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第八十四話 楓ちゃん、彩芽くんと帰宅する

楓視点です。

 衝撃的なちゅーが目の前でされて、わたしはあやくんに寄りかかるように気絶しました。目が覚めると、あやくんの背に乗って、二人きりで帰路についていました。


「あの、すみません」

「いいよ。かえちゃんには刺激が強すぎたんだよ。僕もまだ目に焼き付いてどきどきしてるし」


 あのあと百合さんと牡丹さん達は、普通に挨拶されて車に乗ったそうです。有磯菊太さんと有磯桐次さん、それがお二人がお付き合いされている方のお名前だそうで、わたしが気絶している間に自己紹介を済ませたそうです。


「元々百合さんと牡丹さんから聞いてたみたいだからすぐ終わって、残された僕達は自然に解散したんだ。そうそう、心節は芹さんの買い物に付き合うって言ってたよ」

「お買い物デート、ですね」


 芹さんは一人暮らしですので、帰ってからすることも多いのでしょう。心の中でお二人にエールを送ります。


「女の子の一人歩きは危ないからね。それで僕達は帰宅からのおうちデートってわけだ。まあその前に、家のこといろいろしないとね」

「そうですね」


 家に帰って最初にしたのは、干してあった洗濯物を取り込むことでした。お着替えはせず、お互い制服のままで家事をします。


「これ以上洗濯物を増やしたくないからね」

「そう、ですね」

「お風呂も早めに入ろう。ご飯はどうしよう?」

「冷凍庫にお米保存しているので、それ使って雑炊にしましょう」


 夕ご飯のメニューが決まったので、あやくんはお風呂の準備と掃除を、わたしは雑炊作りを行いました。いつもは二人で協力して家事をしていますが、忙しいときはお互いに別のことをした方がいいのかもしれません。あくまでも忙しいときだけですけど。


(あやくんと一緒がいいですから)


 林間学校で離れていた分、そう思えるのです。こうやって二人で雑炊を食べている時間も大切なものです。


「美味しいよ、かえちゃん」

「よかったです」

「そうだかえちゃん。お風呂のあとなんだけど、いつもの練習するから」

「えっと、わかりました。ですけど、もうお顔見てお話し出来ると思うのですが?」


 疑問を投げかけたわたしに、あやくんは笑顔で手を伸ばし、ほっぺたをぷにぷにし始めました。はぅぅ、どうしてお仕置きなんですか?


「あの練習の目的は、一咲さんと紅葉さんが帰ってきたときまでに、恋人らしく振る舞えるようにするためだよ。顔を見て話すのはスタートラインだからね」

「はぅぅ!」

「ちなみにお仕置きに大した意味はなくて、やりたいからしてるだけだから」


 あやくんがお風呂に入るまでの間、たっぷりほっぺたぷにぷにをされちゃいました。わたしはとても締まりのない顔で、あやくんがお風呂から出るまでお部屋でアヤメくんを抱きしめていました。


(あやくんに久しぶりにほっぺたぷにぷに、されちゃいました♪)


 上機嫌なままお風呂に入り、髪をドライヤーで乾かしていただいたあと、練習を始めたのですが、今日はダイニングではなくリビングですることになりました。


「抱き合って顔を見ながら話すのを試したいから。立って抱き合うより座ってとか寝転んでの方が安全だし」

「それだと、ハードルがさらに上がっているような気がします」

「上げてるんだよ。昨日今日でかえちゃん分が足りてないから、補給したいんだ」


 どうもあやくんはわたしと離れる時間が長いと、ワガママになるみたいです。あやくん、可愛いです。


「かえちゃん、じっとしてて」

「あやくん......きゃっ!」

「やっぱりかえちゃんは抱き心地いいね。それに、すぐ赤くなるところも好きだよ」

「はぅぅ、あやくん。お顔が近いです///」


 抱きしめられ間近で顔を見ながら、わたしとお話しするあやくん。ところが、あやくんの行動はこれで終わりではありませんでした。さらにわたしに綺麗なお顔を近付け、おでこにそっとちゅーをしてきました。


「はぅぅ///」

「ほら、かえちゃんもやってみて。恥ずかしいなら目を瞑っててあげるから」


 そう言って目を閉じたあやくん。ここまで気を遣っていただいた以上、何もしないという選択肢はありません。勇気を出してわたしは、あやくんのおでこに唇を触れさせました。ちゅー、出来ました。


「かえちゃん、頑張ったね」

「はぅぅ///」


 ニコリと微笑むあやくんが眩しくて、わたしは思わずあやくんの胸に顔を埋めました。


「かえちゃんは可愛いね。恥ずかしがり屋さんなのに、無意識で積極的なことをしてくる。そんないけない子にはお仕置きだよ」

「はぅぅ、今度はどんなお仕置きですか?」

「そうだね......リビングで布団並べて二人で寝るってのはどうかな?」

「えっ、は、はぅぅぅぅ!!」


 想像以上にすごい内容だったので、とても驚いてしまいました。そんなわたしを無視して、淡々とお部屋から二人分の布団と枕を持ってきて敷いていくあやくん。


「一緒に暮らしているんだから、たまにはこういう風なのもいいよね。大丈夫、何もしないから。信じられないなら衝立で仕切ってもいいし、布団を離してもいいよ」

「そこまで言うなら......わかりました。あの、普通のお泊まりみたいなものですよね?」

「うん。林間学校で、友達と一つの部屋で寝るようなものだよ。僕は簀巻きにされてたけど」

「簀巻き!?」


 一体あやくんは、何があってそんな状態になったのでしょうか。すごく気になりましたが、笑って誤魔化されました。


「それはともかく、そろそろ寝よっか?」

「はい......」


 灯りを消して、お布団に入ります。いつもと違うのは、隣にあやくんがいることです。


「かえちゃん、寝られそう?」

「すごくどきどきしますけど、頑張ります」

「そう。かえちゃん、おやすみ」

「あ、あやくん、おやすみなさいです」


 あやくんへとおやすみの挨拶をして、しばらく経ってわたしは眠りの世界へと誘われていきました。宣言通りお友達がお泊まりするように、特に何も起きることなく二人で一夜を過ごしたのでした。

お読みいただきありがとうございます。もちろん朝まで何もありませんでした。健全なのか子供なのか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 寝相悪くて、無意識に抱き枕にしたね、きっと。 かえちゃん、目が覚めたら抱きしめられてて、すぐ気絶しちゃってたから覚えてないんだろう…(笑)
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