、見た目小学六年生ってところね」
「はぅぅ!」
牡丹さんの一言が突き刺さりました。確かにその通りですけど、今どきの小学六年生は大人っぽいですよ?
自分で言って悲しくなりましたけど。
「それで、続きは?」
「......家ではリラックスしたいので緩いツインテールとルーズソックスです」
「ああ、誕生日会のときしてたよね。初めて見たときびっくりしたよ。リアル小学生でも、もうちょっと大人っぽいって思ったくらいで」
はぅぅ、あの服についてはお気に入りですけど、自分でも子供っぽいって思うので言い逃れできません。
「遊びに行ったときは、着替え忘れてるのかストレートヘアと大体半々で見るわね」
「正直、家での姿は彩姫のためだろうから、ストレートにニーソ姿を見たいよね」
「それに、実はルーズソックスは校則違反」
「はぅぅ!?」
意外な事実に衝撃を受けました。あまり厳しく言われることがないので、校則が緩いものかと思っていました。
「基本的に校則は緩いわよ。ただ名指しで書かれてるものは駄目ってだけ。ピアスとか」
「ニーソもくるぶしソックスも、なんならカバーソックスでさえ何も言われないのにね」
「一言で言うとずっと昔に流行したときに、実物知らずに禁止してそのまま変わってないらしいわ」
理不尽だとも思いましたが、考えてみるとお外で履くことはないので別に気にしなくてもいいみたいです。
「脱線したけど、結論は髪を下ろした白ニーソ姿でいいのよね?」
「「異議無し」」
「そういうわけだから、明日はちゃんとその姿で過ごすこと」
「彩姫にはあたしから連絡しとくね」
クラスの女子へのお礼が決まり、お外での姿で登校することになりました。そして翌日、制服を着て髪を整えお部屋を出たところ、あやくんに止められました。
「かえちゃん、なんでいつもの三つ編みなの? 百合さんから聞いたけど、忘れてるの?」
「はぅぅ!? いつもの癖でやっちゃいました!」
「まだ時間はあるから、着替えて――いや、ここはお仕置きしようか。かえちゃん、うっかりでも不義理は許されないからね?」
事情を聞いていたあやくんに、お部屋でお仕置きをされました。内容はもちろん髪の毛を溶き、靴下を履き替えさせられるというものでした。
「座って。大丈夫、解いたらちゃんと整えてあげるから」
「はぅぅ」
三つ編みを解き、優しく溶いていくあやくん。そのあと、後ろから抱きしめられ、ハイソを脱がされてニーソを履かされました。
(はぅぅ、靴下のお着替えさせられるの、これで二度目ですけど......恥ずかしすぎます)
恥じらうわたしをよそに、あやくんはとても満足そうに何度も頷いていました。
「うん。すごく似合ってる。良家のお嬢様みたいだ」
「そんなことは......」
「ではお嬢様、行きましょう。せっかくですからお姫様抱っこで登校しましょうか」
「すごく恥ずかしいのでおんぶにしてください......」
こうして、髪を下ろしたわたしは、あやくんに背負われて登校しました。評判はとてもよくて、この姿をもっと見たいと多くの方からリクエストされましたので、一週間に一度だけ髪を下ろして登校することになったのでした。
お読みいただきありがとうございました。




