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五
紫髪の少年ニギは身体中から血を流しながら、敵の一匹たりとも残っていない廊下を歩いた。
最奥。小さな宝物庫の前に立って溜息を一つ。大きなハンドルの付いた金庫を、拳一つでこじ開ける。
破れかぶれの金属の扉をくぐった先に飾られていたのは、小さな小さな灰色の珠。
ニギはそれをしばしの間じっと眺め、懐からそれとまったく同じ灰色の珠を取り出して、それに近づけた。
……何が起こるわけでもなかった。
しばらく何かを期待するように黙っていたが、やがて諦めたように再三溜息をついた。何か起こらなくちゃならなかったのだ。
「……これも違った」
ニギは眉間に皺を寄せて唇をキュッと噛み締めた。
――はじめから期待はしていなかったはずだ。
――期待したら馬鹿を見る。いつもそうだ。
――なのになんだその悔しそうな顔はみっともない。
――あの主人のために働いているわけじゃあるまい。
――利益が出せなかったからって何だ、お前に不利益があるわけじゃあるまい。
――そんなにお仕置きが怖いのか?
――〝慣れた〟と言っていたのはやっぱりガキじみた強がりか?
「うるさい」
ニギは騒ぎ立てせせら笑う心を押し殺すように吐き捨てて、その灰色の珠を鞄に詰め、振り返りさっさとその場を後にした。




