四
「ウヅキ、仕事が欲しい」
コノハは本屋でカウンター越しに、顔馴染みの女性店員ことウヅキに聞いた。彼女は髪をごしごしと掻いた。
「……ちょーっと藪から棒過ぎるかなー」
「首になった。んで、仕事が欲しい。当面暮らせるだけの金はあるのだが……これからのことを考えると、稼いでおかねば」
「うん、で、どうしてわたしの所へ? まさかわたしに、あんたを雇えとでも?」
「まさか! ここ、知り合いがたくさん来るじゃん?」
「学生のアルバイトか!」
「……わたしひとり暮らしていくだけならば、確かにアルバイトでも良いのかも知れない。しかし子供をひとり世話をしなければならないのだ。もし可能なら学校にだって」
「子供……? 学校……? ままままままままさか!」
「……お察しの通り、この間来た男の子だ」
「ああ……ついに……止められなかった……」
ウヅキはカウンターに突っ伏して頭を抱えた。
「……何もしてないからな?」
ウヅキはすぐに起き上がってカウンターをドンと叩いた。
「信用できない! あんたの病的なほどの少年好きは知ってるんだからね!」
「否定はできない」
「して欲しかった!」
「アイツが風呂に入っているときなどは」
「聞きたかない!」
「からかっただけだ、信じるな。で、……本題に入るが、つまりは稼げる仕事が欲しい。稼げる能力があることは自覚している。知っていれば……でいいんだ」
ウヅキは溜息をついて、ぽいっと二三の冊子を寄越した。コノハはぺらぺらとそれをめくった。
「……求人情報誌? 待て待て。さっきも言ったとおりわたしは稼げる仕事が……」
ウヅキはコノハが一瞬怯むくらいの視線を向けていた。
「あんたが考えているとおり、わたしはいくらでも、あんた向けの仕事を手配することはできる。もしも……あんたが単身あそこを飛び出した、と聞いていたら、躊躇なくそれを紹介していたでしょうね。だけどコブつきで……あんたのその感じでは、あの子を普通の子として育てたいって、そう思ってるのでしょう? なら、わたしの意思であなたにそういう仕事を斡旋するわけにはいかない。……ぶら下げた刀で脅し取った金であの子を育てるつもり? どうしてもやりたいのなら他を当たりなさい」
「…………」
コノハはもう一度、冊子をパラパラとめくった。ふと、その手を止めた。
「……実はな、昔は花屋さんになりたかったんだよ」
そこには花屋の求人が描かれていた。
「良いんじゃないの? あんたなんかに務まるかどうかは分からないけど、とりあえずやってみなさいな」
ウヅキはいつも通りの、興味なさげな顔で視線を本に落とした。




