どぅ 森の中の村
題名の始めの平仮名はフランス語の数字です。
1時間後、そこには見事に青年を説得した僕─蘇芳と、転生の準備を終えた青年の姿があった。
「えーと、他の人達の装備やらアイテムやらがギルドハウスの倉庫に入ってるんで、なるべく早く合流して渡してあげてください」
「了解したよ」
「それでは蘇芳さん、良い異世界ライフを!」
「ああ、行ってくるよ」
「あ、蘇芳さんに目的伝えるの忘れてた」
◆◇◆◇◆
青年のいた所から出て目を開けると森の中だった。
……取り敢えず村か街を目指すか。
*少女移動中*
40分程歩いてやっと村が見えてきたな。森の中だが。
道中、合成獣や地獄の番犬等と戦ったが、特にこれと言った事はなかったな。
……っと、村の入口に見張りが2人いるな。辺りも少し暗くなってきたし、道中獲った獲物をお裾分けして一泊させて貰えるか交渉するか。
「すまない、そこの方」
「ん、どうした?子供がこんな時間に外にいたら危ないぞ」
「そうだぞ、早く家に入った方がいい」
まぁ今の僕の外見は旧版キャラの物だからな、間違われても仕方がない。
見張りは……虎の獣人族。となると此処は獣人の村か。
帽子も被っているし、一目で判断がつかないよな。
「実は、敵対した組織の魔術師に森の中へ飛ばされてしまって今夜寝泊まりする場がないんだ。道中獲った物を分けるので、良ければ一泊させて貰えないか?」
ありきたりな作り話だが、通用するか…?
駄目だったら木の上だな。
「そうか……!お前、ちっこいのに苦労してるんだな……!」
「こんな村で良ければ…ウグッ……泊まっていってくれ!」
うわぁ…………。
大の大人(およそ30代)の泣き顔とか、誰得なんだ。
僕は少なくともソッチの気は無いぞ。
「さぁ、たんとお食べ!」
「い、いや……僕はこんなに食べきれないので………」
「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ!さぁさぁ!」
「……いただきます」
この村、良い人が多いな……。最初に言った多少の嘘ですら良心が痛む程に。そして年上のお母さん方が凄く食べ物を勧めてくる。女のように細いんだから沢山食べろと。流石に食べきれないので女だという事を伝えたら、とても驚かれた。そういうキャラメイクをしたんだが……何か解せぬ。
ともかく翌日、村の方々に見送られ街に向かった。
聞いたところ此処から一番近い街は、ロウカンツという街だ。何でも、冒険者の街と言われる街だそうだ。取り敢えずはロウカンツで冒険者組合に登録しようと思う。
先ずは森から出るのが最優先だな。