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第五十五話 楓ちゃん、準備する

幼馴染編、最後の楓視点になります。

 あやくんのお部屋で恥ずかしさのあまり気絶したはずのわたしは、何故かわたしのお部屋にいて、お片付けしたはずのお布団の中で目覚めたのです。


(はぅぅ、どうしてこんな状況に!? もしかしてさきほどまでのことは全部夢ですか!?)


 あやくんのお部屋でお話ししたことが、すべて夢だったのではと思ったわたしは、飛び起きてダイニングに向かいました。もしも夢でしたら、お寝坊して朝ごはんを作っていないということになるからです。


(はぅぅ、あやくんすみません!)


 幸いなことに夢ではなかったようで、テーブルには朝ごはんが一人分、ラップをかけられて並べられていました。二人分用意していたはずなので、あやくんは先に召し上がったみたいです。


(夢じゃなかった......はぅぅ!)


 安堵したわたしですが、すぐに驚いて固まりました。何故なら、先程お似合いと言った、アヤメくんとカエデちゃんがメモ用紙の上にいたからです。寄り添う二羽のうさぎが、だんだんわたしとあやくんに見えてきて、お顔が赤くなるのを自覚しました。


(はぅぅ、やっぱりお似合いです!)


 あまりにもお似合い過ぎて、わたしのお部屋にいるアヤメくんにも、カエデちゃんを作ってくださいとあとでお願いしたのでした。


 五分後、顔の赤みが引いたので、ご飯を温め直すことにしました。その間、アヤメくんとカエデちゃんの下にあるメモに書かれてあった、あやくんのメッセージに目を通しました。


『かえちゃんへ 朝ごはん美味しかったけど、一緒に食べられなくてごめんね。掃除と洗濯は終わらせておくから、ゆっくり休んでね。ちょっと外出するけど、前みたいに避けてるわけじゃないしちゃんと戻るから安心してね。追伸、アヤメとカエデはよかったらあげるよ。彩芽』


 綺麗な文字で書かれたメモを手に取り、アヤメくんとカエデちゃんと一緒にお部屋へと運び、机の上に置きました。あとでまた読み返すためです。


 レンジの音が聞こえたので遅い朝ごはんをいただき、お片付けのあとあやくんがいない今だからこそ、できることを考えました。


(明日のお誕生日パーティーはダイニングでしましょう)


 芹さんと心節さんだけでなく、百合さんと牡丹さんも参加するので、椅子が足りません。だからといって今日用意すると気付かれてしまい台無しになります。そのため、明日あやくんと心節さんとのおでかけ中に持ってくるしかありません。


(持ってくるときに転ばないようにしませんと)


 サプライズパーティーのつもりが、別の意味で驚かせたくありませんから、準備は慎重にしないといけません。なので今は飾り付けの配置や、お料理のメニューなどを考えています。


(ケーキは百合さんと牡丹さんが用意するらしいので、お任せしました)


 代金はわたしの着せ替えと撮影会と冗談で言ってましたので、もちろんちゃんとお金は出します。他の方ならいざ知らず、わたしの写真に価値は無いと思いますので。


(わたしと芹さんはお料理担当ですが、芹さんは今日こちらに戻られる予定ですので、なるべくはわたしが頑張らないとです)


 本当なら準備に誘うのもよろしくないですけど、仲間外れにしたら怒ると言われましたので、当日に頑張っていただきます。芹さんのお料理の腕はわかっていますので、とても助かります。


 そうそう、これまでのあやくんのお誕生日パーティーのことをなずなちゃんとカラスさんに聞いて、作るお料理やプレゼントを渡すタイミングなど参考にしました。


 そして、これらの準備は当日心節さんが、あやくんを連れ出すことで秘密裏にすることが出来ます。心節さんが時間稼ぎは任せろとおっしゃってくださったので、準備が終わったら連絡するつもりです。


「皆さん、本当にありがとうございます」


 わたしは、改めて感謝の言葉を口にしました。持つべきものは友達です。わたし一人ではここまでしっかりとしたプランは立てられなかったでしょう。それどころかあやくんに見破られてしまっていたでしょう。悪いことをしているわけではないので知られても困ることはありませんが、それでもサプライズは事前に知られると格好がつきません。


(そもそもあやくん、喜んでくださるでしょうか?)


 あやくんは今日に至っても誕生日のことを話題に出さないので、忘れているか気にしないようにしているかのいずれかでしょう。あと考えられるのはお誕生日が嫌いということですが、これは多分ないと思います。もしそうだったとしても、明日で逆転させてみせます。


(あやくん、明日は最高のお誕生日にしますから、覚悟していてくださいね♪)


 決意と共に、わたしは明日の準備を進めるのでした。


 ちなみにお昼前に戻ってきたあやくんの手には本屋さんの袋が下げられていました。伺ってみると恋愛小説や漫画を購入したらしく、参考にするために読むそうですが、何の参考にするのかは教えてくださいませんでした。


 その時照れて赤くなったあやくんのお顔が可愛くて、思わずキュンとしてしまいました。


(はぅぅ~、綺麗で格好良くてその上可愛いなんて反則です///)


 あやくんの美しさに身悶えしながらもどうにか今日を乗り越え、あやくんのお誕生日がやってくるのでした。

お読みいただきありがとうございます。

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