スタイリッシュ怪盗SHADOW
人は俺の事をスタイリッシュ怪盗SHADOWと呼ぶ。
闇に紛れて、クールに、スタイリッシュにお宝ゲット。
それが俺のレゾンデートル。
今日も煌びやかなお宝が俺の事を待っている。
月の光が雲に隠れる。
視界が真っ暗な闇に包まれる。
そんなものは俺には関係ない。
長年培った夜目に感。
それさえあればそれでいい。
今日のターゲットは裏取引で私腹を肥やした議員の屋敷だ。
今朝のうちに予告状は出しておいた。
『今夜あなたの屋敷のお宝をいただきに参上します』
お宝は何かだって?
それは盗んでからのお楽しみさ。
議員の屋敷の周りは警備の警官がわんさかと徘徊している。
やれやれ、この包囲網を掻い潜るのは骨が折れそうだね。
しかしこの包囲網を掻い潜ってこそスタイリッシュ。
屋敷の裏手に回り警備の眼が薄くなるのじっと待つ。
警備員たちが雑談をし始めた頃を見計らって表門付近に置いておいた警報機のスイッチをON。
雑談をしていた警備員たちは何事かと慌てて表門へと集まっていく。
相変わらず間抜けな奴らだ。
俺は難なく屋敷の敷地内に侵入を果たし、歩を進める。
屋敷のお宝が貯蔵されている部屋。
そこには大勢の警官隊が配備されていた。
中央にはいつもよく見るちょび髭を生やした警官が立っている。
フ……相変わらず馬鹿な人だな。
俺は一笑に付しその場を立ち去る。
この屋敷のお宝はそんなものじゃない。
ダイヤモンドで装飾されたネックレスや、有名な画家が描いた名画なんかではないのだ。
俺は闇夜に紛れ屋敷の中を進む。
そして、とある部屋の前へとやってくる。
ガチャリ。
部屋の扉を開ける音。
「……あなたは誰?」
「お迎えに上がりましたよ、レディ」
俺はボロボロの寝台から起き上がった少女に向かって一礼をする。
そして少女の手を取り、俺は手の甲に忠誠の証の口付けを落とす。
「私をどうするつもり……」
「あなた様をこの闇から救い出して見せましょう」
「それが出来れば、素晴らしい事ね」
少女は伏し目がちに悲しそうな声音でそう告げる。
「私があなたに自由を差し上げます。さあ私の手をとってください」
不安そうな表情で、少女は俺の手を取ってくれる。
「さぁ、向かいましょう。華やかな光の世界へ」
俺は少女をお姫様抱っこして、窓を開け放ち飛び出す。
俺の名前はスタイリッシュ怪盗SHADOW。
盗むものは金銀財宝、そんなものではない。
俺が盗むのは人の心。
人を助ける事を生業とする怪盗だ。
変な方向に振り切れました。
感想頂けたら嬉しいです。