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第二十話 楓ちゃん、下校する

楓視点です。

 あやくんと昇降口を出てしばらく歩くと、お母さんと撫子さんが校門で待っているのが見えました。


「撫子さん、すっごく美人ですよね」

「紅葉さんの方が美人だと思うよ。楓さんとは姉妹にしか思えないし」

「はぅぅ」


 確かにお母さんとお買い物していたら、姉妹に間違われます。


 むしろお母さんは制服着ても普通に違和感ありません。


 一方あやくんのお母さん、撫子さんはあやくんより身長が少し高く、ゆるふわな長い髪を持っている美人さんです。


 かなりあやくんに似ているので、あやくんが髪を伸ばしたりウィッグを着けたりするとこんな美人になると思います。


(ナンパされるの、すごくわかります)


 わたしが男性ならあやくんを放っておきませんから。


 今でもメロメロですけど。


 ほっぺたぷにぷにが楽しみです。


「どうしたの、すごく上機嫌みたいだけど?」

「はぅ、あ、な、何でもありません」


 いけません、一応お仕置きという名目でした。


 喜んでいると知られるともうしてくれなくなります。


 お願いすればしてくれるかもですが、もししてくれなくなったら悲しいので、喜ぶのは我慢です。


「彩芽、楓ちゃん、こっちよ」

「桜が綺麗ですよ~。記念写真は校門で撮りましょう~」


 二人のお母さんに誘われ、あやくんとわたしは校門へと向かいます。


「はぅぅ」

「顔が赤いけど、大丈夫?」

「はい、大丈夫です!」


 桜とあやくんという組み合わせが、わたしのお胸のどきどきを強くしていきます。


 ただでさえあやくんは綺麗で格好いいので見とれるのに、ここ最近お胸がキュンとなるイベントだらけでしたので、際限がありません。


「ほら、並んで並んで」

「もっと近付いてください~。楓ちゃん~、今日くらいは前髪上げてくださいね~。写真ならセーフですから~」

「はぅぅ、わかりました~」


 お母さんに免罪符をいただいたので、撮影の時だけ前髪をオープンにして素顔をさらします。


 鏡が無いのでわかりませんが、きっとわたしのお顔は真っ赤になっていると思います。


「紅葉そっくりに成長したわね、楓ちゃん」

「自慢の娘ですから~。彩芽さんだって~、美人ですよ~」

「目元以外は私に似たから、女の子にしか見えないけどね。終わったからいいわよ」


 撮影が終わったので、前髪を下ろしていつものわたしに戻ります。


(わたしからあやくんに見せるのは、幼馴染って言えるようになってからです。今はまだ勇気が出せません)


 わたしにとってこの前髪は、いろいろな意味でベールですから。あやくんとお友達のままでは見せられません。


(せめて幼馴染に戻ったなら、頑張れそうな気がします)


 一つ心配なのは、その頃になったらなったで、どきどきし過ぎてあやくんのお顔を見られないままかもしれないということです。


(はぅぅ......それだとわたし、いつ見せられるんでしょうか? いえ、きっと大丈夫です。その頃には頑張れるはずです! わたし、頑張りましょう!)


 心の中で、自分自身にエールを送ります。


 今はあやくんと幼馴染って公言出来ませんが、いつか言えますように。


「ねえ、さっきから百面相してるけど、本当に大丈夫?」

「触れてあげないで。女の子には秘密があるのよ」

「そうですよ~。特に彩芽さんには~、知られたくないでしょうから~」


 はぅぅ......お母さんと撫子さんにわかられてます。


「彩芽さんは特に気にせず~、楓ちゃんに優しくするだけでいいんですよ~」

「まさか優しく接する方法がわからないとか言わないわよね?」

「わかるよ。楓さん、こっち来て」

「あ、あの」


 彩芽さんに言われるままにそばに行くと、手を握ってくださいました。


 それも、この握り方はいわゆる恋人つなぎです!


「はぅぅ」

「これなら転んでも僕に寄りかかれるからね」


 あやくん、天然さんです。


(はぅぅ、こんなにステキな人と幼なじみでよかったです)


 このまま手を繋いで、わたしはあやくんとお母さん二人と一緒に家まで帰りました。


「それじゃあ彩芽、頑張りなさいよ。楓ちゃん、夏休みはこっちに遊びに来てね」

「楓ちゃん~、また今度戻りますね~。彩芽さん~、楓ちゃんをよろしくお願いします~」

「母さん、紅葉さん、また今度」

「お母さん、撫子さん、夏休みにはどちらにも行きますね」


 家に帰ってすぐに、お母さんと撫子さんは慌ただしく行ってしまいました。


 何でも、お母さんをお父さんのところに送ってから、撫子さんは樹さんのところに戻るそうです。


 つまり今から二人きりなわけでして。


「楓さん、早速だけどお仕置きだよ」

「はぅぅ、せめてお着替え」

「駄目」


 ほっぺたぷにぷにの刑が執行されることになりました。


 まず、わたしが椅子に座ります。


 こうしないとわたしが気絶したときに危ないからだそうです。


 次に、あやくんが両手で、わたしのお顔を包み込むように挟みます。


 そして、あやくんがイタズラっ子のように笑って、お仕置きは始まります。


「はぅぅぅ!」


 頬をつつかれ、触られ、ときには揉まれたりします。


 これだけでもどきどきしますが、本番はあやくんと目が合ってからです。


(あやくんのお顔が、近いです)


 同じように触られるのでも、あやくんが見つめてくるだけで何倍もどきどきします。


 すると突然、あやくんがいつものお仕置きとは違う行動を取りました。


「楓さん、熱あるんじゃない?」

「はぅぅ!」


 ほっぺたぷにぷにの状態から、お顔を近付けて、おでこを合わせました。


 あやくんのお顔が、キスできそうなくらい、近いです......。


(はぅぅ......お胸が、どきどきして......!)


 そこでわたしの意識は途切れました。


 あとであやくんに聞いた話だと、熱はすぐに下がったそうです。

お読みいただきありがとうございます。

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