プロローグ
プロローグ
今でも、覚えている。その日は、まだ蒸し暑く、外で立つだけで体力が奪われる程の暑い日だった。
『早く涼しくならないかな』と部下がボヤいていたな。…………今に思えばこんな日常から…………早く…………早く逃げたくて言った言葉なのかも知れない。
「どうしたの? ……そら? …………空に何かあるのかい? …………何も…………見えない……けど?」
部下で友人の男が俺に聞いてくる、こいつとももう長い付き合いになるな、確か七年の時間を一緒に過ごしたことになる。その七年の時間は俺達にとってとても長く、そしていろんなものを失い、奪われ時を意味する。ただ時々、彼の顔をこの空を見てあの青春の…………俺達のあの場所を思い出して…………過去が懐かしく思う。
「いや…………あの日も…………こんな晴れていた気がするよ。…………そうだな、学園のことが懐かしくなった。………………ただ、……それだけだ」
彼も空を見上げる。きっと同じ思い出を頭に……胸に思い浮かべているのだろう。
「そうか………………確かに…………懐かしいな、もう少ししたら、あの山で栗と色々なキノコや山菜が採れる時期だね。ああ、…………学園長や教員達は元気だろうか?」
「さあな、…………ただ、あの学園長ならきっと元気だろうな、今も候補生達に小言を言っているさ」
「…………確かに、あの学園長ならそうだろうね…………ああ、懐かしい」
友人のその表情は寂しそうに見える、それは、この戦争の結果そして自分の仲間の結末を覚悟を決めったのであろう。
「さあ、隊長、部下が仲間があなたを待っています。…………悪魔共はこちらを待ってくれませんよ」
友人はいつもの部下達の前で使う言葉遣いで俺に話す。
「そうだな、連中にそんな気遣いが出来るわけがないか。…………よし、…………行くか」
そして足を進める、進めた先には、これから激戦地に向かう準備を終えた二百人近い部下が待機をしていた。その一人の部下が持っていた旗を奪う。
部下達の表情は、怒りや殺意で心を燃やす者、これからの戦いを思い小刻みに震える体を隠す者、緊張した目つきの者、色々な表情がそこにあった。
俺は足を止めず進む、俺に気づき敬礼をする者、激を飛ばす者、救いを求める者。俺はその彼らの前に立ち覚悟を決めさせる。
きっと隊長として最初で最後の命令になり、最後の理不尽を突きつけることになるのだろう。
「諸君、気分はどうだ、準備は万全か? まさかと思うがこの場で怯えている者はいないだろうな? 正面を見てみろ! ウジ虫共が大軍で攻めて来るようだな!」
遥か先には五十万の悪魔がこちらに進行を開始していた。
その容姿は馬の顔や羊又は牛の様な様々な姿で、二足歩行でこちらの遥か先を目的に進んで来る。そう、我々の遥か先にはこの世界の首都ヴェヘインがある。そこが悪魔共に侵入を許せば、人類の敗北…………いや…………人類の全滅を意味している。
連中に降伏は意味がないだろう、二千年も争いをしていた相手だ、そう悪魔は人類の敵以外の価値はない。
「この戦場が世界の防衛線なる、いいな! ウジ虫共を一歩も進ませるな! 必ず別働隊が連中の核の破壊に成功する! 必ずだ!」
敵の進軍が近くなる。その地響きはまるで、俺達の心音と共鳴するかのようだ!
「クリミナルの名を与えられし黄金の戦士達よ、…………俺からの命令はたったの一つだ、あそこにいるまぬけな自殺志願者達を一匹残らず消滅させろ、――――――――ただそれだけだ、いいか一匹も逃がすな、連中に我らレヴェナントの恐ろしさを教えてやれ!」
「「「「「うおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!!」」」」」
俺は悪魔共の進行する、地響きに負けないくらいの声を張り上げる! 部下達も声を張り上げる、それはまるで、生命を燃やすかのようだ。
全員の覚悟は決まった、そこには誰一人、悲壮な顔などない!
「諸君、これは、自由を勝ち取る戦いだ! ――――――――――この戦場の覇者誰だ!!!!! そう俺達レヴェナントだ! 恐れをひれ伏せ、生あるかぎり歩め、不屈の黄金戦士を!!!! ウジ虫共に死の鉄槌を下せ――――――――」