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第八十六話 彩芽くん、あれこれ聞かれる

 林間学校が終わってから、僕はよく同級生に声をかけられるようになった。内容は主だってこんな感じだ。


「佐藤ってまじで男なのか? いっそ男でもいいから付き合ってくれ」

「嫌です。彼女いますし」

「姉妹とか従姉妹とかいないのか? いたら紹介してくれ」

「あんまり交流ないのでわからないです。いても地元違います」

「美術部だけどヌードモデルになってくれ」

「ヌードはともかく、なし崩しで入部させられるのでしょう? 遠慮します」


 冗談みたいなものから本気っぽいお願いまで全て自分の口でお断りして、教室に戻って着席すると同時に机に突っ伏す。


「疲れた」

「あんなに目立てばそうなるよ。ついでに、学年トップタイのネタも広まってるから」

「才色兼備ってやつよね。これで女の子だったら、学年のアイドルになるわ」

「その上美術の才能もあるし。本当、彩姫が女の子だったらすごくモテると思う」

「それ、牡丹さんと芹さんだけには言われたくない」

「ちょっと、あたしは?」


 美少女かつ成績優秀な二人に褒められても、まったく嬉しくなかった。百合さんはまあ、成績がちょっと微妙なので。


「数日経てば落ち着くわ」

「だったらいいけど......中学時代はいじめられてたから、こういう扱いに慣れなくて」

「むしろそっちが異常だったんだよ。普通に人気者でもおかしくないのに」

「それは買いかぶりすぎだよ。あの頃はウジウジしてたから」


 中学生って精神的に未熟だから、どうでもいい理由でいじめ起きるんだよね。僕の場合、女の子っぽいのとテスト関連のあれこれが理由だけど。


「でも今こういう風に過ごせてるから、悪いことだけじゃなかったけど」

「同意するわ。アタシも部活のことがなかったら、この学校に来なかったし」

「そう考えると、二人の地元の子達ってバカなことしたよね」

「いや、オレにとってはありがたいぞ。あと楓にとってもな」

「確かに心節くんと楓たんはそうかも」

「ねえ、そういえばかえちゃんはどこ行ったの?」


 隣の席どころか教室内にもいない。お花摘みに行くなら大抵誰か誘うし着いていくので、それも考えにくい。


「楓たんは他のクラスに貸し出し中だよ」

「えっ、なんで?」

「アタシ達と隣のクラスは散々愛でてきたからよ。大丈夫、撫で回されたり膝に乗せたりして癒されてるだけだから」


 どうやらかえちゃんは、学年のマスコットにランクアップしたようだった。まあ、あれだけ可愛ければ納得だよね。


「かえちゃんも大変だね」

「その楓と付き合ってるコイツは、女子から敵視されねーのか?」

「そこはほら、あんなに堂々とラブラブしてて、しかも楓たんも幸せそうな顔してたらね」

「からかうと初々しくて可愛い反応するから、応援するのが暗黙の了解になってるわ」


 そうなんだ。だからたまに女子から慈愛の目で見られてるのか。今度から微笑み返そう。


「ただそれでも妬む人はいると思うけど、表だって何かしてくるとかはないと思うわ」

「それならいいけど」

「はぅぅ......ただいま戻りました」

「かえちゃん!!」


 話題が終わると同時にかえちゃんが憔悴した様子で教室に戻ってきたため、僕は彼女を抱きしめ労った。


「お疲れ様。こんなになるまで無理しなくていいのに」

「無理はしていませんよ? それに、あやくんから元気をいただきましたし」

「そう。このくらいでいいならいつでもするよ」

「あのー、そろそろご遠慮いただけません? 私が入れないんですけど」


 現国の女性教師である御影先生が、遠慮がちに僕達を注意した。


「「す、すみませんでした!!」」

「微笑ましくて癒されましたけど、チャイムには気付いてください。では授業を始めましょうか」


 現国の授業中、隣のかえちゃんの体調が心配になり横目で見たが、いつも通りだった。授業が終わり、視線に気付いていたかえちゃんが一言、心配ないですよと告げ、また他のクラスに貸し出しされていった。


(家に帰ったら、ご飯以外の家事代わってあげよう)


 そう考え、かえちゃんを見送った。さてと、今度はクラスに押しかけた人達を適当にあしらおうか。今回女子が多いけど。


「桜井さんと幼馴染って本当?」

「本当です。昔離れ離れになったけど、再会しました」

「同棲してるのは?」

「一応事実です。家庭の事情で二人で暮らし始めたのが先で、付き合い始めたのは大分あとです」

「どこまで進んだの?」

「おでこにキス、ですね。まだ勇気が出なくて」


 根掘り葉掘り、女子から聞かれる羽目になった。こうして僕が絡まれ、かえちゃんが愛でられた一日が終わり、放課後になった。長居する理由もないのでかえちゃんを背負い、早めに下校した。


「かえちゃん、今日は洗濯物の取り込みとお風呂の準備は僕がするから、休んでていいよ」

「あの、心配しなくてもそのくらい出来ますから、二人でしたいです」

「だめ。本当ならご飯も用意したいけど、逆にかえちゃんを疲れさせるから」


 そうして、今日の家事はほとんど僕が担当することとなったのだけど、洗濯物を回収し、リビングで広げた際にいきなり躓くこととなった。


「ごめんね、長い靴下のたたみ方わからないし、下着は下手に触れなくて」

「その、呼んでいただいてむしろありがたかったです」


 ニーソックスとルーズソックス、それと下着をたたんで洗濯物を部屋に持っていったかえちゃん。そのあとは何も問題なく終わったのだけど、最初から洗濯物も分担しておけばよかったと後悔したのだった。

お読みいただきありがとうございます。ストックが、もう切れます。

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