12話
「あら、残念。私、実は生きてましたー。」
え?なんで生きてんだ?今さっき黒焦げになったはずじゃ…。
いや、そんなことよりも後ろに引く力が強すぎる…
風神の力を持ってしても、抗うことが出来ない。
徐々に徐々に後ろに後退していく。
「私の能力がそれだけだと思ったの?」
「あなただって神の数だけ能力使えるじゃない」
あ!そうか!能力は一つとは限らないのか。
くそ、盲点だった。
能力は一つしかないっていう固定観念に囚われ過ぎていた。
「くそっ!」
反撃したいが体は後退するばかりだ。
もう負けなのか…
「諦めたらダメです。」
椿が俺を後ろから押す。
だが、もちろん女の子1人が後ろから押した程度じゃ俺は前へ進めない。
いや、仮に前に進めたとしても、無駄だろう。
あいつは他に能力を隠し持っている…。
まるで、勝ち目がない。
ゴソゴソ
俺の耳元で椿が囁く。
なるほど、そんな作戦が。
だが、成功するかどうか怪しい。
でも一か八かやるしかないか…
「リン、メリーを殺せ!」
「さー、いえっさ!」
敬礼をピシッと決めてリンはメリーの元へと走る。
「無駄よ。」
メリーは能力を発動したらしく、リンはその場で立ち止まる。
椿の言う通りだ。
あの能力は何かと何かをくっつける能力だが∞の力が働くわけじゃない。
なら、速さが速い物の場合、静止、又は…
リンはなんと一歩、又一歩メリーに近づく。
「え!?なにこの子!?こっちに近寄ってくるんだけど」
「それでもゆっくりとしか移動できまい。」
「俺が刺してやろう。」
一はリンに近づく。
その時を待っていた!
「バッコル!私の手を電気に変換して、そこから更に風に変換してください。」
「了解です。椿様。」
バッコルは最後の力を振り絞って、椿の手を電気に変えた。
そして、それを風に変える。
俺は一のものへと全力で飛ばされた。
その勢いと体の体重全てを使って、グーで一の心臓部を殴った。
「ぐっ…」
「一さん!」
急いで、メリーは一の元へと駆け寄る。
だが、そんなことはさせない。
俺はメリーもグーで思いっきり弾き飛ばした。
椿の言う通りだ。
理由はわからないが。こいつは、メリーは攻撃が出来ないんだ。