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072:仮想ダンジョン

「えいっ!」


 ミーナの【ウインドブレード】が、ファングシープを切り裂いた。そして倒された魔物は黒い煙のような物を残して消え去り、地面には魔石と羊毛だけが残された。


「おにく、とれないね……」


 ミーナが残念そうに言ったのも無理はなかった。本物の平原ダンジョンのファングシープであれば、1体からでもかなりの肉が取れる。一定時間でリポップするこの仮想ダンジョンの魔物の死体が残れば、この仮想ダンジョンだけで食糧問題が解決するかもしれなかった。


「この羊毛をセリエさんの所に持っていけば、確か仮想ダンジョンで使える防具を作って貰えるんですよね? 後は……銅と錫の鉱石をこのポイントで採取して……」


 セナがそう言うと、ヤンが黙って進み出て手に持っていた冒険者ギルドから支給された採掘道具である小型のツルハシで、洞窟の少し輝いている場所を叩いた。


……すると、コロリと銅の鉱石が幾つか現れた。


(これって完全に仮想VRゲームだよね……)


 私のこの感想をここで声に出して言ってみても誰にも理解されないのが残念だったが仕方がない事だった。


「このダンジョンでしか使えない防具や道具……不思議で興味深いですが、残念でもありますね……仮想ダンジョンが資源の採掘場にはならないんですよね」


 セナがミーナとは少し違った方面で残念そうにしている。


「まあでも、魔石は本物だし……いくら魔物を狩っても短時間で復活してくれるこの場所は皆の成長の場としては最適だよね」


 残念そうなミーナとセナの二人を私はそう言って励ました。ヤンは採掘が楽しいのか夢中になって採取ポイントを探している。


「ヤン……」


 私が残念な子を見るような目でヤンを見ていると――


『そろそろご飯の時間だよ~』


 ダンジョンの外からのマナの【心話】での連絡があった。


「一旦地上に戻ろうか。仮想ダンジョンがどんな場所か、おおよそ分かったからね」


 私はそう言うと周囲の様子をみまわした。地下のトンネルのような形状のダンジョンは、壁が綺麗な黒い光沢のあるレンガで作られていて等間隔に照明があるので地下でありながら地上ほどではないが十分な明るさがあった。


 私はこの光景に見覚えがあった。


(自動生成型の階層タイプね……ユーザーにはよく手抜きダンジョンと言われたっけ……)


 ひたすら同じような代わり映えにしない階層が続き、下層に下るほど敵が強くなり、ドロップするアイテムも良いものになっていく。


 実装当初はアイテム狙いのユーザーからその単純さから分かりやすくて良いと評判ではあったのだが、人間は直ぐに飽きてしまうものだ。


 代わり映えのしないダンジョンの仕様に、繰り返し収集の好きなユーザー以外の評判はあまり芳しくなかった。


「転移魔法で入り口に直ぐ戻れるのは便利ですね。まあクランルームを使える私達にはそれほどでもありませんけど。それでは……【リターン】」


 セナが仮想ダンジョン限定のスキルである帰還魔法を唱えると、一瞬でそこは冒険者ギルドのダンジョン入り口だった。


「よお、お前達も帰ったのか」こちらを見てそう挨拶してきたのはガルフだった。


 入り口には既に戻っていたガルフ達の獣人族パーティーと守人エルフパーティーが居て、どうやら【魔石吸収】の最中のようだった。


「ガルフ、早かったのね。初ダンジョンの感想はどう?」


 周囲の明るい雰囲気と少し興奮気味な感じからすると仮想ダンジョンの評判は悪くなさそうに思えた。


「敵に関してはまあお馴染みの連中ばかりだから特に問題もねえよ……ダンジョン内も雰囲気は悪くねえ……というかこう言っちゃあなんだが面白いぜ。成長に実感があると狩りも楽しいもんになるんだな」


 生活の延長線上にある狩りという行為は、ガルフ達にとっては生活の手段の1つに過ぎないのだろう。


 ガルフの向こうで【カード】で自分のレベルやスキルを確認している獣人族やエルフ達の姿が、私にはVRゲームを楽しんでいるユーザー達の姿と重なって見えた。


(何だか懐かしい……)


 純粋なAI時代には感じる事の無かった感情だった。今では色々な者達と接して様々な経験を経て、私は感情という物を忙しさの中で深く考える事なく、自然に受け入れるようになっていた。

 

「まあ面白いがこれだけをやっている訳にはいかねえのが残念なところだぜ。だが平原ダンジョンは一度狩り尽くしちまうと数日は元に戻らねえからな……そうなると、このダンジョンは平原ダンジョンの回復期間に潜る事になりそうだな」


 ガルフの言葉に私は1つ思い当たる事があった。色々とやる事が多すぎて放置したままにしていた問題だった。


「都市ミザレの側にある森と草原の調査に協力して欲しいんだけど……あそこにはダンジョンがあるんじゃないかと思っているの」


 皆がこの精霊樹の村での生活を守る為に成長しようと努力している。だが今のままでは直ぐに限界が来るのは分かっていた。


 その為には、私自身がより成長する必要があったのだった。


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<自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~>

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