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049:霧の石門

「おお! 消えた!」


 私が獣人族達が狩り尽くして山のようになったファングシープをあっという間に【収納】して見せた。そして少し移動して別の場所にそれを取りだして見せた。


「すげえな……これだけ持ち帰れれば当面の食糧問題はなんとかなりそうだ……正直なところ助かるぜ!」


 獣人族は獲物を運ぶ台車のような物さえ持っていなかった。一人当たり1匹を運ぶにしてもそれほど大量には持ち帰れないし保存の問題もあった。


「ガルフさん……ビスタさんの力はこの空間魔法だけじゃないわよ……勿論これだけでも破格の力だけど……実際に見てみないと信じられないでしょうけどね……」


 エリスがいきなり核心に触れるような事を言い出した。私は獣人族やエルフ達には自分の力を隠すつもりがなかった。森のなかで暮らす事を選んだ者達が世俗の欲にまみれているとは考えられなかったからだ。


「ほー、エリスお前が敢えて俺達にこの破格の力を持つ精霊を引き合わせようとするって事は、何か俺達の為になる事があるって事だろ? 説明してみな!」


 どさりとその場に座り込んだガルフは気性のさっぱりした獣人だったが、若くしてリーダーになるだけの頭脳も持ち合わせているようだ。


 その豪快な動作も腰を据えて話を聞いてやるという意思表示のようだ。


「なんだか面白そうな話じゃないかい! 私も興味があるねえ……正直なところ今の現状はとても厳しいのさ……私達も自由を捨てて都市の側に移り住んで人間の世界に適応すべきという意見も一部では出始めているくらいさ」


 サリーナもガルフの隣に座り話を聞く体制になった。他の獣人族達もリーダー二人に習いその場に座り込んだ。


 サリーナの話を聞く限り、移り住んだ新しい隠れ村というのはかなり厳しい環境なのかもしれなかった。


(もしそうならまず獣人族を村人として受け入れるのも悪くないかもしれないな、ガルフとサリーナの様子を見ると柔軟な考え方の持ち主のようだし……)


 私がそう考えた瞬間――


《獣人族ガルフ配下の獣人の村人【契約】を行いますか? YES OR NO》


 例によって本人の同意無しの強制【契約】のシステムメッセージが来た。


(ミーナとの【契約】の時は本人に確認して同意を得た時にメッセージが表示されたけど、結局私の意思の問題に過ぎないのかもね……)


「世界樹の若木のある広場だと……エリスの言う事だ、いくら突拍子もない話と言っても……だが迷いの霧は俺達にとっても身近な存在だったからな、精霊の迷い家か、本当なら凄い空間魔法の力だが……」


 私は二人に説明してくれているエリスを眺めながら、納得してもらうには実際に見てもらうのが一番早いと考えていた。


(あの場所に連れて行く方法か……あっそうだ! もしかすると……)


 私は急いでシステムメニューに追加されたハウジングの追加タグメニューを選択した。


(これだ、この霧の石門って気になっていたけど、もしかしたらこの門を設置出来れば……)


 私はメニューから霧の石門を選択しその場に設置した。


「おお! なんだこりゃどこからか石の門が……それにこの白い霧……迷いの霧か……」


 ガルフは立ち上がると立ち込める白い霧の中に踏み込んだ。


「おう、皆来てくれ! この霧は俺達を拒絶しねえようだ……こりゃ凄いぜ……」


 そう言い残すと門の中に消えていった。残ったサリーナ達と私達も一緒に門を通過した。


「エリスこれがお前の言ってた精霊樹の森か!」


 柵の一ヶ所に石門が一つ増えていた。もうひとつはクランルームに繋がる門だった。


「またこの美しい森に戻ってこれるなんてねえ」


 サリーナが感慨深げに周囲を見渡した。


「おい! ビスタと言ったなこちらからお願いしたい、ここに俺達の隠れ村を再建させちゃくれねえか? もちろん世界樹があるんだ俺達の住みかなんざ、あそこら辺の隅で構わねえ。チッとばかしの土地を都合しちゃくれねえか?」


 頼み込むように言ってくるガルフに、私は頷いた。


「世界樹の為にも精霊シルフからエルフか獣人族に住んで貰いたいと言われてるから問題ないけど……土地の配分もあるからエルフ達にも話してからにしようか……取り敢えずは」


 私はハウジングメニューを再度開いて面白い建物が増えている事に気が付いた。


(これ、どう見ても二階建ての集合住宅だよね……)


 メニュー画面に木造二階建ての集合住宅が増えていた。獣人族の群れ単位で村人に加えた事で一気に村人候補が増えたからだろう、このような建物まで設置可能になっていた。


(取り敢えずこれを柵の側に設置してみよう……)


 今のうちに施設に関しては私に任せて貰う雰囲気を作っておくのも悪くはなかった。


 私はガルフがさっき指し示した辺りに建物を設置してみる事にしたのだった。



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<自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~>

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