――終幕――
小さな舞台に置かれた椅子に座した金髪の男。誰ひとり観客の存在しない観客席に向かい声高に話しかける。
「この世は不平等である。
そしてひとびとはその不平等にあまりに鈍感である。それでいて身近な不平等にほど、あまりに盲目だ。
遠い国の飢餓には憐れみを表するのに、向かいの家の貧困には目を閉じる。ドキュメンタリー番組の難病の子供には涙を流すのに、いくら教えても仕事の出来ない後輩には憎しみの視線を向ける。
ああ、不幸とは遠くにあってこそ華やぐものである。身近にあっては、巻き込まれないようにすのに必死になるばかりである」
テープレコーダーからまばらな拍手が再生される。
「持てるものは、愚かにも、それが自分の力で勝ち取ったものだと勘違いし、誇る。身近な持たざるものに対しては、冷淡で、ときに〝お前達は恵まれている方だ〟などと、銭にならない説教をする。面の皮の厚いものだ。
要するに、無知なのだ。自分たちから少しだけ、一歩離れたものに対し……いや、半歩離れれば、そこは既に別世界なのである。別世界なのだから、理解できないのが当然だが、それさえも、相手に非があると思いたがる。自分の高見に来れないのは、相手の努力が足りないからだと思い込む。スタートラインで既にあるはずの差をまったく見ようとしない。見ることができない」
男はそっと目を閉じる。
「どうせなら、目を閉じてしまおう。ひとりになってしまおう。みんながみんなひとりならば、何の格差も生まれない。それこそが、真の平等だ。すべての幸いだ。
さあ、目を閉じよう。眼前の闇だけが真実だ。友だ。道導だ。ああ……心地よい。幸せだ。すべてをそれに、委ねよう」
闇。ただ、闇――。
「干むる勿れ。ただ、享受せよ」




