ぼく、かべさんをみならうよ。
コツ コツ コツ コツ コツ。。。
(あ、いまだれかがおうちのまえとおった)
(ん?)
(もし…)
(もしかべがなかったら…)
(ぼくのすがたがまるみえだ)
(てことは…)
(ぼくがこうやってぐうたらしてるところを、いまのひとにみられなくてすんだのは…)
(かべがあるからなんだなぁ)
ぼくは壁に、右手をそっと当てた。
(かべがそんなおおきなやくわりをもってるなんて、きづかなかったなぁ)
(だまってじっとして、ぼくをまもってくれてたんだなぁ)
(おれいをいわれなくても、もんくをいわないかべはつよいなぁ。とうぜんだけど。)
ぼくは右手を当てたまま、じっと見つめてつぶやいた。
「かべさん。ぼくのぐうたらしたところをみんなにみられないように、かこっててくれてありがとう。」
「かべさん。ぼくがよりかかったときに、ビクともせずにささえてくれてありがとう。」
「かべさん。ぼくがへたくそなはなうたをうたってても、となりのひとにきこえないように、おとをすいこんでくれてありがとう。」
「かべさん。もんくひとついわずに、まいにちだまってぼくをみまもっててくれてありがとう。」
「かべさん。ぼくのためにこんなにがんばってくれてるのに、いままできづけなくてごめんね。」
「かべさん。ぼくはいま、かべさんのことすごくかっこいいとおもったよ。」
「だからぼく、かべさんをみならっていきようとおもうよ!」
そのとき、
ぼくには壁が微笑んだように見えた。
読んでいただき、ありがとうございました。