見習いの塔
見習いの塔は、森を抜けた湖の辺りに聳え立っていた。
しかも四方の塔がぐるり城壁を携えて囲み、堅固な様相を呈している。中央に一段と高く聳え立つ塔の最上階が〝賢者ガタザフ〝の住まいだと言う。
「まさに中世ヨーロッパの城だな」
「なんか言った?ご主人様」
「いや、気にするな」
マリーベルは立ち止まった。
「そう言えば結局、名前を聞いてなかったわ?」
生贄の鳥頭をクルクルと廻しながら聞いてくる。
明るくなってよく見ると、鳥頭は切れっ端の布で出来た縫いぐるみだった。
「ラクジロウだ」
「ら、く、じ、ろ、う、さま?」
そうだと頷くと、ふーんと言って、
「変わった名前ね、でも古代文字の発音に似てるかも?」
「その古代文字とか古代魔術とかってなんだ?」
「うん、それがね、よく分からないのよ。何故かって誰も教えてくれないと言うか、教えられる人がいないからかな」
「そうか」
「でも古代の文明やら遺跡やらは、世界中に散らばっていて、とても強大な伝説魔法があるらしいよ」
(伝説魔法ね、なんだか関わりたく無いなあ)
マリーベルは、天を指差した。
「空を飛んだり」
マリーベルは、地面を指差した。
「ダンジョンにワープしたり」
最後に両手を広げた。
「空から火の玉を降らせたり」
「とにかく、まずは〝豊かな魔女〝に会ってほしいの、私のお師匠様よ。これから私たちは何をすべきか?導いてくれる筈」
厳かな城壁を眺めながら、俺はすでに考えていた。魔法が蔓延るこの世界は面白い。ここで家族を持ってのんびりと暮らせないだろうか。古代魔術にも興味がある。
それにしても気になる。〝豊かな魔女〝の名前だ。
いったい何が?何処が?豊かなのだろうか。