13話
「リン、今の間に早く一の心臓を食べろっ!」
「おっけ、おっけ」
リンはテクテクと一の元へと近付く。
まだ、能力は働いてるから素早く近く事が出来ないのだ。
俺も能力のせいで壁にひっつかされてる…。
風神が憑依してるから頑張ったら少しぐらいは前に出れるだろうが、さっきの戦いで疲れてそんな気力さえも起きない。
「んじゃ、いっただきます!」
リンが一の中心を思いっきりかぶり付く。
まったく、何の躊躇いもない…。
平気で人を殺すんだから食べるのも躊躇いは無いんだろうな。
俺は、食べる様子をあまりマジマジとは見る気になれず、下を向いた。
モシャモシャと咀嚼する音が聞こえる。
たまに何か、固いものを噛むような音も聞こえる。
多分、骨か何かも噛んでるのだろう。
「よし、おなかいっぱぁい!」
前を見たら、心臓部だけポッカリ穴が空いた死体があった。
オエッ
俺は少し気分が悪くなった。
「あの、大丈夫ですか」
椿は俺の背中をさすってくれた。
「大丈夫だ、ありがとう」
「椿はこれ見ても大丈夫なのか?」
「私は大丈夫ですよ。心配しないで下さい」
笑顔で椿は返した。
見かけによらずすごいメンタルだな。見習いたいぐらいだ。
「んじゃ、バッコルを治すよ!」
「癒神憑依!」
だから、なんでそんな変なネーミングセンスなんだよ…
まじめな神と洒落みたいな名前の神のギャップがすごいな。
バッコルさんの傷はみるみる癒えていった。
「わ、私めのためにわざわざありがとうございます。」
「このご恩、必ず返させてもらいます。」
「いいよいいよ、照にいを助けてもらったんだし。」
「それに私たちは友達なんだから」
「バッコルめ、感激でございます。」
「私めの命に変えてもお供させていただきます。」
「私も照くんのために頑張りますよ。」
本当に味方がいるって心強い。
「みんなありがとう!」
俺は思わず感謝の言葉を漏らす。
「さて、じゃ次の課題を片付けますか。」
「照にい、右手についてる紙のお題やってこ!」
「あ、そうだ。忘れてた。」
俺はこの紙のお題を全てこなさなければならないんだった。
「全くとんだ置き土産ですね。」
「じゃ、まず1枚目から見ていくか。」
俺は一枚を手から引き剥がす。
意外にすんなりと引き剥がされた。
さっきから思うんだが使用者が死んだからだろうか、段々と能力の効力が薄まってるように感じる。
【人を1人殺せ】
「棚からぼた餅ですね。丁度、今殺したとこですね。」
横から、紙を見ながら椿がそう言った。
「2枚目は?2枚目は?はやく、はやく!」
多分、リンの中では商店街の福引き感覚なんだろうな…
呑気に構えやがって。
俺は段々と剥がれやすくなってる、紙を剥がす。
【この紙を見てから、1分以内に誰かの血を飲め。(パートナーも可)】