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宵の文目  作者: けら をばな
第一話 「世の中に、純粋に生きたいと思って生きている奴がどれ程居ると思う?」
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 紫髪の少年ニギは身体中から血を流しながら、敵の一匹たりとも残っていない廊下を歩いた。

 最奥。小さな宝物庫の前に立って溜息を一つ。大きなハンドルの付いた金庫を、拳一つでこじ開ける。

 破れかぶれの金属の扉をくぐった先に飾られていたのは、小さな小さな灰色の珠。

 ニギはそれをしばしの間じっと眺め、懐からそれとまったく同じ灰色の珠を取り出して、それに近づけた。

 ……何が起こるわけでもなかった。

 しばらく何かを期待するように黙っていたが、やがて諦めたように再三溜息をついた。何か起こらなくちゃならなかったのだ。

「……これも違った」

 ニギは眉間に皺を寄せて唇をキュッと噛み締めた。

 ――はじめから期待はしていなかったはずだ。

 ――期待したら馬鹿を見る。いつもそうだ。

 ――なのになんだその悔しそうな顔はみっともない。

 ――あの主人のために働いているわけじゃあるまい。

 ――利益が出せなかったからって何だ、お前に不利益があるわけじゃあるまい。

 ――そんなにお仕置きが怖いのか?

 ――〝慣れた〟と言っていたのはやっぱりガキじみた強がりか?

「うるさい」

 ニギは騒ぎ立てせせら笑う心を押し殺すように吐き捨てて、その灰色の珠を鞄に詰め、振り返りさっさとその場を後にした。


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