二十二
「さて、君の言うとおりやって来たわけだ」
超音速飛行機は、速度と高度をやや落として《ビスビニア大森林》の上空をぐるぐるぐるぐる旋回している。
「お前、こんなのの運転も出来るのか」
「まあね」
感心するニギを他所に、フヨウは、さも当然のようにジェット機を操舵している。床に突っ伏していたルベロスは、小窓から地上を見下ろして不機嫌そうに眉をひそめた。
「そんなこと言ってる場合ではなかろう。予想通り、こんなジェット機が着陸できそうなところなんぞ見当たらないが?」
ニギも窓から見下ろして、何かを探すように視線を走らせていた。ニギの探し物は、ルベロスのそれとは違うもののようだった。
「……ねえフヨウ、確認するけど、後でちゃんと援護は来るんだよね?」
小窓から大地を見下ろしながら聞いた。
「うん、アァラと契約した。コノハ同様水上機で、ちゃんと援軍は来る。ぼくらよりは当然遅くなるけど」
「よし……。フヨウ、ルベロス、先に行っておく。ごめん」
ニギはフヨウを守るシートベルトを突如ナイフで切り取って抱きかかえたかと思うと、飛行機の壁を耐熱鋼の外皮ごと拳でぶち破って、ルベロスも抱きかかえ飛び降りた。
「うごごごごごうごおおおあああ!?」ルベロスはあまりに突然の他殺行為に混乱し、とにかく叫んでいた。
「……もうちょっとやり方なかった?」フヨウは落ちながら呆れていた。
「大丈夫。死にはしないし、怪我もしない。……多分」
ニギはフヨウの頭をぽんぽんとお座なりに撫でて、地上に視線を走らせていた。フヨウとルベロスとをギュッと抱き締めて、空気の抵抗を操りながら空を泳ぐように移動して……どさどさどさどさどさどさどさり。木々の枝葉、草花、落ち葉の順で、背中から落ちた。衝撃は弱まって、ニギの言うとおり、ふたりと一匹は怪我なく目的地へと辿り着いた。
「あひあれあはぁ……」ルベロスはしばし放心状態。
「……パラシュートとか手はあると思うけど?」フヨウは恨めしげな視線をニギへ寄せた。
「使い方分からないし」
「使ったことないパラシュートを使うのと、こうして半分自殺行為と、どっちが確実?」
「ごめん、計算はあんまりうまくない。それにルベロスはパラシュートなんて使えなさそうだし」
「あ、そう。ま、うまくいったから、いっか」フヨウはすぐに切り替えた。
「そう言ってくれると助かるよ」
こうして、ふらふらの一匹といつも通りのふたりは、コノハの居る筈の深い深い森林へと辿り着くことができた。




