『机上の時空論』
~あらすじ~
高校生の星埜苺は、SF好きの女の子。友達はいない。幼くして兄を亡くした苺は、絶望から、人との関わりを避けるようにして生きてきたんだ。
だけど高校2年の冬、机の上での文通をきっかけに、彼女の世界は広がっていく。
共通の趣味を持つ謎めいた人。
初めて出来た親友と呼べる存在。
そして、忘れたと思っていた恋心――。
深い悲しみと無気力の谷から彼女は這い上がる。幸せを掴みとるんだ。
「机上の空論だなんて、言わせない!」
自作のif小説書くのって、思った以上に恥ずかしいですね……。
お久しぶりです。エタりかけていましたが、更新します。
「実現しなかった構想に印度を渡す」というこの企画の性質上、あまりページが増えないことこそ平和の証なのでしょうが、なかなかそうもいきませんで。この1年、書かなかっただけでネタは色々ありました。
今宵も、酒の代わりにアイスコーヒーを片手に(あんまり格好つきません)、つらつら書き記していきます。
冒頭で出しましたように、今回紹介する作品は『机上の時空論』(御法 度)です。この作品はかなり難産でした。過去の活動報告を見てもその紆余曲折が現れていて……。最初に予告をしてから、投稿するまでの時間の長さだけで、もう。
まあ、最終的には楽しんで書けたので良かったと思います。粗筋も珍しくはっちゃけていますしね。お新ちゃんの語りという設定なので、むべなるかなといったところです。
実はこの作品、『供養』にぴったりというか、おあつらえ向きといいますか。「時空論」自体が、供養的要素を含んでいたんですよね。
と言いますのも、作中に出てきた『スリップリープ』という架空のSF作品。あれは、私が書こうと思っていてずっと放置しているアイデアからとったものなのです(内容もあの通り)。それこそ、時空論を書こうとするかなり前から。
これから書くことは多分ない気がしますが、どういう形にせよ作品に組み込むことができて良かったと思っています。
話が逸れました。
本作では、ハッピーエンドとバッドエンドの違いこそあれ、当初やりたかったトリックも書くことができました。本当に良かったです。
実はあの文通と似たようなことを、筆者も学生時代に経験しています。相手を誰か確かめなかったところも一緒。ですが作中の苺がしたように、×××から当ては付けていました。その子とは普通に話す間柄でしたが、なぜか文通の話題は出しませんでしたね……。お互い暗黙の了解があったのか、それとも私のただの勘違いだったのか。どちらにせよ、今もし会うことが会っても、気恥ずかしくて、確かめることは出来ないような気がします。
そんなほろ苦い感情を描きつつ、最終的にはハッピーエンドで終わる、希望溢れるお話を書いていたはずなんですけどね……もう読まれた方はご承知のことでしょう(もしかしたら『御法 度』名義と言うだけで察した人もいらっしゃるかも)。
どうしてこうなった。
悪趣味に走ってしまいました。それはそれで楽しいですし、好きなのですが、この作品はハッピーエンドにしたかったのです。彼女たちは、幸せにしてあげたかった。
迷走していた1年間は、常にこの悩みがつきまとっていました。いかに、ハッピーエンドを迎えるか。
光明が射した! と思ったことは何度もあります。鍵は筒井弥生でした。彼女が溢れんばかりの友情パワー(^^;)で、絶望の淵にいる主人公を導く展開。それがハッピーエンドへ至る構想です。今回書いたエピローグがそれにあたります。初期構想とはかなり離れてしまったので、色々齟齬が出てしまっていますけど。
一番大きな違いとして、初期構想では、お新ちゃんというぶっ飛んだ存在は出てこないんですよね。これはどこかで書いたような気もしますが、本文が苺のモノローグばかりで埋められて鬱々としすぎるため、相方を作りたかったという思惑があります。あとは、こういうぶっ飛んだ設定の方が筆者の執筆スピードが上がるという事情も笑 実際、お新ちゃんが出てきてくれてからは、翔ぶように筆が進みましたしね。彼は完結の功労者と言ってもいいと思います。
原案では、その代わりと言うとアベコベですが、弥生がぶっ飛んだキャラでした。今の「時空論」でもその片鱗は見えている感も……。
例を挙げますと、作家・星埜新の大ファンで、あまりに好きすぎるあまりにその母校へ転入してきた少女、というのが彼女の設定でした。持ち前の推理力で苺が星埜新の妹であることも突き止め、グイグイ迫っていくのですが、その奇行、蛮行の数々。思う存分に書いてみたかったです。
他に後悔がある点は、日付の設定です。実は色々考えてはいたんですが、上手く伏線回収することができませんでした。2020年と2014年って、2月までは日付と曜日が一致しているんですよね。3月以降は閏年の関係で1日ずれます。
そういった所からも例のトリックの伏線を張りたかったところですが、上手くまとめられませんでした。
さて、そろそろ締めです。
前項を読んで、どう思いましたか? 書いておいてなんですが、私には、どうもしっくりこないように思えるのです。だからこそ、ついぞハッピーエンドは書けなかったのですが。
ハッピーエンドにするには、どうしても最後に詰め込まなければならなくなるんですよね。パラレルワールドの解釈しかり。「その後」のキャラたちの人生しかり。字数が膨れ上がるのは必定。しかしその頃の私には(今もですが)、長編を書ききる体力はありませんでした。その方が絶対に後味は良くなると分かっていても。
一方、私が選択した形では、少なくとも切れ味は保障されると思いました。物語としての衝撃性。まとまり。潔い幕切れ。その魅力に、どうしようもなく惹かれてしまいました。
短編の切れ味を取るか、長編の後味を取るか――。最後まで悩みましたが、結果はご覧の通りです。
後悔だけが残っているわけでもありません。前述の二元論的な、視野狭窄とも呼べる状態から、なんとか完結にこぎ着けることができました。それは苺たちの生みの親として誇りに思っています。
悔いの残らない作品などない。自分の中の完璧を形にすることも出来ない。絶対に、どこかで妥協した作品しか産まれてこない。
今はそう自分に言い聞かせて、執筆を続けてしくしかないのかと、思います。続けなければ、どうにもなりませんから。
とりとめもない長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後に、元祖・筒井弥生の発言ダイジェストでお別れです。
「ああぁ~! これが星埜先生の机ぇえ!」
「ねえ。お友達になってくれないかしら。できたらお兄さんを紹介してくれたりすると……」
「へえ、お兄さん似って言われていたんだ……よく見ると、あなた可愛い顔してるわね」
こうふくな ゆめを




