プロローグ 彩芽くんと楓ちゃんの放課後
初めての連載作品です。拙い表現や未熟な文章など多々ありますが、お付き合いいただけると幸いです。
プロローグと銘打っていますが、作中の時系列的には後半辺りです。この関係に至るまで描ければと思いあえて最初に持ってきました。
「かえちゃん♪」
「あやくん♪」
学校から帰宅してくつろぐ時間。
僕、佐藤彩芽は幼馴染で同居人、さらに恋人である桜井楓、かえちゃんと抱き合っていた。
ああ、学校で我慢してたからかえちゃん分が不足してるんだ。
かえちゃんも同じようで、僕の胸に顔を擦りつけて全身で甘えてくる。
すっかり蕩けた顔しちゃって、幸せそうだな。
かえちゃんのご両親が遠くにいるから、今この顔を見られるのは僕だけなんだよね。
赤面症で奥ゆかしい彼女、最高!
「かえちゃんは可愛いよ」
「はぅぅ、あやくんもすごく美人です///」
かえちゃんを褒めると、照れながらも僕の容姿をべた褒めしてきた。
そう、僕は美形だ。ただし美形は美形でも美少女だけど。
昔はこれが原因でいじめられて不登校になったけど、今はむしろこの顔に産まれて感謝してる。
何故って? この顔のおかげで寄ってくる男がかえちゃんの可愛さに気付く前に、僕に告白してくるから。
もちろんそんな男はかえちゃんに近付けさせず、丁重にお帰りいただいている。
ちなみにかえちゃんをお子様とか付属物扱いした奴は、かえちゃんから離れてから僕が男と告げ、性別すら判断できない節穴野郎と笑顔で罵倒の刑に処している。
かえちゃんは優しいから、目の前で誰かが傷付くのを望まないからね。
「あやくん、怖い顔してましたけどどうかされましたか?」
「何でも無いよ。それより、早く着替えちゃおうか。制服のキッチリかえちゃんも可愛いけど、私服のゆったりかえちゃんも好きだからね」
「はぅぅ、わかりました。あの、わたしも制服のあやくんも、私服のあやくんも大好きです///」
そう言って長い三つ編みを揺らしながら、真っ赤な顔して部屋へと走って行くかえちゃん。
もう、本当に可愛いな!!
「僕も着替えようかな」
サロペットをシャツに合わせるのが、僕の基本ファッションだ。
今日の気分はカーキ色かな?
シャツの柄は千手観音にしよう。
柄は見えないけどちょっとした外出の時は、サロペットからジーンズに替えるようにしているのでセーフ。
「こういう仏像の服着てると、ナンパ避けになるからね」
かえちゃんとのデート中ならまだしも、普段の買い物でナンパされるのは鬱陶しい。
その点、仏像シャツを着てれば神通力でも込められているのか、寄ってくる確率がかなり下がるので重宝している。
正直、シリーズとして日本の神様シャツも欲しいくらいだ。
着替え終わった僕はかえちゃんを部屋の前で待つ。
数分後、隣の部屋の戸が開き、うさ耳フード付きの長袖パーカーに短いスカート、それにダボダボの真っ白なルーズソックスという格好でかえちゃんが出て来た。
髪も三つ編みから、緩いツインテールに変えている。
くくった方が家事をしやすいけど、学校での反動からかあまりキツくしたくないらしい。
「あの、お待たせしました」
「うん。やっぱり可愛いね」
「はぅぅ......」
気に入った服は何着も買うタイプで、きれい好きな彼女。
もちろん毎日洗濯しているので、昔居たらしい汚ギャルとかとは無縁だ。
(身長よりずっと長い靴下を干すのに苦労してるかえちゃんも、愛くるしいんだよね)
気に入ってるらしいけど、学校には履いていかない。
理由を聞いたらお気に入りだからこそ、あやくん以外に見せるつもりが無いからだそうだ。
なのでデート中は白いニーソックスを履いて、髪をストレートにしているよそ行きかえちゃんになる。
ちなみに学校では白いハイソックス姿だ。
真面目そうなキッチリかえちゃん、家の中限定のゆったりかえちゃん、そしてちょっと背伸びしてるデート中のよそ行きかえちゃんと、すべてのかえちゃんを知っているのは僕以外には一部の友達だけだ。
まあその友達も全員恋人がいるため、かえちゃんに手を出すことが無いので安心して迎え入れている。
えっ、かえちゃんに魅力を感じるのはロリコンだけって?
否定はしないけど本人に言ったら泣くよ?
かえちゃんは小学校高学年くらいの身長で、しかも顔立ちも非常に整っているものの幼い。
高校の制服を着た状態で集団登校していた小学生達に挨拶したら、転校生と思われそのまま小学校まで連れて行かれたという逸話まで残っている。
あの時は大変だった。
かえちゃんが学生証を見せても信じて貰えなかったので、僕が赴き説明して、ようやく解放されたと思ったら小学生の集団から僕はお姉さん扱いされて、どうやったら綺麗になれるかって女の子達から聞かれるし。
とりあえず月並みではあるけれど、恋をすれば自然に綺麗になれるって答えを返した。
あながち間違ってもいないので許してくれた。
かえちゃんもどんどん可愛くなってるからね。
閑話休題、恋人同士の僕達には越えなければならない課題がある。
それはキスだ。
何度かしようとしたけど恥ずかしがり屋のかえちゃんは、僕の顔が近づくとすごく真っ赤になって、目を閉じても息のかかる距離になったら毎回気絶するのだ。
おでこや頬へのキスはギリギリ出来るのでかえちゃんに聞いてみると、結婚式での誓いのキスを想像してしまい、ドキドキし過ぎて倒れているという理由だった。
将来のことを想像してくれるのは嬉しいけど、せめて人前でキス出来るようになろうよ。
結婚式で倒れたらせっかくの思い出が台無しになるよ?
そんなわけで同居してから結構経つけど、僕達は未だにキスすらまだの清い交際を続けている。
(同居からずっと一緒だったのに、よく我慢してるよね僕)
そもそもの始まりは中学校を卒業する少し前に、僕が遠くの学校を受験したいと言い出したのがきっかけだった。
お読みいただき、ありがとうございました。
こぼれ話
タイトルからも察していただけるとは思いますが、主人公の名字とヒロインの名前はダジャレから生まれたものです。二人合わせてサトウカエデ、つまりメイプルシロップです。