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第七十一話 楓ちゃん、怒られる

楓視点です。

 あやくんが髪と手にちゅーした日から数日が過ぎ、中間テストの結果が出ました。わたしは五教科合計で三百十点で、中学生の頃よりもかなり成績が上がっていました。


「かえちゃん、おめでとう」

「はぅぅ、ありがとうございます///」


 あやくんに褒められて、とても嬉しいです。一方あやくんですが、なんと学年首位の紫宮さんと同点だったそうで、順位を確認して驚いたそうです。


「あやくん、すごいです......それも、わたしのお勉強を見ながらなんて」

「かえちゃんの勉強を見たから、この点だったんだよ。教えるのって自分も理解が深まるからね。それより、頑張ったご褒美をあげないとね」

「あの! でしたらわたしはあやくんに頑張ったご褒美と、教えてくださったお礼をします!」

「じゃあ、ご褒美の内容を思い付いたらお互い発表するってことで。かえちゃんはお礼の方も別枠で考えてね」

「わかりました」

「二人とも、ここが教室って忘れてないかしら?」

「「あ......」」


 芹さんに指摘されるまで、わたし達は自宅と同じように接していたことに気付きませんでした。その結果、クラスメートのほとんどがコーヒーを求めて教室を出て行かれました。どうしてでしょう?


「まったく、仲いいのは構わないけど、場所くらい考えなさいよ!」

「すみません」

「ごめん」

「まあ、わざとじゃないからいいわ。それにしても、頑張った相手にご褒美、ね」


 わたしとあやくんの会話が琴線に触れたのか、芹さんはご褒美と呟きながら心節さんの席まで歩いて行き、少しぎこちない笑顔で心節さんへとこう告げました。


「心節君、頑張ったご褒美に、アタシの手作り弁当はいらないかしら?」

「何だよ藪から棒に。まあ貰えるなら貰うが、作るの大変じゃねーのか? お前一人暮らしだろう?」

「別に、一人分も二人分も変わらないわよ。でも、心配してくれてありがとう」


 ほとんど誰もいなくなったからか、お二人がいい雰囲気です。あやくんも察しているみたいで、お互い無言でお二人の行く末を見守ります。


「まあ、一見大丈夫そうに見えて、実は危なっかしい奴がいたら助けるだろう?」

「それってアタシのこと? お生憎様、アタシはそこまで弱くないわよ」

「そういうところだっつーの。過信して潰れる前に、愚痴やら何やらがあるならオレが聞いてやる。それが勉強を教えてくれた礼だ」

「お礼なら、遠慮なくそうさせてもらうわ。ありがとう」

「弁当の件、忘れんじゃねーぞ?」

「わかってるわよ」


 話が終わったようで、お二人とも席を立ってわたし達の方へと来ました。


「あ、あの、芹さん?」

「心節?」

「聞き耳立てるなら、もうちょっとこっそりしなさい」

「つーかガン見してるんじゃねーよ!」


 顔の赤いお二人に怒られました。クラスメートの皆さんが缶コーヒー片手に戻ってきたので、すぐに解放されましたけど。


「二人とも照れ隠し下手だね」

「うるせーよ」

「彩姫に心節君、何があったの?」

「何でもねーよ。それより、百合のテスト結果はどうだったんだ?」

「あたしは三百一点だったよ。心節君は?」

「二百九十二点だ。次は負けねーからな」


 心節さんと百合さんはわたしと点数が近かったみたいなので、わたしも点数を伝えました。


「あっ、わたし三百十点です」

「マジか。つーことはオレが一番下か」

「楓たんには勝ったと思ったんだけど、意外と頭よかったんだね。今度は負けないからね」

「はい。頑張りましょうね♪」

「そうだな」


 わたし達三人は点数の話になっても、比較的和気あいあいとしていました。その一方でお互いに点数を比べ対抗意識を燃やしていたのが、芹さんと牡丹さんでした。芹さんが四百四十二点、牡丹さんが四百五十点と点差が余りなかったことが、火に油を注いだのかもしれません。


「芹さん中々やる。今後もいいライバルでありたいわ。次も私が勝つけど」

「残念ね。今度はアタシが勝つから牡丹さん、覚悟してなさい!」


 お互い健闘を称え合い握手していましたが、ちょっと発言が殺伐としている気もします。いつもはお二人とも仲良しなんですけど、ライバルってそういうものなのでしょうか?


「まあでもその先には彩姫がいるから、彩姫超えを目標にした方が有意義だけど」

「そうね。でもあの点だし、得意教科でも勝てるかしら?」

「えっ、僕満点取れてないから、そこは普通に負けてるけど?」

「むしろ満点取れないのにその点って、隙がなさ過ぎるわよ」


 あやくんのフォローになっていない発言に、芹さんが頭を抱えていました。あやくんに一教科でも勝てている時点で充分すごいと思いますけど。ちなみに芹さんは英語、牡丹さんは物理で満点だったそうです。わたしからすると三人とも雲の上の人です。


「でもきっと、この点取れたのはかえちゃんのおかげだと思ってるんだ。一人暮らしだったら多分体壊してるし、壊してなくても気負いで空回りして変な間違いしてただろうから。ありがとう、かえちゃん」

「はぅぅ///」


 あやくんがお礼を述べ、わたしの頭を優しく撫でてくださいました。その様子を見た今度はクラスメート全員が机に突っ伏してしまい、今度は皆さんからお説教されました。


「みんなごめんって!」

「はぅぅ、わざとじゃないんです!」


 二人してモフモフの刑で許してくださいました。ですが結局、あやくんへのご褒美もお礼もいいアイデアが浮かびませんでした。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 購買のブラックコーヒー消費量、間違いなく過去最高になるでしょうね…
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