二十七
何処へ行こう。
ニギはとある公園の片隅にひとり座っていた。コノハと行った本屋のすぐ近くにあった。行く宛てがなくて、結局ここに来てしまった。前にコノハに買って貰った本を抱えて、しんしんと降り積もる雪の下、俯いて膝を抱えていた。
何処にだって行けるのに、何処にも行けない。それは矛盾でも何でもない、むしろ何も持たない彼にとってはごく自然なことだった。
どうすればいいのだろう。
彼は、生きたいと思った。いや、違う。生きたいと思う自分をようやく自覚できた。
ぼくは、ずっと生きたいと思っていた。それが分かった。それなのに、今、こうして生きるすべを失って途方に暮れている。どうすればいいのだろう。やるべきことが見つからない。
「見つけた」
声に驚く。一番聞きたかった声だから。貌を上げて姿を認めて更に驚く。コノハは全身傷だらけで、着物も血でべったりと彩られている。
「え、ちょ、ちょっと、え? え!」
ニギは立ち上がってあたふた。
「なに、何やってんのあんた!」
「それはこっちの台詞……でもないか。お前の台詞で合ってる」
「いや、いやいや、ひとが折角助けたのに、何、一日も経たないうちに死にかけてんのさ!」
「うーん、三対一だぞ? 手加減してくれたっていいのに、あいつら言葉を額面通りに捉えやがって」
「いや、おいコノハ! お前ちょっと、――」
コノハはニギの言葉を遮って、彼のからだを抱き締めた。
「……わたしも、あそこを追放された。《四高翁》のうち三人を八つ当たりで半殺しにしたからな。当然の結果だ」
ダン「(全身包帯まみれで)手加減しろよ、あの野郎め」
ルミネ「(綿が飛び出す自分の頭をちくちくと針で繕いながら)いやー、流石コノハさんですねー。三人とも死んだっておかしくなかったですー」
ルク「(ベッドに突っ伏して)ぷしゅー……。ほんと、もーやだ」
ランダ「……この会で最強の三人なんだよな?」
サクラ「うん、やっぱりアイツおかしいわ」
「……行く宛てもない。身寄りもない。お前と一緒だ。わたしひとりで生きていけるか、不安しかない。だから……こんなわたしのために、よかったら、一緒に居てくれないか?」
コノハは耳許で優しく囁いた。
「……うん」
ニギは、ギュッとコノハを抱き締め返した。




