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第六十七話 彩芽くん、ヘタレがバレる

 かえちゃんが急に髪を切ったことで驚いたのは、クラスメートだけではなかった。海崎先生は入ってくるなり、かえちゃんのことを二度見し、心配そうに声をかけてきたのだ。


「桜井、お前何かあったのか? いじめを受けたなら相談しろよ?」

「はぅぅ、違います......伸ばしていた理由が解決しましたので、あやくんに切っていただきました」

「そうか。佐藤、切ったなら責任持ってサポートしろよ?」

「もちろんです。生涯に渡って責任持つ予定ですので」

「はぅぅ!!」 

「いや、そこまでしろとは言ってない」


 本気の発言だったのだけど、どうも海崎先生には冗談だと思われたみたいでアッサリ流された。


「あー、明日からテストとなっているので、復習と体調管理は怠るなよ? 何度も繰り返すが、各教科中間と期末の合計が百点未満の奴は補習が待っているから、一夜漬けでもなんでもいいからしっかり勉強しろよ?」

「先生、なんでそんなに念押しするんですか?」

「補習はお前らだけじゃなく俺らの休みまで削られるんだ。わかるな?」

「理解しました」


 確か、かえちゃんの中学時代の平均点は五十六点って言っていたので、補習予備軍に入るかどうかだろう。特に理系科目がギリギリ五十点らしいのでかなり危うい。本人も自覚しているのか、目に見えて落ち着きをなくしていた。


「はぅぅ」

「大丈夫、家で勉強頑張ってたじゃない。実力を発揮すれば補習は避けられるからね」

「ですけど、心配です......追い込みをかけたほうが」

「かえちゃんの場合、記憶力はいいけど覚えるのに時間かかるから一夜漬けには向いてないよ。慌てて勉強するよりしっかり寝てから挑もうね」


 単純な事実と、それに基づいた分析をかえちゃんに伝え、釘を刺しておいた。今日の時点で寝不足なんだから、一夜漬けなどしたらかえちゃんは倒れると思う。


「とにかく優先するのは体調だよ。わかったね?」

「はい......」


 納得してくれたようなので、午前中の休み時間は二人揃って寝ることにした。少し眠気が晴れたのだけど、クラスメートに散々寝顔を撮られ見せられるという、恥ずかしい目に遭うのだった。


 ご飯を食べて、一旦眠気も落ち着いた昼休み。隣のクラスの女子達がかえちゃんが前髪を切ったという噂を聞きつけ、愛でるために訪れてきた。


「素顔はこんなに可愛いなんて反則よ!」

「お持ち帰りしたい!」

「はぅぅ......」


 撫でられ続けたせいで三つ編みがすっかり解けてしまい、長くて真っ直ぐな黒髪が露わになりその結果、かえちゃんの美少女度合いが上がりさらに弄ばれる結果となった。


「うわぁ、あれ二重の意味で可愛がりよね。彩芽君、止めなくていいの?」

「僕にあの中へ入れって? 行っても犠牲者が増えるだけだよ?」

「そういえば彩芽君も可愛がられる側だったわね。こういう場合、可愛い見た目も考えものよね。仕方ない、行き過ぎてたら助け出しといてあげるから、今度埋め合わせしなさいよ」

「ごめん芹さん」


 見かねた芹さんがストッパーを名乗り出てくれてた。芹さんってすごく存在感のある美人だから、大抵の人は声をかけられたら無視出来ないんだよね。すごく綺麗な分、怒ると怖いけど。


「しっかし、女子限定とはいえすげー人気だよな楓」

「楓たんはマスコットっぽくて可愛いし、その上一途で健気だから応援したくなる」


 牡丹さんの発言に全力で同意した。頑張ってるかえちゃんを見てると胸が温かくなるし、それが僕のためってわかると胸がキュンとして、抱きしめて撫でたくなるのだ。


「彩姫、楓たんを泣かせないでよね?」

「もちろん、一生大事にするつもりだよ。だから結婚したいって告白したわけだし」

「お前、昨日そんな重い告白してやがったのか」


 心節、重いとは失礼な。かえちゃんが僕のことを待ち続けた年月を考えれば、これでも足りないくらいだよ。


「んで、楓はどう答えたんだ?」

「もちろんOKだったよ。旦那様って呼んでくれたし」

「おアツいね彩姫。じゃあさ当然キスくらいしたよね?」

「えっ!?」


 百合さんの問いかけに固まった僕。その反応で百合さんと牡丹さんは察したようだった。


「ちょっと、何でキスしてないの?」

「彩姫、楓たんと二人きりで、過去のことも伝えてから告白したんだよね? 自然な流れでキス出来たはずなのに、どうしてかな?」

「えっと、実はその、かえちゃんが髪を切ってて、あまりの可愛さに顔を見ながら告白するのがやっとで、それ以上何も出来なくて」

「「「ヘタレか!!」」」


 正直に暴露したところ三人に同時に罵られたが、自覚はあったので何も言い返せなかった。


「でもそれなら楓たんからキスしたり、ねだっててもよさそうだけど」

「かえちゃんはかえちゃんでその、僕の顔がハッキリ見えるようになって、逆に直視出来なくなったみたいで」

「はぁ、楓たんも難儀よね。で、続きは?」

「......今もそんな感じで、家でお互いの顔を見ながら、近くで話す練習を」

「「「どヘタレか!!」」」


 またしても耳の痛いツッコミを三人から受ける。やっぱりそう思うよね。でもこれでも頑張ってるんだよ?


「どこがだ。付き合う前より後退してんじゃねーか」

「でもさ、彩姫は割とすぐ慣れるんじゃない?」

「図太くていい性格してるから、同じヘタレでも臆病で気弱な楓たんよりは早いと思う」

「牡丹さん、前々から思ってたけど実は毒舌だよね?」


 牡丹さんは真面目な印象を受ける顔なので、毒舌が本気っぽく感じて結構傷付くんだけど。僕の発言に百合さんが同意する。


「そうなんだよ! 真面目な優等生の仮面被ってて、中は腹黒って彩姫みたいって、彩姫なんで笑顔なの怖いよ?」

「なるほど百合さんは一言多いと。さてどうしてくれやがりましょうか?」

「テスト前だから、課題漬けでいいと思う」

「いいですね。心節もついでですからしちゃいましょう」

「ぎゃーっ!!」

「オレもかよ!?」


 結果この場で勉強会となり、百合さんと心節のうめき声は昼休みが終わるまで続いた。ちなみに芹さんに救出されたかえちゃんは憔悴していたので参加させず、家でたっぷり休ませてあげた。

お読みいただきありがとうございます。

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